元GO!GO!7188 野間亜紀子さんの新たな挑戦
- 2022年06月30日
県内外で活躍する地元ゆかりの人たちに、これまでの活動や鹿児島への思いをたっぷりと語っていただく「スポットライト」。今回お話をうかがったのは、20年余り前に鹿児島で結成されたバンド、「GO!GO!7188」のベース担当で、鹿児島在住の野間亜紀子さんです。日本武道館や海外でも公演を行うなど人気を集めたバンドの解散からことしで10年。野間さんは今も音楽活動を続けるかたわら、不登校の子どもたちの居場所づくりという新たな挑戦を始めていました。その思いを聞きました。
(鹿児島局記者 堀川雄太郎)
“20代の自分の全部”
「こいのうた」、「C7」、「ジェットにんぢん」。
多くのヒット曲を生み出したロックバンド「GO!GO!7188」。
鹿児島市の松陽高校の同級生を中心に結成され、音楽チャートでも上位を獲得しました。
ベースを担当し、作詞も手がけていた野間亜紀子さんがバンド活動を始めたのは、高校生のときに「JUDY AND MARY」のコピーをしたのがきっかけ。
その後20歳でデビューし、バンド中心の当時の経験は、貴重な財産だったと振り返ります。
元GO!GO!7188 野間亜紀子さん
「とにかくみんなで音楽をつくるのがすごい楽しかったしライブをするのも楽しかったです。
忌野清志郎さんのような、音楽シーンを作ってこられた先輩たちとステージをご一緒させていただいたりとか、横で間近で演奏しているのを見たりとか、一緒に音を出したりとかして、20代の自分の全部みたいな感じです」
“娘の居場所をつくりたい”
バンドの解散を機に、10年ほど前に地元へ戻って音楽活動を続けていた野間さんでしたが、ある悩みを抱えるようになります。
小学校に入学した長女の芽衣さんが、学校に行きたがらなくなったのです。
「学校の雰囲気、ちゃんとしないといけない感じが、たぶん合わなかったのだと思います。引っ張って連れて行ったこともありましたし、まだちょっと抱えられるときは抱えてそのまま先生に渡すこともありました。
私たちのときは学校に行かないという選択肢はあまりなかったですよね。行きたくないとも言えなかったですし、行きたくない気持ちも何となく分かるけど、本当に行かないとなったときに、じゃあどうしたらいいのだろうというのはすごくありました」
悩んだ末に、3年生の2学期から芽衣さんを無理に学校へ行かせることをやめたものの、代わりの場所も見つからず、家にいるとけんかが絶えなかったといいます。
そこで野間さんは「居場所がなければつくればいい」と決意しました。
「フリースクールなどを探して、見学に行ったり体験に行ったりしたのですが、娘が行きたいと思わなかったし、あとは今住んでいる場所からは遠すぎて現実的に毎日通うのは厳しいということがありました。
鹿児島は選択肢が少ないので、そこが合わないとなったらもうないんですよね。それで、子どもが通える場所があったらいいのにと漠然と思っていましたが、今やらないとその間も子どもはどんどん成長していくので、”自分にできるかできないかとかではなくて、やるかやらないかでしかないな”と思いました」
「ともそだち」で感じた“子どもたちの力”
こうして始めたのが、「ともそだち」と呼ばれる活動です。
「友達と育つ」、「大人が子どもとともに育つ」という意味を込めました。
元教員の親戚のサポートを受け、娘の芽衣さんとともに、学校に行っていない子どもたちと週に1度、鹿児島市内のお寺を借りて集まります。
みんなで何をするのか。アイデアを出して決めるのは、すべて自分たちです。
最初は2人だった参加者も、今は小学生から中学生まで10人ほどに増え、子どもたちが企画した運動会も開催しました。
参加している6年生の児童は、最初は緊張したものの、今では楽しく過ごせていると言います。
参加者の1人 鮫島乃絵さん
「家にずっとひきこもって暗くて、自分がいなくていいんだと思いながらもずっとゲームとかしていました。『ともそだち』では、友達が多くて、自分の意見もちゃんと聞いてくれるから、仲よくなったらもう全部が出せてすごく楽しいです」
居場所づくりの活動を始めて1年。野間さんが驚かされたのは、子どもたちが自分で問題を解決する力でした。
「私も含めてお母さんたちはすごく多いと思いますが、先回りして言い過ぎちゃうんです。何かトラブルやけんかがあっても、子どもたちは大人が何も言わなくてもちゃんと何とかするんです。そういう勇気も私自身『ともそだち』を始めてから持てました」
ずっと続けてきた“居場所づくり”
いろんな人たちとの関わりを通して、さらに自信をつけてもらいたい。
野間さんは先月、「ともそだち」のメンバーと鹿児島市の野外イベントに参加しました。
イベントではフリーマーケットのブースを出店。店頭に立つのは子どもたちです。
みずから企画し、準備も行ってきたということで、自作のゲームの体験コーナーも用意。
訪れたお客さんたちと、積極的にコミュニケーションをとる姿が目立ちました。
そして、音楽ステージでは、野間さんと子どもたちが、地元のミュージシャンとともに演奏を披露。音楽を通じて、会場も一体となりました。
「楽しかったです。みんながいるから大丈夫って気持ちになりました」
「観客が近かったから緊張したけど、楽しかったです」
「バンドを組むことが自分にとっての居場所づくりだったし、ライブハウスというのを拠点にして人を集めるということも居場所づくりだったので、ずっとそれをやってきているんだなと思います。
週1回の活動ですけど、楽しく過ごす仲間がいて、そういう時間や、自分にはここがあると思ってもらえたら、それが心の支えになってくれたらすごくいいなと思います」
取材を終えて
筆者(30歳)と同世代でバンドをやっていた人たちは、「GO!GO!7188」をコピーしていたという人も多いのではないでしょうか。
私も聴く側として親しんでいましたが、鹿児島に異動して地元ゆかりの著名人などを調べる中で、バンドが鹿児島で結成されたことや、野間さんの「ともそだち」の活動を知り、ぜひお話をうかがってみたいと思い、取材しました。
印象的だったのは、取材に応じてくれた子どもたちの楽しそうな表情と元気な姿です。インタビューへの受け答えも積極的で、野外イベントでのフリーマーケットでもお客さんたちとしっかりコミュニケーションをとっていました。
仲間がいること、そして自分の居場所があることが、子どもたちの自信につながっているのだと感じます。
令和2年度の調査では、30日以上学校を欠席した「不登校」の子どもは、県内の公立の小中学校と高校で2989人にも上っています。
「ともそだち」の活動は、インスタグラムやフェイスブックでも発信しています。また、詳細は活動場所の同朋寺(099-247-5160)まで問い合わせてほしいということです。