サイル阻止で新方針
安倍首相の談話を発表

ミサイル防衛体制の在り方を含む新たな安全保障戦略をめぐり、政府は11日、NSC=国家安全保障会議を開き、ミサイル阻止に関する新たな方針について、与党側と協議しながら、年末までにあるべき方策を示すとする安倍総理大臣の談話を発表しました。

ミサイル防衛体制の在り方を含む新たな安全保障戦略をめぐり、政府は11日夕方、安倍総理大臣のほか、麻生副総理兼財務大臣や菅官房長官、河野防衛大臣が出席して、NSC=国家安全保障会議の4大臣会合を開き、安倍総理大臣の談話を発表しました。

談話では、北朝鮮が新型の弾道ミサイルを発射するなど、日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増しているとしたうえで、新型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の山口・秋田両県への配備断念を踏まえ、代替策を検討し、迎撃能力を確保していくとしています。

そのうえで「迎撃能力を向上させるだけで、国民の命と平和な暮らしを守り抜くことができるのか」と指摘し、抑止力を強化するため、ミサイル阻止に関する安全保障戦略の新たな方針を検討するとしています。

また、検討は憲法の範囲内で、専守防衛の考え方を変更せずに行い、日本とアメリカの基本的な役割分担は変えないとしています。

そして、「イージス・アショア」の代替策と、ミサイル阻止の新たな方針について、「与党とも協議しながら、ことし末までにあるべき方策を示し、厳しい安全保障環境に対応していく」としています。

政府は当初、今月末をめどに、安全保障戦略の在り方について、一定の方向性を示すとしていましたが、安倍総理大臣の辞任表明もあり、次の内閣に委ねられることになりました。

安倍首相「次の内閣でしっかりと議論を」

安倍総理大臣は午後7時前、総理大臣官邸で記者団に対し「国民の生命と財産を守る大切な議論だ。国家安全保障会議で5回、議論を重ねてきた。私は退任していくわけだが、退任にあたって今までの議論を整理し、談話という形で国民に発表させていただいた。次の内閣においても、しっかりと議論していただきたいと思っている」と述べました。

記者団が「次の内閣の議論を縛ることにならないか」と質問したのに対し、安倍総理大臣は「縛ることにはならない。まさに国民の生命と財産を守ることをシームレスに議論していくのは当然のことで、最大の責任だ。内閣でその議論を深めていくことは当然のことだ」と述べました。

自衛隊の複数の幹部から懸念の声

安倍総理大臣の談話では「イージス・アショア」の配備断念を受けた代替策について与党側と協議しながら、年末までにあるべき方策を示すとしています。

防衛省関係者によりますと、現在、レーダーや迎撃ミサイルの発射装置は陸上ではなく洋上に配備する方向で検討が進められており、「イージス・アショア」のために製造中のものを改修して使うことが想定されています。

しかし、そのためには大幅な改修が必要になるとみられ、製造元のアメリカ側とやり取りを重ねながら、技術的な課題やコストを詳細に分析する必要があるということです。

「イージス・アショア」の配備断念について、防衛省は今月4日に公表した検証結果の中で「導入・配備を急ぐ必要があると考え、慎重さ、誠実さを欠いた対応となった」と総括しています。

これを踏まえ、自衛隊の複数の幹部からは「防衛装備品の導入の検討には本来、年単位の時間がかかる。配備を急いで断念したイージス・アショアの教訓が生かされないのではないか」と懸念する声が上がっています。

洋上に配備の方向で検討

防衛省関係者によりますと、「イージス・アショア」に代わるミサイル防衛のための新たな装備は、陸上ではなく洋上に配備する方向で検討が進められています。

そして、主に検討されているのは次のような案です。

1つは、イージス艦を増やす案です。
しかし、建造に多額の費用がかかるほか、新たに乗組員の確保が必要で、海上自衛隊の負担が大幅に増すことになります。

そこで、検討されているのがイージス艦ではなく、ミサイル防衛に特化した専用艦を造る案です。
用途を限定するためイージス艦を増やすより建造費用は抑えられ、乗組員の数も少なくて済むとみられています。
しかし、これらの案はいずれも「イージス・アショア」のためのレーダーなどを改修して艦艇の上で使うことができるのか、また、改修費用がどれほどかかるかが課題です。

もう1つ検討されているのが洋上に施設を造り、そこにレーダーや発射装置を置く案です。
陸上で使うのに近い形で使用できるため、艦艇に搭載する場合に比べるとレーダーなどの改修の規模は比較的小さく済むとみられます。
ただ、警備がしづらいほか、配備する場所によっては漁業補償など地元との調整が必要になる可能性があります。
また、いずれの案についても洋上の場合、陸上より天候の影響を受けやすいことから、「イージス・アショア」の配備によって実現できるとされた「24時間365日、切れ目ない防護」が難しくなるとみられています。
さらに、海上自衛隊の負担を軽減するというそもそもの目的を果たせなくなるおそれもあり、防衛省関係者の間では「いずれの案でもイージス・アショアの代替策としては不十分だ」という声も聞かれます。