安倍派 下村氏が衆議院政倫審きょう出席 注目の3つの焦点は?

派閥の政治資金問題をめぐって、18日、自民党の下村元政務調査会長が衆議院政治倫理審査会に出席します。

注目される3つの焦点について解説していきます。

1.なぜキックバックは継続されたのか?

これまでの議員の説明などによりますと、安倍派では、おととし4月に当時会長だった安倍元総理大臣が、派閥から議員側へのキックバックをとりやめる方針を決めたものの、7月に安倍氏が亡くなりキックバックが続けられたことがわかっています。

その経緯で重要なポイントとされるのが、安倍氏が亡くなった翌月・8月上旬に行われた派閥幹部らの協議です。

当時、会長代理だった塩谷・元文部科学大臣と下村・元政務調査会長、事務総長だった西村・前経済産業大臣、参議院側を代表して世耕・前参議院幹事長、それに今回の事件で起訴された派閥の会計責任者の5人が出席しました。

この協議について、先の衆議院政治倫理審査会で塩谷氏は「多くの所属議員から『困っている』という意見があり、『ことしに限って継続するのはしかたがないのではないか』という話し合いがなされた。『継続していくしかないかな』という状況の中で終わったと思う」と述べました。

一方、西村氏は「ノルマ以上に売った議員から『返してほしい』という声があり、どう対応するかを共有したが、結論は出なかった」と説明しました。

また、先週の参議院の審査会で世耕氏は「この時に何か確定的なことは決まっていない。お金の手当てをしなくてはいけないという方向性は合意できていたので、塩谷氏が言う『継続が決まった』というのは、そういう趣旨ではないか」と述べました。

これについて立憲民主党などは説明に食い違いがあり、さらなる実態解明が必要だとしていて、協議に出席した残る1人の議員、下村氏がどのような説明をするのかが焦点となります。

【発言が注目される下村博文氏とは】

下村博文氏は、衆議院東京11区選出の当選9回。これまでに文部科学大臣や自民党の政務調査会長などを歴任しました。安倍派では、2018年1月から2019年9月まで当時の細田会長のもとで事務総長を、安倍元総理大臣が会長に就任した2021年11月から去年8月まで塩谷・元文部科学大臣とともに会長代理を務めました。

所属議員へのキックバックの取り扱いを話し合ったおととし8月の幹部協議に出席した1人でもあります。ただ、かつて派閥の会長を務めた森・元総理大臣や、「5人衆」と呼ばれる有力議員とは距離があるとされ、去年8月に発足した新たな体制では、派閥の意思決定にあたる常任幹事会のメンバーにはなりませんでした。

2.違法性の認識はあったのか?

おととし8月の協議をめぐっては、下村氏がことし1月の記者会見で「還付分は各議員個人の資金集めパーティーに上乗せし、収支報告書で合法的な形で出すという案が示された」と述べています。

この「合法的な形」という発言について、野党側は安倍派幹部が違法性を認識していた可能性を示していると指摘しています。

また、下村氏が言う「案」を誰が示したのかについても、世耕氏が「記憶にない」と述べるなど明らかになっておらず、下村氏の説明が注目されます。

3.いつキックバックは始まったのか?

もう1つの焦点は、キックバックが始まった経緯や時期についてです。

これまで塩谷氏が「20数年前から始まったのではないかと思うが、明確な経緯は承知していない」と述べ、世耕氏は「少なくとも10数年前には始まったと思うが、いつ始まったのか分からない」と述べています。

また西村氏は「派閥の歴代会長と事務職の事務局長との間で長年慣行的に扱ってきたことで会長以外の幹部が関与することはなかった」などと語っています。

歴代の安倍派の会長は、安倍氏、細田氏、町村氏がすでに死去しています。

町村氏の前の安倍派の会長で、派閥への強い影響力を持っていた森・元総理大臣が、関与していたかどうかについて、これまで出席した幹部らは、「自民党のヒアリングで森氏の関与は認められていない」などと述べるにとどまっていて、こうした点についても下村氏がどのような認識や考えを述べるのかが注目されています。

専門家「これまでは国民の疑念深まり消化不良感」

治過程論が専門の神奈川大学の大川千寿教授は「これまでの審査会では、政治資金の問題についての国民の疑念が解消されるどころかむしろ深まり、幅広い層に消化不良感を生んでいる」と指摘します。

その上で、下村氏が出席する18日の審査会について次のように話しています。

「安倍元総理大臣がキックバックの中止を打ち出したのは、『透明性を高めるためだったのでは』と、安倍派の幹部らは弁明しているが、やはりそこに、当時の幹部たちが、法的な問題を認識していたのではという疑念が浮かび上がってくる。下村氏がどこまで踏み込んだ発言をできるのか、するのかは見通せないが、いずれにしても、これまでの幹部らの弁明が内容的に非常に乏しいことが大きく響いて、自民党にとっては厳しい展開になると予想できるのではないか」

下村氏の修正の内容は

安倍派の事務総長を務めた下村博文・元政務調査会長は、自民党が行ったアンケートで、2022年までの4年間に不記載などの金額が、あわせて476万円あったとしていて、年ごとの内訳は2019年が36万円、2020年が124万円、2021年が188万円、2022年が128万円となっています。

自身が代表を務める政治団体「自民党東京都第十一選挙区支部」の2022年までの3年間の政治資金収支報告書に派閥からの収入、あわせて440万円を記載していなかったとして1月31日に収支報告書を訂正しています。

下村氏は自身のホームページで、ノルマを超えた派閥のパーティー券の販売代金について「専用口座で管理し、一切支出していない」とした上で、「寄付として記載されるべきものだったが、派閥事務局からの誤った伝達もあり、記載されないままとなっていた」などとしています。