禁煙治療に使われる2種類の薬と副作用、成功率について

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依存症喉頭がん肺がんイライラする脳・神経

ニコチン依存症とは

たばこに含まれるニコチンは、脳に作用し、快感をもたらすドパミンという物質を放出します。たばこを「おいしい」と感じるのは、このドパミンの作用です。

喫煙が日常化すると、脳はニコチンがある状態でバランスをとるようになり、ニコチンが切れるとイライラ、落ち着かない、集中力の低下、気分が沈むといった離脱症状(禁断症状)が現れます。この症状を解消するために、たばこを吸うようになる状態を、ニコチン依存症と言います。

喫煙で高まる病気や死亡のリスク

受動喫煙で年間約1.5万人が死亡

喫煙は、心筋梗塞・狭心症、脳卒中、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、がんなど多くの病気のリスクを高めます。ニコチンが血管を強く収縮させること、たばこの煙に含まれる有害成分が肺の構造を壊してしまうこと、70種類以上の発がん物質がたばこの煙に含まれることなどが影響します。

喫煙が影響する病気

特に肺がんは4.5倍(男性)、喉頭がんは32.5倍(男性)、がん全体では男性で2.0倍、女性で1.6倍死亡リスクが高まるとの報告があります。また若い頃から喫煙を続けた場合、男性で8年、女性10年 寿命が短くなると報告されています。受動喫煙でも年間およそ1万5千人が死亡しているという推計があります。

保険が適用される禁煙治療

禁煙治療

多くの人が「禁煙したい」と思っていますが、自力で禁煙するのは難しく、5~8パーセントしか成功しないと言われています。禁煙が難しいのは意志が弱いからではなく、喫煙行為の本質がニコチン依存症だからです。禁煙の近道は、医療機関で禁煙治療を受けることです。禁煙治療では禁煙補助薬が処方されます。貼り薬のニコチンパッチ、または、のみ薬のバレニクリンです。医師や看護師の禁煙指導も受けられます。

禁煙治療は通常、保険診療です。3か月間に5回の外来受診をしながら禁煙していきます。35歳以上の場合「1日の喫煙本数×喫煙年数」が200以上であることが保険診療の条件です。たとえば1日20本を10年間吸っていれば200です。ただし35歳未満の場合は、この条件を問わず保険診療です。若い人が受診しやすいように2016年から変更されました。

貼り薬とのみ薬の2種類、禁煙補助薬

禁煙治療薬には、貼り薬のニコチンパッチとのみ薬のバレニクリンがあります。どちらの薬を選ぶかは、副作用の強さ、生活への影響度などを考慮して決めます。途中から薬を変えることも可能です。

ニコチンパッチ

ニコチンパッチ

ニコチンパッチは、禁煙したうえで1日1回、腕、おなか、胸などに貼って使います。使用開始後、すぐに禁煙を始めます。皮膚から少量のニコチンが徐々に吸収され、たばこを吸いたい気持ちを和らげます。パッチには大中小のサイズがあり、ニコチンの量が違います。大きなサイズから小さなサイズに変えていき、最後はパッチなしでも禁煙が継続できるようになります。副作用には皮膚のかぶれなどがあります。

バレニクリン

バレニクリン

のみ薬のバレニクリンは毎日服用します。最初の1週間ほどは喫煙してもかまいません。バレニクリンには、ニコチンが脳のニコチン受容体に結びつかないようにする作用があるため、たばこを吸ってもおいしいと感じなくなります。
またニコチンに似た作用もあり、吸いたい気持ちを和らげます。副作用には吐き気、便秘、眠気、怖い夢などがあります。以前は、うつや自殺したい気持ちが高まる可能性が指摘されていましたが、その後、これらは薬の副作用ではないことが確認されています。

医師や看護師による禁煙指導

医師や看護師による禁煙指導

医師や看護師による禁煙指導も、禁煙治療の一つです。初診時にたばこへの依存度をチェックします。また禁煙の意欲や目的を確認して「禁煙宣言書」にサインしてもらいます。どうしても吸いたいときの対処法もアドバイスします。

例えば、「席を立つ」「深呼吸する」「ため息」「歯磨き」「氷や水を口に含む」「ガムをかむ」などです。このほか呼気中の一酸化炭素濃度を測定して禁煙の達成状況を把握しますが、禁煙すると一酸化炭素濃度はすぐに下がるため、禁煙の励みにもなります。

禁煙の成功率

禁煙できた喜び

バレニクリンを使った場合、およそ7割の人が禁煙に成功しています。禁煙できた人は「たばこに縛られなくなった」「息切れしなくなった」「肌の調子がよくなった」「部屋が臭くなくなった」「長時間のフライトが苦でなくなった」「お金がたまった」「自分に自信が持てた」「食べ物がおいしくなった」などの喜びの声を語っています。

ただし、いちど禁煙に成功しても再び喫煙してしまう人も少なくありません。たばこを吸っていた記憶や長年の習慣がなかなか抜けないことがあるためです。「1本だけ」がきっかけで元の喫煙習慣に戻ってしまうことがよくありますので、禁煙成功後は「1本だけなら大丈夫だろう」という安易な再喫煙をしないことが大変重要です。

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この記事は以下の番組から作成しています

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    禁煙 受診が成功のカギ