参院本会議 旧統一教会問題 北朝鮮の弾道ミサイル対応など論戦

国会は、10月6日から参議院本会議で、岸田総理大臣の所信表明演説に対する各党の代表質問が始まり、旧統一教会をめぐる問題や、北朝鮮による弾道ミサイル発射への対応などについて論戦が交わされました。

立憲民主党の田名部参議院幹事長は旧統一教会をめぐる問題について「悪質な献金などのより深刻な被害が拡大してしまう前に、宗教法人法に基づく実態究明や解散命令請求について指示を出すつもりはあるか」とただしました。

これに対し、岸田総理大臣は「法人格の剥奪という極めて重い対応である解散命令の請求は、信教の自由を保障する観点から判例も踏まえ慎重に判断する必要があるが、法令から逸脱する行為があれば厳正に対処する必要があることは言うまでもない。政府としては関係法令との関係を改めて確認しながら厳正に対応していく」と述べました。

また田名部氏は山際経済再生担当大臣が、先の参議院選挙の際、街頭演説で「野党の人からくる話はわれわれ政府は何一つ聞かない」と発言したことについて「その後、『地域の方々の意見を賜りながら国政に反映させたいという文脈だ』などと弁明したが、苦し紛れの言い訳にも程がある。大臣としてふさわしいか到底納得できない」と指摘しました。

これに対し、岸田総理大臣は「官房長官から発言には慎重を期すよう注意したところだ。岸田内閣としては、引き続き国民の厳しい声にも真摯(しんし)に謙虚に丁寧に向き合っていくことを誓う」と述べました。

また、山際大臣は「趣旨が明確に伝わらず、野党議員の方々に不快な思いを抱かせるような表現になったことをおわびを申し上げる。今後、発言には慎重を期すとともに、与野党問わず、さまざまな声に耳を傾け、国民の生活をしっかり守っていく」と述べました。

自民党の世耕参議院幹事長は、北朝鮮による弾道ミサイルの相次ぐ発射について「国民に危害を及ぼしかねない極めて危険な行為であり、決して許されるものではない。国連安保理決議に違反していることも明らかだ。この北朝鮮の暴挙に対し、国際社会と連携し、どう毅然と対処していくのか」とただしました。

これに対し、岸田総理大臣は「北朝鮮の今後の動向を含めた情報の収集、分析、警戒監視に万全を期し、関係各国と緊密に連携しながら日本国民の生命、そして平和な暮らしを断固守り抜く決意だ。そのために、年末までに策定する新たな国家安全保障戦略などの検討過程でいわゆる『反撃能力』を含め、あらゆる選択肢を排除せず、現実的な検討を加速し、防衛力を抜本的に強化していく」と述べました。

また世耕氏は「電力・ガス料金の高騰について岸田総理大臣は所信表明演説で『前例のない思い切った対策を講じる』と明言した。価格を抑えるだけでは不十分で、下げることが重要だが、具体的にどういう対策をどういうタイミングで講じるのか」と問いました。

これに対し岸田総理大臣は「先月の追加策では『電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援地方交付金』の創設や特に家計への影響が大きい低所得世帯向けの給付金の創設など緊急の支援策を講じた。これに加え、電力料金の急激な値上がりリスクに対応すべく、家計・企業の電力料金負担の増加を直接的に緩和する前例のない思い切った対策を講じていく。与党とも意見交換をしながら今月末の経済対策の取りまとめに具体策を盛り込む」と述べました。

午後も代表質問

国会では6日午後、衆議院本会議で2日目の代表質問が行われました。コロナ禍や物価高騰が続く中での経済政策をはじめ、憲法改正や安全保障政策などについても論戦が交わされました。

日本維新の会の馬場代表は、防衛力の強化に向けて政府が「国家安全保障戦略」など安全保障関連の3文書を年末までに改定するとしていることについて「今後のわが国の安全保障はこれまでの延長線上で考えるべきではなく、日本維新の会は『積極防衛能力』の構築に向け、果敢に提言していく。3文書を閣議決定する前に国会で改定案を示してもらいたい。政府・与党とオープンに議論する用意がある」と提案しました。

これに対し、岸田総理大臣は「国家安全保障に対する日本維新の会の見解は、政府・与党内で検討を進めるにあたっても、大変参考になるものだと感じている。閣議決定する前に議論を行うという提案は、党首間でのやり取りも含めて、建設的なものとして受け止め、検討させていただく」と応じました。

また、馬場氏は憲法改正をめぐって「肝心なのは、会議を開くことではなく、実質的な議論を行い結論を得ることだ。今国会は、議論が真に軌道に乗るか否かの重大な試金石になる。岸田総理大臣は、できるかぎり早く憲法改正の国会発議に至る取り組みを進めるという決意を示したが、いつまでに発議を実現させる考えか」とただしました。

これに対し、岸田総理大臣は「自民党総裁の任期中に憲法改正を実現したいという考えにいささかの変わりもない。総理大臣の立場からは、憲法改正の議論の進め方や内容について、直接、申し上げることは控えなければならないが、最終的に国民に判断してもらうための発議に向け、この国会においても与野党の枠を超えて、さらに積極的な議論が行われることを心から期待する」と述べました。

公明党の石井幹事長は、コロナ禍や物価高騰を受けた中小企業への支援策について「中小企業経営者から、返済に追われる不安を訴える声が数多く寄せられている。資金繰り支援の強化や安定的な経営に向けた収益力改善、事業再生などのきめ細かな支援を一層、強力に進めるべきだ」と指摘しました。

これに対し、岸田総理大臣は「コロナ融資の返済本格化に向けて、借り換え保証の創設を検討していく。相談窓口の機能強化など中小企業活性化協議会による支援の充実を進めていくとともに、原材料価格の高騰に対しては公正取引委員会などの執行体制を強化し、価格転嫁対策を徹底していく。また、各種補助事業を拡充することで、事業の再構築や生産性向上などの前向きな取り組みを支援していく」と述べました。

また、石井氏は新型コロナのワクチン接種をめぐって「過去2年間、年末年始に大きな流行の波が起きた。年末に向けて、オミクロン株対応のワクチン接種を加速することが重要で、自治体に対して最大限の支援を行うとともに、適切な情報提供に努めてもらいたい」と求めました。

これに対し、岸田総理大臣は「自治体の負担軽減を図り、接種を促進するため、職域接種も準備が整った会場から順次、実施する予定だ。山場となる今月から来月にかけて1日100万回を超えるペースの接種体制を整備し、接種を加速していく。新型ワクチンは従来型より、重症化の予防や変異株への効果が高いと期待されるため、さまざまな媒体で若者をはじめとした国民に丁寧に周知する」と述べました。

国民民主党の玉木代表は、賃上げをめぐって「全国を訪問して1番多く聞いたのは、給料が上がらないという声だ。最近だけでなく25年間、実質賃金が下がり続けているのは日本だけだ。なぜ日本では賃金が上がらないのか、どうやって上げるつもりなのか」とただしました。

これに対し、岸田総理大臣は「他国と比べて低い経済成長が続き、企業が賃金を抑制し、消費者も消費を抑制した結果、デフレが継続する悪循環となった。このトレンドを一気に反転させ、成長と分配の好循環による新しい資本主義にふさわしい賃上げを実現するためには、企業の生産性を向上させ、さらなる賃上げを生むという好循環を実現させることが不可欠だ。短期的には、物価上昇をカバーする賃上げを目標に、価格転嫁対策などに取り組む」と述べました。

共産党の志位委員長は、安倍元総理大臣の「国葬」について「国民の反対を一顧だにせず『国葬』を強行したことに強く抗議する。岸田総理大臣は故人に対する敬意と弔意を国全体として表す儀式と定義したが、主権者は国民であり、国民全体ということになるのではないか。憲法が保障する思想や良心の自由を侵害する敬意と弔意の強制になることは明瞭だ」と指摘しました。

これに対し、岸田総理大臣は「実施に際しては国民1人1人に喪に服することを求めるものだと誤解を招くことがないよう、国において弔意表明を行う閣議了解は行わなかった。国から地方公共団体や教育委員会などに対する弔意表明の協力の要請も行っておらず、強制であるとの指摘は当たらない」と述べました。

また、岸田総理大臣は1票の格差の是正に向けた衆議院選挙の小選挙区の「10増10減」について、関連する法案を速やかに国会に提出する考えを重ねて示した一方、法案の成立と衆議院解散との関係を問われたのに対し、「内閣が衆議院の解散を決定することについて憲法上、制約する規定はなく、いかなる場合に解散するかは、内閣が政治的責任で決すべきものだ」と述べました。

維新 馬場代表「丁寧に進める力を期待」

新たな「国家安全保障戦略」などを閣議決定する前に党首間でのやりとりも検討すると岸田総理大臣が答弁したことについて、日本維新の会の馬場代表は、記者団に対し「国会や国民の声が全く反映されないのはよくないので、事前に各政党の意見を聞いて、『聞く力』とともに『丁寧に進める力』を発揮していただけるものと期待している」と述べました。

共産 志位委員長「ことごとく答えない」

共産党の志位委員長は、記者会見で「聞いた中心点に、ことごとく答えないという答弁だった。『国葬』は憲法違反になるという論理を聞いたのに対しても、一切答えなかった。政権の行き詰まりを反映していると思うので、引き続き追及していきたい」と述べました。

国民 玉木代表「従来型の答弁でゼロ回答」

国民民主党の玉木代表は、記者団に対し「いくつか前向きに答えてくれたこともあったが、ほとんど従来型の答弁で、非常に残念だ。子育ての分野は一番大事なのにほとんどゼロ回答だった。近いうちに、できれば岸田総理大臣に対し、具体的にこうやったら電気代が下がるということを提言に行きたい」と述べました。