鮮通信使行列 日韓
300人参加 長崎 対馬

日韓関係の悪化が深刻になる中、長崎県対馬市と韓国のプサン(釜山)市の民間団体が中心となって30年以上にわたって続けてきた江戸時代の外交使節団「朝鮮通信使」の行列を再現する催しが4日、日韓の合わせておよそ300人が参加して、対馬市で行われました。

朝鮮通信使は、江戸時代に朝鮮王朝から対馬などを通って日本に派遣された外交使節団で、対馬市と韓国のプサン市の民間団体が中心となって、この行列を再現する催しを日韓友好のシンボルとして30年以上にわたって続けています。

日韓関係が悪化する中、ことしは、参加が予定されていた、朝鮮通信使の船を復元した木造船の対馬への派遣が取りやめになったほか、例年来賓として招かれているプサン市ヨンド区(影島区)の職員などおよそ60人の出席が見合わせになったということです。

一方、交流の場となってきた伝統の催しを途絶えさせてはならないなどとして、プサン市の舞踊団など民間からの参加者およそ70人が催しに参加することを決めたということです。

3日、船に乗った一行は対馬市の比田勝港に到着し、久しぶりに再会した対馬市側の担当者と握手を交わしていました。

参加者はバスで対馬市中心部に向かい、市側の担当者と打ち合わせをして行列の準備を進めていました。

日韓関係悪化 宿泊が10分の1に減少の施設も

日韓関係の悪化は対馬市の観光産業に影響を与えています。

去年、対馬市を訪れた韓国人観光客は41万人余りと7年連続で過去最多を更新しています。

しかし長崎県対馬振興局が対馬市の宿泊施設などへ日韓関係の悪化について影響を調べたところ、先月や今月の宿泊客の予約状況が去年と比べ、おおむね減少し、最大で9割減った施設もあるということです。

対馬市厳原町にあるホテルでも、去年8月の1か月間でおよそ800人だった韓国からの宿泊客が、今月はほぼいなくなったということです。

ホテルの専務を務める男性は「相当大変な状態になっています。周りの店も経営が大変だと聞くので、両国には早く解決してもらって観光客が増えてほしい」と話していました。

免税店の韓国人買い物客も減る

対馬市上対馬町の免税店では、去年の夏ごろは一日400人ほどの韓国人観光客が買い物に訪れていましたが、ことしは1日に250人ほどに減っているといいます。

韓国人の店長は「去年と比べると結構減っていると感じる。すでに売り上げに少し影響が出ているので、両国の政治的な問題をなるべく早く解決してほしい」と話していました。

対馬市中心部で飲食店を経営する韓国人の女性は「1週間ほど前に韓国に行ったが、世論やSNSでも、日本のものを使わないとか行かないとか、強い意見を聞いた。国どうしの政治関係があるが、グローバルな時代の中で問題を話し合って平和になるように願っている」と話していました。

日韓双方から関係回復期待の声

ことしも催しを開催できることを受け、双方の代表からは日韓の関係回復を期待する声が聞かれました。

対馬市側の主催者の「朝鮮通信使行列振興会」の神宮保夫会長は「韓国側の皆さんにも尽力してもらって開催できることをありがたく感じています。政治に左右されることなく、今までしてきた行列をいつもどおりに行いたい」と話していました。

対馬市の比田勝尚喜市長は「国とは別に、私たちは自治体どうしや民間の交流は続けていくべきと考えている。韓国と日本の間を結んだ平和の行進とも言える朝鮮通信使をことしも再現できることは喜ばしく思っている」と話していました。

催しの韓国側の窓口となっている民間団体「釜山文化財団」のカン・ドンス(姜東秀)代表理事は「政治的、経済的な面で両国の関係が悪化する中、今回、参加にあたっては世論も考えないといけない状況であった。ただ、最終的に参加することを決めたのは、民間交流を継続することで日韓関係回復の兆しが見えるのではないかと思うからだ」と話していました。