日独首脳会談 対ロシア制裁で連携 外務 防衛 財務 経産相も

岸田総理大臣は、日本を訪れたドイツのショルツ首相と会談し、ロシアのウクライナ侵攻への対応での連携を確認しました。
また、閣僚も交えた「政府間協議」も初めて開き、中国も念頭に経済安全保障分野での協力を強化していくことで合意しました。

岸田総理大臣とドイツのショルツ首相の首脳会談は、3月18日、総理大臣公邸で、はじめは通訳だけを交えて、その後、同席者を増やして、合わせておよそ50分間行われました。

この中で岸田総理大臣は「二国間関係に加え、新旧G7の議長国として、ウクライナやインド太平洋をはじめ、幅広く国際情勢についても率直な議論を行いたい」と述べたのに対し、ショルツ首相も「両国間の協力を続けたい」と応じました。

そして両首脳は1日も早くロシアによるウクライナ侵攻を終わらせるため、日独両国が同志国と結束してロシアに対する厳しい制裁とウクライナ支援を継続していく重要性を確認するとともに、ロシアの核兵器による威嚇は断じて容認しないとする立場を共有しました。

また覇権主義的な行動を強める中国も念頭に、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて、安全保障分野を含めた具体的な協力をさらに強化することで一致しました。

このほか5月のG7広島サミットを見据え安保理改革を含めた国連の機能強化や核軍縮・不拡散などの地球規模の課題でも協力していくことを申し合わせました。

首脳会談に続いて両国の閣僚を交えた初めての政府間協議が総理大臣官邸で行われ、鉱物資源や半導体などの強じんなサプライチェーンの構築に加え、重要インフラの防護やサイバー攻撃などへの対処、それに新興技術の保護・育成といった経済安全保障分野の取り組みで、連携を推進していくことで合意しました。

そして、一連の協議の成果を共同声明としてまとめ、発表しました。

岸田総理大臣は会談のあとの共同記者会見で「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向けて、日独両国は連携と協力を、これまで以上に強化する」と述べました。

ショルツ首相は「私たちの協力関係は新しい一歩を踏み出した。ロシアによるウクライナ侵攻という悲惨な状況に、日本と協力して対応していきたい」と述べました。

今回のショルツ首相との会談で岸田総理大臣は、G7の議長国としてサミットに先立ってすべてのメンバー国と首脳会談を行ったことになります。

日独外相会談 ウクライナやインド太平洋地域の情勢など議論

林外務大臣は、初めての政府間協議のため日本を訪れているドイツのベアボック外相と会談し、ウクライナや東シナ海などの情勢をめぐって意見を交わし、法の支配に基づく国際秩序の維持・強化に向けてさらに協力していくことで一致しました。

林外務大臣とドイツのベアボック外相との会談は18日午後、外務省でおよそ1時間行われました。

この中で林大臣はウクライナ情勢をめぐり「ロシアによる侵略を一刻も早く終わらせるため、ロシアへの制裁とウクライナへの支援を継続することが重要だ」と述べ、両外相は価値観を共有する同志国が結束して対応することを確認しました。

その上で中立的な立場をとる国が少なくないとされる「グローバル・サウス」と呼ばれる新興国や途上国との連携が重要だという認識を共有しました。

また東シナ海などの情勢をめぐり、林大臣は中国を念頭に力を背景とした一方的な現状変更の試みに強く反対する考えを伝え、両外相は法の支配に基づく国際秩序の維持・強化に向けてさらに協力していくことで一致しました。

そしてG7=主要7か国の去年とことしの議長国として、4月、長野県軽井沢町で開く外相会合や5月の広島サミットに向けて緊密に連携することを確認しました。

日独防衛相会談 食料や燃料の相互提供念頭に 法的整備で一致

浜田防衛大臣はドイツのピストリウス国防相と会談し、自衛隊とドイツ軍が食料や燃料などを相互に提供できるようにする協定を念頭に、連携を促進させるための法的な枠組みの整備を目指すことで一致しました。

浜田防衛大臣とドイツのピストリウス国防相との会談は18日午後、防衛省でおよそ30分間行われました。

この中で浜田大臣はドイツの国防相の来日は2007年以来16年ぶりだとして歓迎したうえで「フリゲート艦や戦闘機のインド太平洋地域への派遣など、この地域の平和と安定に積極的に貢献するというドイツの強い決意を高く評価する」と述べました。

そのうえで両大臣はドイツ軍のインド太平洋地域へのさらなる展開や共同訓練などの実現に向け、緊密に連携してくことで一致しました。

そして自衛隊とドイツ軍が食料や燃料などの物品や通信や輸送などの役務を提供し合えるようにするACSA=「物品役務相互提供協定」を念頭に、連携を促進させるための法的な枠組みの整備を目指すことで一致しました。

日独財務相会談 米銀行経営破綻の影響注視 緊密連携で一致

鈴木財務大臣は、ドイツのショルツ首相に同行して日本を訪れているリントナー財務相と18日午後会談し、アメリカの銀行の相次ぐ経営破綻などが金融市場に及ぼす影響を注視するとともに、緊密に連携していくことで一致しました。

会談の冒頭で鈴木大臣は「今の世界経済はさまざまな課題があり、この数日も新たな課題が発生している状況だ。去年、G7の議長国だったドイツとは十分に連携しながら進めていきたい」と述べ、アメリカの銀行の相次ぐ経営破綻やスイスの大手金融グループ「クレディ・スイス」の経営悪化の懸念を念頭に、両国の連携を呼びかけました。

このあと足元の金融市場の動きが世界経済に及ぼす影響などについて意見を交わし、両国がその動向を注視するとともに、G7の加盟国として緊密に連携することで一致しました。

またウクライナへの侵攻を続けるロシアへの制裁を着実に実施するとともに、供給網=サプライチェーンの多様化など経済安全保障の分野での協力も確認したということです。

ことしG7の議長国を務める日本としては、EUの主要国であるドイツと連携することで、金融不安への対応やウクライナへの支援などで議論をリードし、5月に開かれる財務相・中央銀行総裁会議やサミットでの成果につなげたい考えです。

西村経産相 “経済安全保障分野の連携強化”で独側と一致

西村経済産業大臣とドイツのハーベック経済・気候保護相が会談し、日本とドイツが経済関係を強化し、経済安全保障の分野などで連携を進めることが重要だという認識で一致しました。

西村経済産業大臣は18日午後、ドイツのショルツ首相とともに来日したハーベック経済・気候保護相と、およそ1時間にわたって会談しました。

この中で西村経済産業大臣は世界経済をとりまく状況について「新型コロナウイルスの感染拡大やロシアによるウクライナ侵略、エネルギー危機やサプライチェーンの混乱が生じている。中国とロシアの接近や世界経済の混乱が懸念される中、西側諸国が団結して対じすることが重要である」と述べました。

そのうえで日本とドイツの戦略的な経済関係の強化は大きな意義があると強調し、経済的威圧への対応やサプライチェーンの強じん化、脱炭素の推進など幅広い分野での議論の進展に期待を示しました。

これに対してハーベック経済・気候保護相は「ドイツは資源の分野で中国への依存が大きな課題で、日本との連携強化を進めたい」などと述べ、経済安全保障の分野などで連携を進めることが重要だという認識で一致しました。