【解説】G7外相会合 日本はどう臨む?中東情勢は?対中国は?

G7=主要7か国の外相会合が、7日から東京で開かれます。先月7日にハマスとイスラエルの軍事衝突が始まって以降、G7の外相が一堂に会するのは初めてです。緊迫するイスラエル・パレスチナ情勢や、海洋進出を強める中国の動向などについて意見を交わすことにしています。議長国・日本はどう臨むのか、解説していきます。
(五十嵐 淳、加藤 雄一郎)

Q.日本はG7の議長国として、今回の外相会合にどう臨むのでしょうか?

A.議長を務める上川外務大臣としては、緊迫するイスラエル・パレスチナ情勢の議論を主導したい考えで、会合では事態の沈静化に向けた糸口を見いだせるかが焦点となります。

Q.日本は、イスラエル・パレスチナをめぐる外交は、どのような立ち位置なんですか?

A.双方の立場に配慮した外交を続けようと苦慮しているのが実情です。

先週、上川大臣がイスラエルとパレスチナを同じ日に訪れたのも、その現れとも言えるんです。

イスラエル外相と会談・3日

イスラエルでは、コーヘン外相と会談し、ハマスの攻撃はテロであり、断固非難する考えを示しました。そして、一般市民の安全確保や事態の早期沈静化に向けて協力していくことで一致しました。

パレスチナ暫定自治政府外相と会談・3日

一方、パレスチナ暫定自治政府のマリキ外相との会談では、ガザ地区の深刻な人道危機に懸念を示した上で、およそ6500万ドル=日本円にして97億円規模の追加の人道支援を行う考えを伝えました。
これに対し、マリキ外相は「ガザ地区の住民が深刻な人道状況に直面しており、ヨルダン川西岸でも 緊張や暴力が高まっている」と述べました。

上川大臣は、イスラエルとパレスチナ暫定自治区双方を訪れたあとに「今回の訪問を踏まえ、G7外相会合では、率直かつ突っ込んだ意見交換を行いたい」と述べました。
日本は、G7外相会合で、ハマスなどによるテロ攻撃を非難するとともに、ガザ地区が深刻な人道危機に陥っていることから人道目的の一時的な戦闘の休止や人道支援の活動ができる環境を確保することが重要だという考えを伝える方針です。

Q.イスラエルとパレスチナ双方に配慮するのはどうしてなんですか?

A.日本が中東に原油を依存していることが背景にあります。
日本はイスラエルとアラブ諸国の双方と深い関係を築いてきました。

ですから、当初、ハマスなどによる攻撃も「テロ」とは呼ばず、すべての当事者に自制を求めるとしていました。

それがイスラエルやアメリカへの配慮からか、「テロ攻撃」と表現を変え、ヨルダンが提出した休戦を求める国連決議も棄権しました。

ところが、イスラエルの軍事作戦で犠牲者が増え続けていることから日本の対応はより難しくなっています。

外相会合では、双方に配慮しながらも議長国として事態の沈静化につながる成果を示せるかが問われることになります。

Q.今回の外相会合、ほかには何が焦点になりますか?

A.ウクライナや中国です。

ウクライナへの「支援疲れ」は、G7各国も例外ではありません。
日本政府は来年の復興推進会議で官民挙げてのウクライナ支援を表明する方針で、その前にG7を主導する形で各国の支援継続を確認したい考えです。

Q.中国についてはどう見ますか?

A.日本としては、世界の関心を中東やウクライナだけでなく、いま一度アジアに引き寄せたい、というのが本音だと思います。

ちょうど今月3日には、岸田総理大臣がフィリピンを訪れ、マルコス大統領との首脳会談に臨みました。

日本政府として最大の狙いは、中国を念頭にした安全保障分野での連携強化にありました。
フィリピンは中国と南シナ海で領有権問題で対立しています。
東シナ海で中国の海洋進出に直面する日本にとり、まさに危機感を共有できる相手です。
また、ともにアメリカの同盟国である上、マルコス大統領は日本、アメリカとの関係を重視する姿勢を見せています。
政府関係者はこう語っています。

「アメリカも交えた3か国の連携を新たな段階に引き上げ、地域の抑止力を高めたい」(政府関係者)

会談で両首脳は、同志国の軍に防衛装備品などを提供する新たな枠組み、OSAを適用し、沿岸監視レーダーを供与することで合意しました。ことし4月の枠組みの創設後、適用は初めてです。

日本としては今回のG7外相会合で、海洋進出や経済的威圧を強めロシアや北朝鮮との結びつきも強い中国を、G7としてけん制したいという狙いがあります。

一方、中国との経済的な結びつきを考えれば、過度に刺激し、対立が決定的になるのは避けたいのも本音です。
米中両国が今月、サンフランシスコで首脳会談を行うことで原則合意した中、岸田総理は、日中首脳会談の模索も続けているとみられます。

中国の覇権主義的行動に厳格な姿勢で臨みながらも、対話と交流を閉ざさないようバランスに腐心する外交が続きそうです。

Q.G7外相会合、議論をどうまとめていくんでしょうか?

A.G7外相会合がことし日本で開かれるのは4月に続いて2回目です。


イスラエル・パレスチナ情勢やロシアによるウクライナ侵攻、海洋進出を強める中国の動向、北朝鮮の核・ミサイル開発などについて、2日間の議論を踏まえ、最終日に成果文書としてまとめることにしていて、結束して力強いメッセージを打ち出したい考えです。

※11月6日(月)「おはよう日本」などで放送

政治部記者
五十嵐 淳
2013年入局。横浜、山口、広島局を経て政治部。
現在は外務省クラブで外務大臣番、欧州地域などを担当。

政治部記者
加藤 雄一郎
2006年入局。鳥取、広島局を経て政治部。政治部では与野党や官邸などを取材。現在は外務省サブキャップ。