"免疫の暴走"が招く メタボの「本当の恐ろしさ」

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世界で6億人以上が"肥満"といわれる現代。日本でも、2000万人近くが「メタボ」あるいは「メタボ予備群」とされています。「メタボなんて、ちょっと太って見た目が悪いだけ」だなんて思ったら、とんでもない!メタボとは、糖尿病、心筋梗塞、脳梗塞など、さまざまな病気を引き起こして、年間280万人もの命を奪っている恐ろしい体の状態なのです。最新研究から、そんなメタボの「本当の恐ろしさ」が見えてきました。

内蔵型肥満によって引き起こされるメタボリックシンドロームにも
内臓型肥満によって引き起こされるメタボリックシンドローム

食べ過ぎや運動不足によって体内のエネルギーが過剰になると、私たちの体の中の脂肪細胞は、余ったエネルギーを脂肪として蓄え、どんどん大きくなります。なんと、1個の脂肪細胞が、体積にして最大およそ1000倍にまで膨らむことができるのです。でも、エネルギー過剰な状態が続くと、脂肪細胞は限界までパンパンに膨らみ、それ以上脂肪を蓄えることができなくなります。すると、脂肪細胞に「ある異変」が起きはじめることが分かってきました。

それを発見したのが、肥満研究の第一人者、アメリカ・ハーバード大学のゴーカン・ホタミシュリジル教授です。「肥満の人とそうでない人の脂肪細胞を比べると、肥満の人の体内では、免疫を活性化する物質が過剰に放出されていることが分かった」と語ります。

細菌やウイルスなどの外敵が侵入したときに、それを察知した免疫細胞が「敵が来たぞ!」という"メッセージ"を仲間の脂肪細胞に伝えるために放出する物質です。メタボの人の体内では、脂肪細胞が、敵もいないのに誤作動によってこのメッセージを放出している可能性があるのです。

脂肪細胞から放出された
脂肪細胞から放出される"メッセージ物質"
「敵がいるぞ!」というメッセージを全身に送る

この物質を受け取った免疫細胞は活性化し、いわば「戦闘モード」に入って、敵を探して動き回ります。そして、血管の壁の内部にまで入り込みます。すると免疫細胞は、そこに過剰に蓄積したコレステロールを「処理すべき異物」と認識して、次々と食べ始めます。ついには、コレステロールをため込んでパンパンに膨れあがった免疫細胞が破裂。免疫細胞の中に含まれていた、外敵を攻撃するための有毒物質が辺り一面にばらまかれ、血管の壁を傷つけてしまうのです。

暴走した免疫細胞は様々な場所を痛めつけ、心筋梗塞や脳梗塞、腎臓病、糖尿病などを引き起こしていきます。

コレステロールを食べる免疫細胞(CG)
コレステロールを食べる免疫細胞(CG)

こうして、さまざまな病気の根本にある「メタボの"本当の恐ろしさ"」は、"免疫の暴走"にあることが明らかになってきました。このメカニズムの解明により、免疫の暴走を抑えることでメタボによる病気を予防するという新たな治療戦略の臨床試験が、今まさに世界規模で行われています。2017年8月に発表された研究では、「免疫抑制剤」という薬を使って免疫の暴走をうまく抑えると、心筋梗塞の再発が24%減少したという結果が出ています。こうした研究が進むことで、メタボをきっかけとしたさまざまな病気を根本から防ぐことができるようになると期待されているのです。

この記事は以下の番組から作成しています

  • NHKスペシャル放送
    NHKスペシャル人体 第2集 “脂肪と筋肉”の会話がメタボを治す

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