密着!“海の宝石”探し
- 2023年08月29日
鮮やかなウミウシの写真 撮影する福岡のダイバーを取材
この写真を見たとき、衝撃を受けました。
写っているのは、貝の仲間のウミウシの一種、「アオウミウシ」です。
ウミウシは「海の宝石」と呼ばれ、ダイバーから人気の生き物ですが、
これほど鮮やかで躍動感のあるウミウシの写真を初めて見ました。
写真を撮ったのは、ウミウシを撮影し続けて10年以上になる
福岡のダイバーです。
いったいどう撮影しているのか?
NHK潜水班に所属する私も一緒に海に潜って、撮影現場を取材しました。
かわいく動くウミウシを撮影 牛尾真代さん
ダイビングのインストラクター、牛尾真代さんです。
ウミウシがかわいく動く瞬間を狙い、躍動感のある写真を撮り続けて13年。
その数、5万枚以上。
牛尾さんと一緒に、福岡県福津市にある「恋の浦」の海に潜ります。
水深10メートル以下の遠浅の海。
牛尾さんの後をついていくと…。
牛尾さんが海草を指さしました。
一見、ただの海草に見えますが、近づいてよく見てみると…。
赤い丸で囲まれた部分に、とっても小さな生き物が!
体長1ミリ未満の「ニセハクセンミノウミウシ」です。
ここまで近づいても、どんなウミウシなのかよくわからないですよね?
ところが、牛尾さんの手にかかれば…。
体の色や模様まで鮮明に捉えています。
私も写真を見て初めて、こんなに鮮やかなウミウシがあの場にいたことを知りました。
さらに、牛尾さんの撮影は続きます。今度は大きなウミウシが…。
私の指の先、体長10センチほどの「キイロウミウシ」。
2匹がくっついていました。
牛尾さん、このウミウシを、こう撮影しました。
正面から撮ることで、太い体から出る存在感はそのままに、かわいい顔つきを捉えました。
ときには、ウミウシが魅力的なポーズをとるまで、海底で待ち続けて写真に収めるとも言います。
小さな生物が海の中で頑張っているのを見ると、すごくかわいいなと思って、
それから好きになって、いろいろなウミウシに会いたいと思って、
たくさん探すようになりましたね。
ウミウシ撮影は一筋縄ではいかない
ただ、大海原でわずか数ミリのウミウシを見つけ出すのは大変です。
どうやってウミウシを見つけているのか、牛尾さんに聞いてみると…。
ウミウシ自体が小さいので、単体で探そうと思うと難しいですね…。
えさの方が大きいから、例えば海草を食べるウミウシなら、
海草は浅場に生えるから浅い場所を探すなど、ピンポイントで探しています。
ウミウシを見つけた後も大変です。
取材中、体長5ミリのウミウシを発見した牛尾さん。シャッターを切ると…。
一見、ウミウシの姿を捉えているように見えますが、わずかにピントがずれています。
周りの地形や海中を漂う浮遊物にピントを取られ、10年以上撮影を続ける牛尾さんでも、
上手く撮れないこともあるのです。
福岡の海は「宝石箱」 すてきな生物がたくさん!
取材中、牛尾さんが海底に静止して何枚もシャッターを切り始めました。
いったい何がいたのか?近づいて見てみると…。
海草の上にいたのは「フジナミウミウシ」!
恋の浦では夏の時期にしか見ることができない貴重なウミウシです。
ところが、撮影を始めると、フジナミウミウシが海草の下に隠れていってしまいます。
海草で姿が撮影しづらい中、牛尾さんがフレームに収めたのが、こちらです。
名前の由来の鮮やかな波模様。
海草の間で体をひねりながら、その姿を現した瞬間を見事に捉えました。
ダイビング後、様々なウミウシに出会えて喜ぶ牛尾さん。
牛尾さんにとって、福岡の海がどんな場所なのかを聞くと…。
私にとっては「宝石箱」です。
福岡の海にも、カラフルですてきな生物がたくさんいるんだよっていうことを
知ってもらえたらな!
【取材を終えて…】
私もダイバーとしてウミウシが好きでしたが、牛尾さんの写真を見て、
改めてウミウシの魅力に気付かされました。
牛尾さんが撮影している写真は、12月14日から、福岡アジア美術館で展示されます。
四季折々に見られるウミウシの写真、およそ300点が並ぶということです。
ダイバーもそうでない方も、小さな生き物やそうした生き物が住まう福岡の海に思いを
はせるきっかけになるのはないかと感じました。
最後に、鮮やかなウミウシですが、中には毒を持つものもいます。
海で見つけても触らずに、目で見て楽しんでください。