国への輸出管理厳格化後
初の輸出許可 経産省

先月、韓国への輸出管理を厳しくした半導体などの原材料について、経済産業省は一部の企業の輸出に初めて許可を出しました。許可が出た品目は、半導体の製造に欠かせない「レジスト」という材料とみられ、軍事利用のおそれがないことが確認できたとしています。

世耕経済産業大臣は8日、閣議のあとの記者会見で「厳正な審査を経て、安全保障上懸念がない取り引きだと確認できた最初の案件に輸出許可を付与した」と述べ、韓国への輸出管理を厳しくしてから初めて輸出許可を出したことを明らかにしました。

関係者によりますと、今回許可が出たのは、半導体の製造に欠かせない「レジスト」という材料です。

「レジスト」のほか、「フッ化ポリイミド」「高純度のフッ化水素」の3品目は先月から輸出管理が厳しくなり、企業が輸出する際は契約ごとに経済産業省に申請し、許可を受ける必要があります。

審査にかかる期間は標準で90日程度とされていますが、軍事利用のおそれがないことが確認できれば、それより短くなる場合が多く、今回は1か月程度で許可が出たことになります。

今回の許可について、世耕大臣は「恣意的(しいてき)な運用はせずに、外為法の規定で厳格な審査に基づいて許可を出した。そのことを示したものだ」と述べました。

そのうえで「韓国政府から、今回の措置があたかも禁輸措置であるとの不当な批判が行われていることを受けて、例外的に公表した。あくまで貿易管理上の措置であることを韓国側もよく理解してほしい」と述べました。

また、輸出管理を厳しくした理由として韓国側の輸出管理体制が不十分だとしている点について「政策対話を行わなければいけないが、7月12日の説明会を一方的に異なった内容を韓国側が公表しているので、まずこの訂正が行われないかぎり、局長級の政策対話を行えない。まずは韓国側にアクションを求めたい」と述べました。

政府は半導体などの原材料に続いて、今月28日からは韓国を優遇対象国から除外し、輸出管理を厳しくする対象が広がりますが、こちらについても審査のうえ問題がなければ粛々と許可を出すとしています。

輸出許可審査とは

経済産業省は韓国への輸出管理を厳しくした半導体などの原材料3品目について、先月4日以降に企業から受け付けた申請内容の審査を進めています。

申請には、輸出する原材料や製品などの詳しい中身や数量などを書く申請書や輸出先の企業が軍事転用しないことを約束する誓約書などの提出が必要です。

審査は、原材料が適切に最終的な需要者に渡ること、大量破壊兵器の開発など軍事利用で使われないこと、第三者に渡るおそれがないことなどの項目について、企業への聞き取りもしながら行われます。

経済産業省によりますと、審査にかかる期間は標準で90日程度としていますが軍事転用のおそれがないと確認できれば、1か月程度で許可が出ることが多いということです。

例えば、輸出先の企業が1社に限られ、輸出する品目の経路が特定しやすい場合などは、審査の期間が短くなるとしています。

経済産業省では今回の措置は安全保障上必要な見直しで、民間の取り引きを妨げるものではないとしていて、今後も粛々と審査を進め、許可を出すとしています。

「安保上 懸念なく許可」菅官房長官

菅官房長官は記者会見で「経済産業省において厳正な審査を経て、安全保障上、懸念が無い取り引きであることを確認した最初の案件について、すでに輸出許可を付与したと聞いている」と述べました。

そのうえで「禁輸措置ではなく、正当な取り引きについては恣意的な運用をせず、許可を出していることを示したものであると承知している。輸出管理は、引き続き厳格な審査を行い、う回貿易、目的外使用などがないよう厳正に対処していく」と述べました。

初の輸出許可も韓国は評価せず 韓国の首相

韓国のイ・ナギョン首相は、8日午前、ソウルで開いた会議で、日本政府が先月、韓国への輸出管理を厳しくした品目の1つ、「レジスト」について、「韓国への輸出が初めて許可された」と述べ、韓国向けの輸出が初めて許可されたことについて韓国政府としても確認したことを明らかにしました。

ただ、今回の日本政府の許可について、評価はせず「日本による韓国への経済攻撃は世界をリードする国としてはふさわしくない不当な措置であり、自由貿易で恩恵を受けている国としては自己矛盾だ。もとの状態に戻るよう外交努力を強めていく」と述べ、日本が措置を撤回するよう改めて求めていく考えを示しました。

そのうえで、イ首相は「経済界が感じる不確実性や不安を最小限にできるよう、経済界としっかりと意思疎通をはかる」と述べ、対応に全力をあげる姿勢を強調しました。

韓国外務省「対話の必要性を日本側に訴えている」

日本政府が輸出管理を厳しくした半導体などの原材料について、韓国向けの輸出が初めて許可されたことをめぐり、韓国外務省の報道官は、具体的な評価は避けたうえで「問題解決に向けた対話の必要性を引き続き日本側に訴えている」と述べ、改めて日本に対応を求めました。

韓国外務省のキム・インチョル報道官は8日午後、ソウルで定例の記者会見を開きました。

この中で、日本政府が輸出管理を厳しくした半導体などの原材料について韓国向けの輸出が初めて許可されたことをめぐり、NHKが韓国外務省の立場を聞きました。

これに対してキム報道官は、具体的な評価は避けたうえで「措置の速やかな撤回と問題解決に向けた対話の必要性を引き続き日本側に訴えている」と述べ、改めて日本に対応を求めました。

韓国大統領府「肯定的に評価」

韓国大統領府の関係者は、日本が、韓国への輸出管理を厳しくした半導体などの原材料について、初めて輸出を許可したことについては「肯定的に評価する」と述べました。

その一方で「輸出管理の優遇対象国からの除外は進められているし、それに伴う経済の不確実性もあり、残りの部分については評価することはできない」として、日本は措置を撤回すべきだという立場を改めて強調しました。

韓国メディアは

日本政府が輸出管理を厳しくした品目の韓国向けの輸出が初めて許可されたことについて、韓国メディアは大きく報道しています。

このうち、通信社の連合ニュースは「業界関係者は、とりあえずは肯定的に受け止めている」と紹介し「完全に遮断されるという憂慮はある程度、解消されたという解釈が出ている」と伝えています。

その一方で、連合ニュースは「一部では、日本によるかく乱作戦だという分析まであり、むしろ不確実性が高まったという悲観論も少なくない」と伝えています。

また、公共放送のKBSは「アメリカの半導体業界などの懸念を和らげるためとみられる」と分析しています。

さらに、革新系の「ハンギョレ新聞」は「日本の措置が報復ではないという主張を正当化するために利用しているようだ。許可が1度出たといっても、輸出が以前より難しくなったという状況に変わりはない」と伝えています。