「大阪都構想」再び否決
松井大阪市長 任期後引退へ

大阪市を廃止して4つの特別区に再編するいわゆる「大阪都構想」は、1日の住民投票で、5年前に続いて再び否決されました。日本維新の会と大阪維新の会の代表を務める松井市長は、「けじめをつけなければならない」と述べ、2年半残る任期を全うして、政界を引退する意向を表明しました。

「大阪都構想」の賛否を問う住民投票の結果です。
▽「反対」69万2996票。
▽「賛成」67万5829票。
反対多数で「都構想」は否決されました。

今回の住民投票では、大阪市の有権者、220万人余りを対象に、5年後、令和7年の1月1日に政令指定都市の大阪市を廃止して4つの特別区に再編することの賛否が問われました。

賛成派の大阪維新の会と公明党は、「大阪市を廃止して、府と市の二重行政を解消し、大阪全体の成長につなげるべきだ」と訴えました。

一方、反対派の自民党や共産党などは、「大阪市をなくせば、大阪の都市力や、住民サービスの低下につながる」と主張し、激しい論戦が繰り広げられました。

その結果、「都構想」への賛同は、大阪維新の会の支持層以外には大きく広がらず、5年前に続いて再び否決され、今後も、大阪市が存続することになりました。

松井市長「政治家としてけじめ」

「都構想」を推進してきた日本維新の会と大阪維新の会の代表を務める松井市長は記者会見し、「私の力不足に尽きる。大阪維新の会の先頭で旗を振ってきたが、政治家としてけじめはつけなければならない」と述べ、令和5年4月までの任期を全うした上で、次の市長選挙には立候補せず、政界を引退する意向を表明しました。

その上で、「全く後悔はない。もう十分政治家としていい舞台を与えていただいた。心が晴れているというかそういう気持ちだ。次の世代にバトンタッチし改革の魂というものをしっかりと引き継いでもらいたい」と述べました。

吉村知事「都構想に再挑戦することはない」

大阪維新の会の代表代行を務める大阪府の吉村知事は「1丁目1番地の都構想が否決された。重く受け止め、僕自身が都構想に再挑戦することはない」と述べました。

その上でみずからの進退について、「思い切りやって否決されたので残り2年半の任期を全うしながら政治家としてどうするか考えたい。当然、終了することもある」と述べました。

維新の会にとっては、看板政策とも言える「大阪都構想」が2度にわたって否決された上、結党当時から、中心メンバーとして党を率いてきた松井氏が政界引退の意向を表明したことで、ダメージは避けられない情勢です。

一夜明け 大阪市民の声

住民投票から一夜明けて大阪市民に話を聞きました。

反対に投票した80代の男性は「吉村知事も頑張っていたし、初めは賛成の立場だったが、徐々に時期尚早だと思うようになって反対票を投じた。改革されなくて済むのでほっとしている」と話していました。

また、30代の赤ちゃん連れの女性は「支援センターや学校の予算が削られると聞いて不安になり反対に投票した。大阪を東京のようにというのも違和感があったので反対の結果でよかった」と話していました。

一方、賛成に投票した40代の会社員の男性は「大阪が変わるチャンスだったのに、すごく残念だ。吉村知事は引き続きリーダーとして大阪を変えていってほしい」と話していました。

小池都知事「民意のあらわれ」

東京都の小池知事は、都庁で記者団に対し、「市民の選択で、民意のあらわれだ。地方自治は『民主主義の学校』とも言われるが、まさに市民が結果を出したということだ」と述べました。

そのうえで「これまで大阪はいろいろなチャレンジを続けてきた。街の活性化はどの都市でも必要で、これからも東京都ではさまざまな改革について都民の目線で改善を重ねていく」と述べ、都としては、街の活性化を目指し、都民の意見を踏まえて改革を進めていく考えを示しました。

菅首相「大都市制度の議論に一石を投じた」

菅総理大臣は、総理大臣官邸で記者団に対し、「2度にわたって賛成と反対がきっ抗し、結果的には否決されたが、大阪市民は大変悩まれたのではないか。地域の判断なので、政府としてコメントは差し控えるが、大都市制度の議論において一石を投じることになったのではないかと思う」と述べました。

そのうえで、「いずれにせよ、日本はこれから経済を回復させていくという中で、地方を元気にするためにいろいろな議論をしていくことは大事なことだ」と述べました。

加藤官房長官「国政への影響なし」

加藤官房長官は、2日午前の記者会見で「大阪市民の判断で、政府として、特段のコメントは控えたい。地域の在り方についての住民の判断であるので、国政への影響は考えていない」と述べました。

また、大阪市の松井市長が政界引退の意向を表明したことによる今後の政権運営への影響を問われたのに対し、「個々の政治家の去就について、コメントは控えたいが、政治家として、みずから判断されたものと受け止めている」と述べました。

そのうえで、「菅総理大臣もいろいろな方と、いろいろな関係を持っているが、それがどう変化するか、私が申し上げることではない。2025年の大阪・関西万博もあり、引き続き地元の自治体としっかり協力して進めていくことになる」と述べました。

一方、加藤官房長官は、自民党と公明党で住民投票への対応が分かれたことに関連して、「政党間の関係そのものについて、政府としてコメントするのは避けたい。引き続き、与党ともよく連携をとりながら、一つ一つの政策課題の解決にあたっていきたい」と述べました。

武田総務相「大阪市民の民意」

武田総務大臣は、「特別区設置の成否については、法令の手続きに従って、地域の判断に委ねられているものであり、今回の住民投票により反対が過半数を占めたことは、大阪市を廃止して特別区を設置することに反対する大阪市民の民意が示されたものと認識している」とするコメントを発表しました。

自民 森山氏「自治体の形 想像しにくかったのでは」

自民党の森山国会対策委員長は、NHKの取材に対し、「大阪市がなくなった場合、どのような自治体の形になるのか、住民の皆さんが想像しにくかったことが要因ではないか。 菅政権や国政への影響はないと思う」と述べました。

自民 野田氏「『自民がよかった』ということではない」

自民党の野田聖子・幹事長代行は、NHKの取材に対し、「コロナ禍の住民投票となり、市民の中では都構想への優先順位が低かったのではないか。『自民党がよかった』ということではない。国政は国政で、新型コロナウイルス対策や経済全体の立て直しという課題を抱えており、それらに重点を置きながら、衆議院選挙に臨まなければならない」と述べました。

公明 斉藤氏「党の考えが浸透しきらず」

公明党の斉藤副代表は、NHKの取材に対し、「大阪市という歴史ある街への愛着がこうした結果につながったと感じている。党の考えが浸透しきらず、厳しい結果となったので、要因を分析したい」と述べました。
一方、国政への影響については、「個別のテーマに対する判断が、自民・公明両党の間で分かれただけであり、影響は及ばない」と述べました。

立民 枝野氏「コロナ禍での投票 厳しい指摘を」

立憲民主党の枝野代表は、訪問先の札幌市で記者団に対し、「大阪市民の意思を重く受け止めたい。『大阪都構想』については、過去にも反対の結果が出たにもかかわらず、この『コロナ禍』に、2度目の住民投票の手続きがとられたことに対しては、厳しい指摘をせざるをえない。いずれにせよ地域の問題なので、党の大阪府連が適切に対応する」と述べました。

立民 安住氏「終止符打つ責任 維新にはある」

立憲民主党の安住国会対策委員長は、記者団に対し「この5年間で市民の理解がなかなか得られなかったのだから、『大阪都構想』には終止符を打つ責任が日本維新の会にはある。何十人も専従の職員が張りつき、行政経費もかけてやってきたわけなので、その責任は何らかの形でとらないといけない」と述べました。

そのうえで、安住氏は「国政への進出も『都構想』の後押しのためだったのだろうが、残念ながらもう終わりだ。自民党の『隠れ補完勢力』のようにやってきたが、今後どういう立ち位置になるのか、われわれと協力できる余地があるのかどうかも含めて注視していきたい」と述べました。

共産 小池氏「良識ある審判に敬意」

共産党の小池書記局長は、NHKの取材に対し、「大阪市民が良識ある審判を下したことに敬意を表したい。日本維新の会は、2回にわたって反対多数となった結果を受け止め、『大阪都構想』を完全に断念すべきだ。今後、国政への影響がどの程度あるのか、見極めていきたい」と述べました。

国民 玉木氏「民意を尊重」

国民民主党の玉木代表は、NHKの取材に対し、「大阪市民が示した民意であり、この結果を受け止め、尊重したい。今後の国政や衆議院選挙に与える影響を見極めていきたい」と述べました。