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なぜ北海道の電気代は高いの?識者に聞いてみた②

  • 2023年5月15日

家庭向けの電気料金のうち、道内の7割以上にあたる240万戸が契約する料金プラン「規制料金」について、北海道電力は6月から3割近い値上げを申請しています。全国的にも高い北海道の電気料金。世界各国と比べるとどうなのか。その答えを探るべく、有識者にインタビューをしました。

今回お話を伺ったのは、世界のエネルギー事情に詳しい飯田哲也さん。飯田さんは、北海道よりも高い電気料金の国は少なくないと指摘します。そのうえでこうした電気料金の高い国は、割高で環境に良くない化石燃料を減らすために使う税金を上乗せして将来の負担を減らすために先行投資していると語ります。

有識者プロフィール
〇飯田哲也さん

特定非営利活動法人 環境エネルギー政策研究所 所長。世界のエネルギー事情に詳しい。

非効率な投資がないか

Q.北海道電力が電気料金の値上げを申請しています。3割くらいの大幅な値上げとなります。なんでこんなに高いのでしょうか。

A.全体として、電力会社は無駄な投資をしています。なので大幅な値上げの理由を答えるとしたら、「経営全体が非効率」というのが最大の原因です。北海道電力でいうと、再稼働を目指して泊原子力発電所にひたすらに投資をしています。
けれど実は北海道電力だけでなく、日本の電力会社は全体的に非効率な投資をしているんです。世界的に見ても、日本の電気代は世界で一番高い水準ではないかと思います。

もちろん、日本はすべての燃料を輸入しているという事情はありますが、市場の独占がずっと続いてきたことが影響しています。もともと景気対策的に電気の設備投資がおこなわれたこともあって、たとえば送電線1本つくるのにも民間がつくるより2~4倍すると言われています。

Q.北海道電力は将来、泊原子力発電所を再稼働したときは値下げをすると言っていますが、そもそも世界の潮流としては電力を賄うために原子力発電を使うことは一般的なのでしょうか?

A.世界の潮流としては、どこの国も再生可能エネルギーで電気を作ろうとしています。いまや太陽光と風力が一番安くなっていて、この先も技術が発達していくことで、今後さらに安価になっていくことが見込まれています。しかも資源がなくなることはほとんどない。そして再生可能エネルギーを増やせば増やすほど、海外から買ってくる化石燃料もCO2も減らせることになります。その上、エネルギー安全保障も高くなる。
アメリカや中国、フランスやイギリスも原子力は保持していますが、最終的には再生可能エネルギーに切り替えることを目標にしています。それが経済的に最も合理的だし、環境保護にもなるし、国内で賄うことで国民へ電気を安定供給ができるという意味でも良いというのが世界の潮流です。

世界は再エネに大きく舵

Q.日本の原子力を主力にしようとする考えは、時代の流れには反しているということでしょうか。

A.世界的な流れとはまったく逆向きで、正直日本はどこに向かっているのかがわかりません。経済産業省は、「再生可能エネルギーを行うための適地がこれ以上ないので、原子力発電が必要なんです」という説明をしています。ですが、日本も含めてこれから目指すところは「再生可能エネルギー100%」しかないんです。もし実現できれば、化石燃料の輸入にかけている予算が浮くことになります(昨年の輸入額は33兆円)。輸入にかけていたお金で自国経済も活発化するし、化石燃料を使わなくなるのでCO2も減りますよね。ドイツはロシアによる軍事侵攻を受けて、2022年4月に2035年までに100%再生可能エネルギーに転換するという方針を打ち出しました。現在すでに再生可能エネルギーで電力を49%賄っていて、今年4月すべての原子力発電をとめました。そういった世界の動きからみても、日本の原子力に注目した電気料金の値上げは、あまりにも国民を欺く、あざといやり方じゃないかなと思いますね。

図 1ドイツと日本の再生可能エネルギー賦課金等の割合

Q.世界各国をみていくと、日本より電気料金が高い地域もあるかと思います。どうしてなのでしょうか?

A.デンマークやドイツやスウェーデンは、日本より2.5倍ほど電気料金が高いですが、それは環境税のために高いんですね。電気を使うことは環境に悪いことであるから、税金がかかる。つまり、「電気を使わないこと」が良しとされています。そもそも経済全体を付加価値化するという大きな目標があって、電力は必要なのですが、同時に環境税をかけてどんどん再生可能エネルギーにシフトするということをやっています。だから一般的な国民は、断熱が高い家に住むなどして、エネルギーをあまり使わない。さらに本当に貧しい人たちは、福祉でカバーする形になっています。全体として、福祉をベースとして支えながら環境負荷の低い持続可能な社会に向けて、エネルギー自立、脱気候変動という方向をみんなで目指しているので、社会のデザイン自体がまったくもって違うんです。生活費における電気料金の割合も低く、単価が高くても打撃をうけるほどではない。そのような豊かな経済状況もあり、社会全体が電気料金を高い金額で支払うことを進んで選択しているのだと思いますね。

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