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北海道電力の電気料金 値上げで世界一に⁉

  • 2023年9月7日

視聴者の皆さんの疑問に答えるシラベルカ。次回は皆さんが支払う“あの料金”についてです。

60代男性からの質問
『北電の電気料金が値上がりするようですが、これが実現すると、ついに北電の電気料金が 世界で一番高い電気料金になるのか調べてほしいです。』

テレビに、スマホの充電、炊飯に、冷暖房と、使わないわけにはなかなかいかない電気…。

家庭向けの電気料金のうち道内の7割以上にあたる240万戸が契約する料金プラン「規制料金」について、北電が6月からの値上げを申請しています。

値上げ額は一般家庭のモデル世帯(料金メニュー:従量電灯B、契約電流:30A〈アンペア〉、使用量:1か月あたり400kWh〈キロワットアワー〉)だと32.0%増の20,455円になり、値上げ額は4,793円です。

今回、全国の大手電力10社のうち、北電を含む7社がこの「規制料金」の値上げを申請していますが、各社と比べるとどうなのでしょうか。
今回はここから「シラベルカ」スタートです!

【全国では最も高い電気料金に】

今回値上げ申請した大手電力7社の値上げ申請額を、今回値上げ申請をしていない3社と合わせてみてみます。(料金メニュー:従量電灯B、契約電流:30A〈アンペア〉、使用量:1か月あたり400kWh〈キロワットアワー〉)

▼値上げ申請した7社
・北海道 20,455円(32%増、現行15,662円)
・東北  17,601円(31%増、現行13,475円)
・東京  18,431円(28%増、現行14,444円)
・北陸  16,158円(45%増、現行11,155円)
・中国  16,959円(30%増、現行13,012円)
・四国  16,276円(26%増、現行12,884円)
・沖縄  19,418円(38%増、現行14,074円)

▼値上げ申請していない3社
・中部 13,521円
・関西 13,036円
・九州 11,910円

値上げ前の現行料金が10社のなかで最も高かった北電の料金ですが、値上げ後も最も高くなりました。今回値上げ申請をしていない最安の九州電力と比べると実に倍近い開きが出ています。

【電力供給コスト>電気料金収入】

では今回の料金設定はどのように行われたのでしょうか?
北電によりますと、自前の火力発電所で使う燃料価格のほか、ほかの発電会社から仕入れる電力の価格が高騰して電力供給コストが電気料金収入を大きく上回る状態が続いているため、収入不足が発生しているということです。

具体的に見てみます。
前回の値上げ申請時の10年前と比べて、1年あたりの燃料費は1,484億円、ほかの会社から仕入れた購入電力費は1,028億円がそれぞれ増えたことなどから、このままの料金を続けると456億円の収入不足の発生が見込まれるということです。

ただ計算する際に対象とした2022年11月までの3か月に比べると足元の2023年1月までの3か月では燃料や電力の価格が下がっています。国の求めに応じて改めて計算し直したところ、燃料費と購入電力料を合わせて433億円を減らせることが分かったことなどからさきほどのモデル世帯の料金は…

▼19,479円(26%増)と値上げ率はおよそ6ポイント下がりました。
しかし引き続き全国一の料金水準となっています。

【原発の費用も圧縮へ】

再計算により今回申請している7社のうち6社の値上げ率は下がりましたが依然として16~46%に上り今回値上げをしない電力会社の料金水準との格差も生じています。国は電気料金の値上げを審査する専門会合で「地域間格差の拡大をどの程度まで許容しうるのか」という意見も踏まえ、さらなるコストの圧縮に向け議論を進めています。

そのポイントの1つとなっているのが、11年前に運転停止した泊原子力発電所です。今回の値上げ申請では、10年前の前回申請時に電源の5%を構成していた原子力発電を0%としました。値上げ申請の計算の対象期間の2023~2025年度では再稼働が見込めないためです。原子力の代わりに火力の構成が増えたことで燃料費がさらに増えた面もありますが、北電は2026年12月に再稼働するものとし「再稼働したあかつきには費用が減り安いものに転換できるのでこれで値下げする」(藤井裕社長)として、原発により主に発生した費用として800億円を計上しています。

この費用のうち“再稼働に向けた”原子炉容器やタービンのほかポンプや配管などの付属設備の点検と修繕費の合計137億円について、専門会合では「対象期間に供給力として貢献しないことへの抵抗に理解」、「再稼働を十分な蓋然性をもって見通すことは難しい」などの意見が出され、再稼働時期に応じて追加的に必要となる部分、額として全体の1割程度の計上が認められないこととなりました。さらに残った9割程度についても原子力以外の電源の修繕費などとともに、ほかの大手電力と比べて非効率な場合には効率化を促す対象となってさらに減らされる見通しです。ただ費用の種類によっては効率化が難しいものもあり種類ごとにどの程度効率化を促すか検討が進められています。

しかしなぜ北海道はほかの地域と比べて割高になっているのでしょうか。
元北海道経産局長で北海道の電力事情に詳しい増山壽一さんは、

・広大な土地に供給先が分散している
・北電のほかに道内をカバーできる電力会社がなく供給責任が重い
・原子力の割合が多い電源構造下で原発が稼働できない…ことなどを挙げ
「企業体としていろんな不幸が重なっていま大変な時期になっている」と
指摘します。

【北海道の特殊性】
これらの点について北電は“北海道エリアの特殊性”として、北海道は本州との間で電力の供給を受けることができるのが送電設備の容量上105万キロワットと限られていることから、2018年の北海道胆振東部地震の際のような大型電源が停止するケースに備える調整電力として、出力の多くない発電所を多く持たなければならずコストがかかることを挙げています。北電はこうした“特殊性”への対策も進めていて、本州との間の送電設備30万キロワット分の増設を2028年3月までに進めることにしています。それまでに1台あたり35万キロワット以下の比較的小規模な火力発電所を6台、合わせて出力130万キロワット分の休廃止も順次計画しています。

また原発について北電は2030年の電源構成で4割を超える割合で見込んでいます。この再稼働が電力会社の経営にいったいどれほど影響を及ぼすのでしょうか。例えば今回値上げ申請をしていない関西電力は、2024年3月期の純利益として過去最高の3050億円になる見通しを発表しています。この夏までに原発2機を再稼働(高浜1・2号機※発表後に電線管の火災防護対策の工事計画変更のため遅れる見通しに)させることにより石炭などの火力発電向けの燃料費が減少するためです。稼働率は20ポイントほど増えて70%程度になる見通しで、稼働率1ポイントあたりの影響額は56億円見込めるということです。同じく九州電力も2024年3月期は原発の稼働率が30ポイントあまり増えて90%に上がり純利益が900億円となる見通しを発表しました。

関電の電源構成は実績でおよそ原子力3割で火力4割、九電も実績で原子力と火力がともに3割あまりに対して、北電は原子力がゼロ、火力が6割を超えています。再稼働した場合に減らせる燃料費はかなりの額となりそうで、ほかの2社のように経営への影響は小さくありません。

では本題に入ります。北海道の電気料金は世界の国々と比べても高いのでしょうか。以下は日本を100とした場合の各国の電気料金の水準です。(2020年、海外電力調査会)


ドイツも料金高騰】
世界のエネルギー事情に詳しい環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長は…

・ドイツなど日本より高い国は少なくない。
・地球温暖化対策に使うための環境税などの上乗せ部分がドイツは40%と非常に高い。
・ドイツは昨年の急激な燃料費の高騰に対してこの環境税などの上乗せ部分を少なくして家計の負担を緩和した、ことなどを挙げ「もともと環境税という非常に高いバッファー(緩衝材)を設けているので負担軽減策をする余地があったが日本の場合はそれがなく電気料金の高騰が家計を直撃している」と指摘します。

ドイツでは、輸入する天然ガスのうち5割以上を占めていたロシアからの供給が一時停止したことなどにより電力の価格が2022年8月に前の年と比べて3倍に高騰。これを受け例えばミュンヘンの地域電力会社、シュタットヴェルケ・ミュンヘンは2022年11月に電力料金の値上げを発表しました。1キロワットアワーあたり24.97ユーロ・セントだったのを2023年から61.89ユーロ・セントとする内容です。これは当時の為替レート1ユーロ・セント=1.4円とすると、1か月に400キロワットアワー使う家庭では34,658円。北電が値上げ申請している料金と比べてもかなり高いのが分かります。対してドイツ政府は2021年に1キロワットアワーあたり6・5ユーロ・セント(当時の為替レートで1ユーロ・セント=1.3円)徴収していた再生可能エネルギー賦課金を2022年7月から廃止するなど、家計の負担軽減に取り組んでいます。1か月に400キロワットアワー使う家庭だと3,380円の負担軽減策です。ちなみに日本でもことし1月の使用分から各家庭に1キロワットアワーあたり7円が政府からの補助金として支給されていて1か月に400キロワットアワー使う家庭だと2,800円の負担軽減にあたりますがいまのところ9月までです(9月は1キロワットアワーあたり3・5円に)。

※一時停止したロシアからの天然ガスパイプライン

また原発についてドイツでは4月に国内ですべての稼働を終えました。国の電源構成で5割近い風力などの再生可能エネルギーで供給は確保し、原発については廃炉にかかるコストや放射性廃棄物の処分コストの重さを重視した格好です。飯田所長は「過渡的に国民負担をしてでもとにかく再生エネを増やせば増やすほど海外から買ってくる化石燃料を減らせる、CO2も減らせる、エネルギー安全保障も高くなるというのが世界のコンセンサス」と述べ、早くから再生可能エネルギーへの投資をしてきた国と国民負担の差が今後生じてくる可能性を指摘しています。

さて、電気料金の疑問に応えるべく進めてきた今回のシラベルカですが、放送は5月9日(火)午後6時~「ほっとニュース北海道」で!
放送では皆さんに今後取材してほしいことについてアンケートを行います。

▶「北電の料金設定や発電のこと、もっと知りたい」
▶「電気料金値上げでどんな影響が広がるのか知りたい」

合わせてご意見も募集したいと思いますのでぜひご参加ください!
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