全国で書店の閉店が相次いでいます。この10年間で、全国の書店の数はおよそ4600店あまり減少し、とりわけ小規模店舗が大きく減りました。一方、ネット通販や電子書籍の普及などのなかで、アイデアで来店客を増やそうという「街の本屋」も出てきています。現場の取り組みや経営支援の動きについてまとめました。
全国の書店や出版社などの業界団体が設立した「日本出版インフラセンター」によりますと、ことし3月時点の書店数は1万918店で、10年前と比べて、4600店あまり減りました。
とりわけ、売り場面積が1坪から49坪の小規模な店舗が大きく減り、10年前は5598店あったのが、ことし3月時点では3789店となっています。
販売の主力だった雑誌や漫画を中心に電子書籍化が進んだことや、ネット通販の拡大などで客足が遠のき、経営体力の乏しいいわゆる「街の本屋」を中心に経営状況が悪化したことが背景にあると見られています。
東京・文京区の地下鉄の駅の近くにある書店では、売り上げの回復につなげようと、この店では本の品ぞろえや陳列のしかたに特色をもたせる独自の取り組みを続けているほか、著者を招いたイベントや読書会を定期的に開くなどし、来店客を増やそうとしています。
「文脈棚」と名付けられた一角では、「歴史」や「食」、「認知症」などのテーマ別に、新書や専門書、雑誌といったタイプの異なる本を組み合わせて陳列しています。
このうち、「歴史」をテーマにした本棚には、日本史に関する書籍のまわりに店側があわせて薦めたい民俗学や紀行文学の文庫本や単行本なども並べられていて、来店客が目当てにしていた本以外にも、幅広く関心をもってもらう狙いがあるということです。
往来堂書店 笈入建志代表
「丁寧にお客に本を薦めて、頑張っている人はたくさんいるが、お店が採算にのらず、やむをえず閉店になってしまうというニュースがとても多い。出版社とも話をしながら、お互いが利益の出るような仕組みを模索する必要がある」
ネット通販や電子書籍の普及などで全国的に書店が減少していることを受けて、齋藤経済産業大臣はきょう東京都内で書店の経営者らと意見を交換しました。
参加者からは、利益率が低いビジネスにもかかわらず、最近では普及が進むキャッシュレス決済の手数料が負担になっているとか、自治体の図書館に本を納入する際に実質的な値引きを迫られるケースもあるといった厳しい経営状況を訴える声が相次ぎました。
経済産業省は地域の書店には文化拠点の役割があるとして、新たな支援策を検討しています。意見交換のあと齋藤大臣は記者団に対して、「ほかの省庁との連携も今後必要になると思う。図書館、ウェブ、本屋の3つが共存する世界を目指したい」と述べ、ネット通販などとの共存に向けた経営支援策を検討していきたいという考えを示しました。
海外では、出版文化の多様性などを確保していこうと、「街の本屋」を保護する政策を進める国もあります。
経済産業省によりますと、フランスでは、電子書籍の定価販売を義務づける法律が制定されています。さらに「反アマゾン法」とも呼ばれる法律が2014年に定められ、オンライン書店による無料配送が禁止されているということです。
また、ドイツでは出版物の物流などを手がける会社が小規模な書店の支援にもつながるサービスを展開しています。前日の夕方までに発注すれば、翌日には書籍が店舗に届くサービスや、オンライン販売の代行なども行っていて、小規模な書店が過剰な在庫を抱えるリスクが抑えられているほか、送料無料など利便性の面でもアマゾンに対抗しているということです。