“自分に正直に”ニューヨークで活躍するキャバレーシンガー
- 2023年09月11日
ニューヨークで活躍するキャバレーシンガー
トシ・カプチーノさん
ステージで歌声を響かせているのはニューヨークを拠点に数々のショーを行っている福岡出身のキャバレーシンガー、トシ・カプチーノさん。本名、平野利光さん(62)です。
福岡ソフトバンクホークスの本拠地PayPayドームで2017年から3年連続で「君が代」を歌った経験もある実力派のシンガーです。
大きな夢としてはNHKホールで歌うこと。実はもう還暦過ぎてますけど、まだ紅白歌合戦に出たいと思っています!
本当の自分をだせなかった
ゲイであることを公表しているトシさんですが、日本にいた時は周囲に隠しながら生活していたといいます。
中学高校時代はいちばんつらい時期かもしれない僕の人生の中で。
いつもビクビクしていて、もし僕がゲイだっていうことを知られたらどうしようって常に思っていました。人とは違う、性的指向が人と違うっていうのがいちばんつらかったですよね。
誰にも言えないから。母にも、姉にも、友達にもましてや言えない。
小さい頃からの夢だった歌手を目指し多くのオーディションに参加、上京してバンド活動なども行いました。しかしゲイだということがばれるのを恐れ、本来の自分が見せられずに夢をあきらめます。
故郷の福岡に戻り、音楽とは関係のない仕事をしていたトシさん。
「夢をあきらめ、生きている意味さえ分からない状態だった」といいます。
自分に正直に生きる
転機は33歳の時。たまたま旅行で訪れたニューヨークで衝撃を受けます。
男性同士が当たり前に手をつないでいたり、誰もが人目を気にせず自由に生きている姿を目の当たりにします。
ブロードウェイって本当にゲイの人が多くて堂々と自分がゲイだと言っていて。
セクシャリティなんてどうでもよくて、とにかく自分がやりたい歌とかダンスとか芝居とかを一生懸命やっている。その姿を見て、この街は自分に正直に生きられる街なんだって思いました。僕は一度封印した歌だけどニューヨークでもう一回やってもいいんじゃないかって。
2年後、ニューヨークに移住。そして、あきらめていた歌手になるという夢に再び挑戦します。
ショーの構成から会場の手配、集客などすべて1人で行い、一からキャバレーのショーを作り上げていきました。
今ではアメリカだけでなくブラジルなど年間およそ20本のショーを行っています。
ニューヨークに行って自分のセクシャリティを隠す必要がなくなったんですよ。
自分をさらけだせる状況になって何も恐れるものがなくなった。
歌手になるという夢を実現したトシさん。
ショーを始めた頃に出会ったアメリカ人のパートナーと9年前に結婚。今はパートナーもショーをサポートしてくれているそうです。
日本でのショーで伝えたい“自分に正直に生きる”大切さ
今回は、ニューヨークで行ったショーを東京、名古屋そして福岡など国内6か所で披露しました。
北九州市で行われたショーのテーマは昭和歌謡。なつかしい歌と軽快なトークで観客を楽しませます。
ニューヨークからトシ・カプチーノでございます。
還暦プラスワンのおばはんでございます。
ショーの終盤、トシさんが自身の過去について語りました。
中学時代にやっぱり自分がゲイだっていうのがもう本当に苦しくて苦しくて、誰にも相談できなくて嫌でしょうがなくて。自殺しようと思ったこともあった。
最後に歌ったのはその経験を元にしたオリジナルソング。
『お母さんには言わんといてお母さんには言わんといて』
『もう針のむしろに座るような気持ちですべてが嫌になって自殺しようと男子寮の屋上から飛び降りようとした。でもそこは2階だった!』
(トシさんオリジナルソング)
つらい経験をコミカルな歌詞で歌い観客を楽しませたトシさん。自身のショーを通して「自分に正直に生きる」大切さを感じてもらいたいというメッセージでした。
トシさんが日本では生きづらかった。でもNYに行って自分らしさが出せたというところがすごく響きました心に。あんな風に私たちを楽しませてくれるのに、いろんな思いがあったんだろうなって。一番最後の歌にもね。楽しかったし感動しました。
人生であんなにがんばっている方がいらっしゃるというのがとても感激しました。いろんな意味でそれぞれが自分を大切にするというのはとてもいいなと思いました。
やっぱり自分らしく、自分に正直に生きるっていうのはすごく大切なことだと思います。僕みたいなこういう生き方もあるんだよ、そういうところを僕のショーを通して見ていただければいいかな。