北京五輪 健康管理アプリ
監視や情報抜き取りの懸念

2月4日に開幕する北京オリンピックの新型コロナウイルス対策として選手やスタッフなどの健康状態を管理する専用のアプリについて、情報を盗み取られるおそれがあるなどの指摘が出ています。
オリンピックの開幕を前に、スマートフォンなどを通じた中国当局による監視や情報の抜き取りへの懸念が広がっています。

北京オリンピックでは、新型コロナウイルス対策として健康状態を管理するため、大会に参加する選手やスタッフ、それに報道関係者などに対し、専用のスマートフォンのアプリを導入して毎日体温や体調を登録することが求められています。

ただ、このアプリについて、カナダのトロント大学の研究所は情報を第三者に盗み取られるおそれがあるなどセキュリティー上の欠陥を指摘しているほか、入力した情報が中国当局内でどのように共有されるのかも不透明だとしています。

こうした中、ロイター通信などはアメリカのオリンピック委員会が大会関係者に対し「すべてのテキストやメール、アプリへのアクセスなどに監視や情報漏えいのおそれがあると考えるべきだ」などと警告したと伝えました。

そのうえで、現地には私物のスマートフォンなどを持ち込まず、レンタルの端末を使うなど注意を呼びかけたとしています。

カナダやオランダのオリンピック委員会も、同様の呼びかけを行っていて、オリンピックの開幕を前にスマートフォンなどを通じた中国当局による監視や情報の抜き取りへの懸念が広がっています。

中国外務省 報道官「完全なる言いがかり でっち上げ」

アメリカなどのオリンピック委員会が、中国国内でスマートフォンなどを通じた当局による監視や情報の抜き取りなどの懸念を示していることについて、中国外務省の趙立堅報道官は、今月18日の記者会見で「ある国家が中国のインターネットの安全の問題を指摘しているが、完全なる言いがかりででっちあげたものだ」と反論しました。

また、アプリの問題点の指摘に対し、カナダにある中国大使館は、今月18日に発表したコメントで「報道は事実をねじ曲げており全く根拠がないものだ。インターネット上の安全をめぐり心配する必要は全くない」と述べました。
そのうえで「中国は一貫して、サイバー攻撃やインターネット上で情報を盗む行為に断固反対してきた。オリンピック期間中、安全で開放的にインターネットを管理するという理念を保ち、国内外の選手やメディアに便利なサービスを提供する」と強調しています。

オリンピックの期間中、中国政府は、会場などに専用のWi-Fiを整備して、国内で利用を制限してきた海外の検索サイトやSNSなどを使えるようにしています。

一方、中国では、インターネット上の言動などを当局が厳しく監視していると指摘されていて、体制批判につながるようなインターネット上の書き込みが頻繁に削除されているほか、個人の利用者によるSNS上のグループのやり取りも当局が取り締まるなど規制の強化が進んでいます。

また、中国国内では、感染リスクの判定のため、スマートフォンの電波情報をもとに利用者の行動履歴を確認する「健康コード」と呼ばれるアプリも使われていますが、当局が感染リスクの高い人を効果的に把握し対策を行えると評価する声がある一方、プライバシーの問題を懸念する意見も一部で出ています。

IOC 深刻なぜい弱性は発見されず

北京オリンピックの大会関係者に使用が求められている健康管理用のアプリに、情報を盗み取られるおそれがあるなどの指摘が出ていることについて、IOC=国際オリンピック委員会は、独立した機関がアプリを確認した結果、深刻なぜい弱性は発見されなかったとしています。