JR東日本は、2024年度末以降に中央線の快速電車にグリーン車を導入することになり新しい車両が公開されました。関東の大手私鉄では相鉄以外はいずれも有料座席がある列車を運行しています。各社のサービスや導入が相次ぐ理由などについてまとめました。
JR東日本では、都心に向かう通勤輸送のために整備された5つの方面のうち、国鉄時代には、1969年に東海道線と横須賀線に、1980年に総武線に、グリーン車が導入されています。
民営化後には、2004年に宇都宮線と高崎線に、2007年に常磐線に導入され、今回の中央線が最後だということです。
東京・日野市の車両基地では10月18日、中央線の快速電車と、直通する青梅線のすべての編成に導入予定のグリーン車の新しい車両が公開されました。
新しい車両は2階建てになっていて、すべての座席のひじ掛けにはコンセントが設置されているほかWi-Fiが無料で利用でき、一部の車両にはトイレや洗面台も設けられています。
折り返しの駅で行われる予定の車内清掃などが加わってもいまの運行本数を維持するため、ボタンひとつで座席の向きを変えられるほか、JR東日本のグリーン車としては初めて車両のドアを両開きにして乗客がスムーズに乗り降りできるよう幅を広くとっています。
導入後はグリーン車を2両追加して現在の10両編成から12両編成に増やして運行する予定で、追加料金を支払って利用できる座席が、2両であわせて180席設けられます。
追加料金は曜日や距離などによって変わり、平日の50キロまでの利用で事前購入した場合は、780円となっています。
車両の製造に必要な半導体不足の影響で当初2020年度に予定していた導入は、2度にわたって延期され、現在は2024年度末以降に運行を開始するとしています。
関東の大手私鉄では相鉄以外はいずれも有料座席がある列車を運行していて、通勤や休日の外出などで使いやすい、有料座席のサービスも広がっています。
中央線と同じく東京を東西に横断する路線を持つ京王電鉄は、2018年に同社では初となる有料の座席指定列車「京王ライナー」を、新宿と京王八王子や橋本を結ぶ区間で運行を始めました。料金は410円です。
東急電鉄は、2023年8月東横線で、渋谷を平日夜の7時台から9時台に出発して元町・中華街に向かう一部の急行列車で、500円の有料の指定席「Qシート」を導入しました。
2018年に東急は平日夜に大井町線から田園都市線に乗り入れる列車の一部でQシートを導入していて、これが拡大した形です。
西武は埼玉県内と東京都内、神奈川県内を結ぶ「S-TRAIN」を導入しています。東武鉄道と東京メトロが、東武伊勢崎線の久喜駅と東京メトロ日比谷線を結ぶ「THライナー」を運行させています。
さらに、通勤と帰宅時に、京急は「モーニング・ウィング号」「イブニング・ウィング号」を、小田急は「モーニングウェイ号」「ホームウェイ号」、京成は「モーニングライナー」「イブニングライナー」をそれぞれ運行しています。
〇「客単価を上げる」
鉄道各社が進める有料座席の導入は利用客の利便性を向上させることが主な理由ですが、それだけではありません。今後人口減少が進む中で、鉄道事業の経営環境は厳しさを増すことが予想されていますので、客単価を上げる狙いもあります。
〇「選ばれる沿線」
沿線人口減少の中でサービスを継続していくには、沿線に住んでもらうことが重要です。いま都市部は地価が高騰しています。都心などに通勤する子育て世代などがどこに住むか、ということを考えたときに、少し遠くても確実に座れるかどうかは、どの沿線を選ぶか、という要素のひとつになるかもしれません。「選ばれる沿線」を目指し、各社の模索が続いています。