コロナ禍で増加「アルコール依存」 注意したいお酒の種類・予防のポイント

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依存症こころ脳・神経

アルコールに関する相談が増加

コロナ禍が長引き、アルコール依存症の治療を行う医療機関には数多くの相談が寄せられてきました。私が勤める久里浜医療センターでも、アルコールに関する電話相談はコロナ前に比べ1.5倍に増加しました。たとえば次のような相談です。

無職になりお酒を飲むようになった例

仕事がなくなってしまったので、その分お酒を飲むようになった。

テレワークで昼間からお酒を飲んでしまう

テレワークで家にいるため、昼間からお酒を飲んでしまう
(「顔が赤い」と会社から注意されたという人もいます)。

夫や子ども家にいるストレスでのんでしまう

主婦の方で、ご主人と子どもさんが家にずっといて、それがストレスで飲むようになった。

退職をした方が活動がしにくくなり飲酒量が増えた

退職をした方で、コロナで外出や趣味の活動がしにくくなり、飲酒量が増えた。

特に女性の相談が目立ちます。本人だけでなく家族からの相談もよくあります。

この先、仕事や暮らしはどうなってしまうのかという不安、自由に遊びに行けない状況などからストレスが大きくなり、それを解消させようとお酒の量が増えてしまうことが心配されます。
環境の変化も影響しているようです。ステイホームで在宅時間が増えました。コロナで職を失って一日中家にいるようになった人もいます。アルコール依存症は失業率とともに上下すると言われています。

アルコール消費量全体はコロナの流行以降減りました。飲食店が営業を自粛し外で飲む機会が減ったからだと思われます。
しかし心配なのは“家で飲み過ぎてしまうこと”です。外で飲んでいれば、周りの人が飲み過ぎを注意してくれる、終電だから帰らないといけないといったことがあります。しかし家ではそうしたブレーキが効きにくくなります。

お酒は人間関係を円滑にしたり食事をより楽しめるようにしたりと、いい面もたくさんあります。しかし家で一人で飲んでいる場合、負の側面が強くなってしまう恐れがあるのです。

ストロング系に注意

家でお酒を飲むときに注意してほしいことがあります。さまざまなお酒が販売されているなか、最近ストロング系と呼ばれる缶入りチューハイが人気です。これまでと違う「飲み過ぎのリスク」が指摘されています。

ストロング系チューハイ

「ストロング系」と呼ばれるのは、アルコール度数が9%など従来より高いからです。たとえばアルコール度数9%の場合、350mL1缶で純アルコール量はおよそ25g。これはビールなら大瓶1本のアルコール量に相当します。日本酒なら1合を超える量です。

厚生労働省「健康日本21」は「節度ある適度な飲酒量」を1日当たり20gとしています。ストロング系(9%以上)だと1缶でそれを上回ってしまいます。さらに、40g以上だと「生活習慣病のリスクが高まる」とされています。
しかもこれは男性の場合です。女性はさらにアルコールの影響を受けやすいため、男性の半分程度の量を目安にしたほうがいいでしょう。

しかもストロング系は、度数が高いわりに「飲みやすい」「安い」という特徴もあります。
甘く口当たりをよくしているため飲みやすいようです。そのため思いがけず飲み過ぎてしまう心配があります。安いことが手伝って飲む量が増える可能性もあります。

大切なのは、度数(%)だけでなく1缶に含まれるアルコールの量を知ることです。ビールや日本酒と比較しながら、しっかりチェックしてください。

アルコール依存を防ぐコツ

家で飲む量が増えてきたという人に、飲み過ぎないコツをまとめました。

飲酒量を減らすコツ
  • ノンアルコール飲料を先に飲む。水でもかまいません。
  • 食事のときに飲む。
  • ゆっくり時間をかけて飲む。一口飲んだあと、容器をいったん下に置くだけでも効果があります。
  • なるべく薄いお酒を飲む。
  • 飲まない時間帯を決めておく。

飲酒以外でリラックスできる方法を1つでも2つでも見つけて実践することもおすすめします。たとえば料理や読書など。バルコニーや庭に出て運動するのもいいでしょう。

詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2021年11月 号に掲載されています。

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