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東京・台東区 包丁専門店が外国人観光客に人気 インバウンド需要が回復傾向 今後の見通しは?

  • 2023年10月20日

日本を訪れる外国人観光客に最近、人気なのが包丁などの刃物です。東京・台東区にある老舗の包丁専門店には、欧米や東南アジアなどの外国人が訪れていると言うことです。
その背景やインバウンド需要がどの程度、回復しているのか、まとめました。

台東区・老舗包丁専門店 外国人観光客!!

東京・台東区にある老舗の包丁専門店は、買い物客の9割程度が欧米や東南アジアなどの外国人だといいます。1日平均で100組以上が訪れ、店の売上げは、新型コロナの感染拡大前の2019年と比べて1.5倍ほどになっているといいます。

店によりますと、外国人観光客は単価が高い商品を購入する傾向が強く、1本2万円程度の包丁を家族や友人の分も含めて複数、買う人が多いということです。

店では、購入した刃物に名前や買った年などをカタカナや漢数字で刻印するサービスを無料で行っていて、人気を集めているということです。
 

包丁6本を購入したオーストラリアから訪れた30代の女性
「日本の刃物は品質が高いと感じます。今は円安なので買い物をする上ではメリットで多少高くても買えそうです」

かまた刃研社の鎌田晴一 代表取締役
「ことしで創業から100年ですが、創業以来の売り上げになっています。コロナ禍はなかなか大変でしたが、急激によくなっている実感です。これが続いてほしいです」

インバウンド需要 どこまで回復?

◇訪日外国人旅行者 218万4300人…2019年同月比の96%まで回復◇
日本政府観光局の発表によりますと、9月、日本を訪れた外国人旅行者は推計で218万4300人とコロナ禍前の2019年の同じ月の96%まで回復しました。
 

◇訪日外国人の消費額…過去最高に
また、観光庁の発表によりますと、ことし7月から9月までの3か月間に、日本を訪れた外国人が国内で消費した金額は、速報値で1兆3904億円でした。

3か月間の消費額が、これまでで最も多かったのは、コロナ禍前の2019年4月から6月までの1兆2673億円でしたが、これを上回って過去最高となりました。

◇その背景は?◇
背景には、日本を訪れる外国人の数の急速な回復や、このところ進んでいる円安などがあると見られ、1人あたりの消費額は平均で21万1000円となっています。

◇消費額の伸びが大きかった国や地域は?◇
国や地域別で消費額の伸びが大きかったのは、フィリピンが2019年の同じ時期の2.18倍、韓国が2.09倍、シンガポールが2倍などでした。

一方、中国は、ことし8月に団体旅行が解禁されたものの2019年の同じ時期を40%下回っていて、回復の鈍さが目立っています。

これにより、ことし1月から9月までの外国人の消費額はおよそ3兆6000億円となり、今後、政府が目標とする年間5兆円を上回るかが焦点となります。

消費額 過去最高の背景や今後の見通しは?

外国人旅行者の国内での消費額が過去最高となった背景や今後の見通しについて、観光政策に詳しい城西国際大学観光学部の佐滝剛弘教授に聞きました。

Q.ことし7月から9月までの3か月間に、日本を訪れた外国人が国内で消費した金額は、速報値で1兆3904億円と過去最高となりました。なぜ消費額が伸びているのでしょうか。

A.新型コロナで落ち込んでいた外国人旅行者の数が回復していることに加え、円安が購買意欲を押し上げていることが要因だろう。日本の文化に関心を持つ外国人は多いが、新型コロナで数年間、日本に行けなかった反動もあるのか、関連のグッズなどを買いに一気に日本に来ている。物価高であっても、円安の影響で外国人にとっては買い物がしやすく、結果として買い物の量が増え、消費額が伸びているのではないか。

Q.消費額の今後の見通しは、どのように分析していますか。

A.円安が続く中、この勢いはしばらく継続するのではないか。政府は、外国人旅行者の国内での消費額について年間5兆円の目標を掲げているが、これに肉薄するか、上回る可能性もある。中国の旅行客はまだ十分戻っていないが、他の国の購買力も高まっているので、中国人のいわゆる「爆買い」に頼らなくても消費額は伸びていくとみられる。

一方で、富裕層向けのホテルの多くは、外資系であることなどを考えると、日本の経済が実際どれだけ潤っているかは冷静にみていく必要がある。また、ホテルの価格が全体的に上がり日本人が利用しづらくなっていて、ただ消費額を増やせばいいという視点にとらわれないことが重要だ。

Q.観光地などに旅行者が集中することで、地元住民の暮らしに影響が出る、いわゆる「オーバーツーリズム」を防ぐための対応策を政府がとりまとめましたが、この動きをどうみますか。

A.これまで政府は、多くの外国人旅行者に来てもらう取り組みを続けてきたが、さまざまな弊害が観光地で起きる中でオーバーツーリズムの対策にかじを切ったことは評価したい。

ただ、世界の観光地では10年ほど前からオーバーツーリズムの影響が出ていて、どこも完全には解決していない。地域によって地元の住民が被害を受けている場合もあれば自然環境への影響が懸念されることもあり対策も異なる。特効薬はないので、考えられる施策のうち効果的なものを組み合わせて地道に進めるしかなく、地域の経済とキャパシティのバランスを取り、どう持続可能な観光にしていくかが求められている。

Q.今後はどんな点が今後重要になりますか。

A.オーバーツーリズムは、電車が混雑するなどの「目に見える課題」だけではなく、「目に見えにくい課題」も存在する。

例えば、有名な観光地を抱える地域では、空き地にホテルばかりができて住宅を建てる土地が限られ価格が高騰することで、新たに人が住めなくなり人口が流出している。観光客で地域経済が潤っているように見えても、実は市民の生活が苦しくなっているというような状況になりかねない。

行政は、観光客を呼び込む取り組みと並行して、一般の市民の声を丁寧に聞く姿勢が求められる。

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