犬猫マイクロチップ装着義務化
どうしたらいいの?

「埋め込むときに何かあったりとか…心配はありますよね」

ペットショップを訪れた客からの反応です。
飼い主がすぐに分かるように販売業者に犬や猫へのマイクロチップの装着を義務づける法律が2022年6月に施行されます。
すでに飼っている場合は? これから飼おうとしているけど、どうしたらいいの?
そんな疑問に答えます。

犬猫マイクロチップ 概要

飼い主がすぐに分かるよう犬や猫にマイクロチップの装着を義務づける改正動物愛護管理法が2022年6月に施行されることになっていて、これを前に環境省は、動物の専門家などで作る審議会に概要を示しました。

繁殖を行うブリーダーやペットショップなどの業者には、販売用の犬や猫にマイクロチップを装着し、犬や猫の名前や性別、品種、毛の色のほか、業者名を国のデータベースに登録することが義務づけられます。
また犬や猫を購入する際、飼い主も氏名や住所、電話番号などを30日以内に登録することが義務づけられます。

すでに飼っている人や、譲り受ける人、保護団体などは装着は努力義務となっています。

審議会では、動物への健康上の影響に対する不安の声が上がったほか「飼い主の連絡先が変わるたびに登録を変更するのは煩雑ではないか」といった指摘が出されていました。

そもそもなぜ議論に

日本では1995年の阪神・淡路大震災のあと、多くの犬や猫が迷子になったことをきっかけに導入をめぐる議論が始まり、2019年6月に動物愛護管理法の一部を改正する法律が成立しました。

環境省によりますと迷子や飼育放棄などで自治体に引き取られる犬と猫は2020年度には7万2000匹余りに上り、対応が課題となっています。

国はマイクロチップを取り付けることで、▼迷子になった際や災害で離れてしまった際に飼い主を見つけやすいことや▼安易な遺棄の防止が期待できるとしています。

マイクロチップはどういうもの?

手のひらの上にある小さな電子器具がマイクロチップです。小指の爪とほぼ同じ長さです。

専用の機械で読み取ると、15桁の識別番号が表示されます。

施行前にも導入の動き広がる

今回の法律の施行前からマイクロチップの導入は広がっていて、現在は日本獣医師会や動物の団体がそれぞれデータベースを作っています。

もっとも利用者の多い日本獣医師会のデータベースにはマイクロチップを装着したおよそ276万匹の犬と猫の情報が登録されているということです。

飼い主の意識は?

ペット保険などを取り扱う保険会社が、2019年に犬や猫を飼育する200人を対象に行ったアンケートです。
全体の69.5%がマイクロチップの装着の義務化に「賛成」または「どちらかというと賛成」と回答した一方、
30.5%は「反対」または「どちらかというと反対」と回答しました。
その理由は「かわいそう」とか「装着後のペットの状態が心配」などでした。

義務化に課題①飼い主の周知と理解

義務化に向け課題もあります。
1つは飼い主への周知と理解が進んでいないことです。

法律の施行に先駆けて取り扱うすべての犬と猫にマイクロチップを装着しているペットショップでは、購入する人にマイクロチップの仕組みを説明し、氏名や住所、連絡先などを登録する手続きをしてもらっています。

客の中にはマイクロチップの存在を知らない人や不安を感じる人も少なくないといいます。

ペットショップの店員は「迷子や災害時に飼い主に連絡がいくという説明をすると『安心できるものだね』と言ってもらえます。重要性を理解してもらうために説明を徹底していきます」と話していました。

義務化に課題②取り付ける技術

さらにマイクロチップを取り付ける技術も課題となっています。

マイクロチップは肩のあたりに注射器で取り付けます。注射は獣医師が行うことが求められていますが、動き回る動物を相手にするには十分な経験や技術が必要です。

獣医師の1人は「深く刺してしまうと、神経を傷つけてしまったりだとか、筋肉を傷つけてしまったりする原因になりますので、そういった点はしっかりと気をつけて装着しています」と話していました。

環境省は、一般の意見も聞いて詳細を正式に決定し、義務化に向けて業者や飼い主への周知を進めることにしています。

社会部記者
安藤 文音
2013年入局。大津局、大阪局を経て、社会部で事件取材を担当。2021年11月から環境省担当。趣味はウクレレと、実家の猫と戯れること。