韓国のプサンでBTSの大規模な無料コンサート!その狙いとは
- 2022年10月25日
BTSがプサンで無料コンサート!
10月15日、韓国第2の都市・プサンにある競技場でBTSの無料コンサートが行われました。韓国政府が水際対策を緩和したタイミングと重なったこともあって、福岡からも多くのファンがチャーター機などで駆けつけました。さらに、会場とは別に1万人規模のパブリックビューイングやインターネットを使ったライブ配信も行われました。
コンサートの開催が決まった時、BTSはグループとしての活動を中断すると発表していて、ファンの間では「グループとして活動する貴重なコンサートになるかもしれない」などと、世界中から注目が集まっていました。こうしたタイミングで開催されたコンサートの狙いを取材しました。
街じゅうがBTS一色に
コンサートの4日前、プサンを訪れると、すでに街のあちこちにBTSの大型パネルや垂れ幕が設置されていました。プサン駅のポスターの前で写真を撮っていた日本人のファンに話を聞くと、コンサートの前にプサンを観光しようと、少し早めに訪れたと言います。
「BTSのメンバーに久々にやっと会えるという気持ちが大きくて、すごい楽しみです」
さらに夜には、観光名所の「プサンタワー」や「チャガルチ市場」のほか、公共施設などがBTSのイメージカラーの紫でライトアップされ、街をあげて盛り上がりを演出していました。
BTSで万博誘致へ
どうしてここまで力を入れているのか。コンサートの横断幕をよく見ると、「エキスポ2030」という文字が。実はプサン、大阪・関西万博の次、2030年の万博の開催地に立候補しているのです。
万博の開催予定地となっている港を訪れると、クレーン車が一帯に立ち並び、開発が進められていました。開催されれば、このあたり一帯に展示場などが設置される予定です。開催予定地のすぐ近くには、プサンと福岡を結ぶ高速船「ビートル」が到着する国際旅客ターミナルもあります。
広さはなんとペイペイドームおよそ50個分。一部ではすでに再開発が進められていて、3500万人が訪れると期待されています。イタリアのローマなど世界的に有名な都市との激しい誘致合戦を勝ち抜こうと、メンバーの2人がプサン出身というBTSを広報大使に起用。コンサートを通じて誘致活動を世界にPRすることにしていたのです。
「ラッピングバスは見たことあります。(開催は)いいです。景気もよくなるでしょうし」
もう一つの切り札は「デジタル」
Kポップとは別に、もう1つ、万博誘致の切り札があると聞いて、誘致本部を訪ねたところ、デジタル先進国と言われる韓国ならではの取り組みがありました。
キーワードは、なんと、仮想空間・メタバース。詳細はまだ話せないということでしたが、試験的に誘致活動にも取り入れているというので、専用アプリを体験してみました。
専用のアプリでは開催予定地周辺の町並みが再現されていて、世界各地から同じ空間を訪れている人と交流できます。誘致本部の担当者は、より質の高いメタバース空間を開発中だとしています。
「今のところは試験用なのでディテールの部分で質が低いところがあります。足りないところを補っていくつもりです」
誘致本部はさらに、SNSを使ったPR活動も積極的に展開しています。誘致活動の公式Tシャツを着ているのは、5年前からプサンに住む北九州市出身の有田久美子さん。
「SNSでプサンの名所やおいしい食べ物を紹介しています」
有田さんのような市内に住む外国人にプサンの魅力について母国語で発信してもらうことで、誘致本部とつながりのない人たちにも次々に拡散していくことを期待しているといいます。
「プサンはとても自然環境にも恵まれて食べるものも美味しいので、 ぜひ私たちと一緒にプサン万博誘致を応援してもらえたら」
Kポップやデジタル技術といった韓国の強みを生かして誘致を目指すプサン。実現すれば、福岡にも大きなメリットがあると担当者は強調します。
「新型コロナの感染も落ち着いて両国の関係も正常化に向けて進んでいる状態にあるので、この 状態で万博を誘致できれば、プサンだけでなく、福岡や九州全域の観光を盛り上げることにつながると思うので、プサンと福岡の緊密な協力をせつに願っています」
福岡からも万博を期待する声
一方、福岡からも開催を期待する声が聞かれました。福岡県とプサン広域市は、周辺の6つの自治体とおよそ30年間、観光面で協力してきました。昨年度は日韓共同で観光PR動画を作成。福岡県もPR動画を韓国語の字幕をつけてプサン広域市のホームページなどで公表しています。
また、日韓周遊をPRするページを海外の旅行予約サイトに掲載。ページには韓国や九州などの地図を載せて、周遊ルートや観光スポットなどをわかりやすく紹介しています。旅行サイトによりますと、このページを掲載していた4か月の間に、このページを通じて240人分の予約が入ったということです。
コロナ禍で落ち込んでしまった観光業ですが、福岡県の担当者は、プサン万博を観光業を再び盛り上げるきっかけにしたいと力強く話していました。
「プサンで万博が開催されるということになれば、たくさんの方が世界中からプサンに集まることが予想されます。飛行機や船を利用して短時間で来られる福岡を拠点に北部九州も楽しんでいただける絶好の機会になるのではないかと期待しております」
取材を終えて
今回、コンサートの4日前から現地で取材を始めました。市を挙げてKーPOPやデジタルなどあらゆる強みを活用して万博誘致に向けて取り組もうとする熱気を感じました。2030年の万博の開催地は、2023年11月に世界の170カ国による投票で決まります。万博の開催や開催に向けた誘致活動がコロナ禍で大打撃を受けた日韓の観光産業の希望の光となるのか。誘致活動の広がりに期待し、今後も注目していきます。
(2023年11月、フランスで開かれたBIE=博覧会国際事務局の総会で、投票の結果、サウジアラビアのリヤドが開催地に決まりました。リヤドは119票、プサンは29票、ローマは17票を獲得しました。)