詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2020年1月号に詳しく掲載されています。

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肺がんは、日本では、がんの中で最も亡くなる人が多いがんです。その理由として、肺がんは進行しないと自覚症状が現れにくく、気づきにくいこと。また、ほかの主ながんと比べて進行が速く、転移しやすいことなどが考えられます。そこで、定期的に「肺がん検診」を受けて、早期に発見することが大切です。現在、肺がんの治療は大きく進歩しており、早期発見ができれば、根治を目指すこともできるようになっています。
全国の自治体が行っている肺がん検診は、40歳以上の人を対象に、年に1回、地域の保健所や措定された医療機関で受けることができます。費用は自治体によって異なりますが、一般的には自己負担額は数百円から1000円ほどです。肺がん検診で必ず行われるのが「胸部エックス線検査」です。
肺がんは、肺のさまざまな場所に起こりますが、最も多いのが、気管支が枝分かれした先の最も細い部分で、肺の隅にできるタイプです。その多くは、胸部エックス線検査で見つけることができます。
たとえ直径が1cmほどの小さながんでも、濃く写るタイプであれば見つけることができます。ただし、両方の肺の中心部にある太い気管支にできるがんは、心臓に隠れやすいため、胸部エックス線検査では見つけにくくなります。こうした太い気管支にできるがんは、特に喫煙が原因で起こりやすいのが特徴です。そのため、たばこを多く吸っている人の場合、「たんの検査(喀痰(かくたん)細胞診)」が行われます。たんには、太い気管支にできたがんの組織から剥がれたがん細胞が混じりやすいため、たんをみることでがんがないか調べることができます。
胸部エックス線検査を受けても、小さいがんや淡くしか写らないがんの場合、見つけられないことが多くあります。そのようながんに対しては、「胸部CT検査」が早期発見のために有効です。
上のエックス線画像は、実際には直径1.5cmほどのがんがありますが、何も写っていません。ところが、CT画像ではがんがはっきりと写っています。CT検査では、こうした「淡いタイプ」のがんでも見つけることができます。最近は、人間ドックやほかの病気の診断のために受けたCT検査で、早期の肺がんが見つかるケースが増えています。
特に、たばこを吸う人は、40歳を過ぎたら、年に1回の肺がん検診と併せて、数年に1回程度は胸部CT検査を受けることがすすめられます。一方で、たばこを吸わない人でも肺がんを発症することが少なくなく、特に「淡いタイプ」のがんは、たばこを吸わない女性に多いことが知られています。女性も40歳を過ぎたら肺がん検診と併せて、胸部CT検査を受けてもよいかもしれません。
CT検査で、肺にうっすらと淡く写るタイプのがんもあります。このような性状を「すりガラス状」と呼びます。この場合、肺がんであることもありますが、肺炎や肺炎のあとであることもあり、見極めるためには、呼吸器科医など専門医の診断が必要です。
かげの大きさが直径1.5cm以上ある場合は、がんである可能性が十分あるため、かげの部分を切除する手術が検討されます。直径が1cm未満の場合は、経過観察となり、半年に1回ほど検査を受けます。その後、かげが消失すれば、がんではなく良性と診断されます。かげの大きさなど様子が変わらなければ、引き続き経過観察を続けます。かげが増大したり、濃い部分が出てきたりした場合、がんである可能性が高いため、手術が検討されます。
「肺がんの手術」についてはこちら胸部エックス線検査や胸部CT検査などで肺がんが疑われた場合は、本当にがんかどうか調べる確定診断のために、肺のかげの部分の組織を直接とって調べます。確定診断には、「気管支鏡検査」、「CTガイド下生検」、「胸腔鏡(きょうくうきょう)検査」など、いくつかの方法があります。
多くの場合、まず「気管支鏡検査」が行われます。先端に電子カメラがついている直径4~5mmの気管支鏡を、口または鼻から、肺の中のがんが疑われるかげのある位置まで送り込みます。モニターを見ながら鉗子(かんし)と呼ばれるハサミを使って、異常が疑われる組織を採取し、顕微鏡でがんかどうか確認します。
気管支鏡検査は、気管支鏡が届く、肺の入り口にできたがんの場合に適しています。がんが肺の奥の方にある場合、気管が枝分かれしていて気管支鏡が末端まで届かないため、行えないケースもあります。
「CTガイド下生検」は、CTで画像を見ながら、肺の外部から針をさして組織を採取する検査です。異常が疑われる組織が、気管支鏡では届かないところにあるときに行う場合があります。
病変が小さくてCTガイド下生検が行えない場合や、気管支鏡が組織まで届かない場合、また、組織がうまくとれなかった場合などは、「胸くう鏡検査」が行われます。
胸くう鏡検査は外科手術の一種で、胸部に数か所、数㎝の皮膚切開を行い、カメラのついた胸部専用の内視鏡(胸くう鏡)と手術器具を挿入して、モニターを見ながら、がんが疑われる肺のかげの部分の組織をとります。とった組織はすぐに顕微鏡で調べて、がんが判明した場合は、引き続きがんをとる手術が行われます。
これらの検査で肺がんかどうかが確定診断されます。肺がんであれば、進行度(病期)を確定して、手術や放射線、薬といった治療法の中から、適切な治療の選択につなげます。肺がんが進行していて、薬による治療が中心となる場合、がんのタイプや遺伝子の変化の有無などの検査結果によって、患者さんに合った薬を選ぶことができます。
「肺がんの薬物治療」についてはこちら詳しい内容は、きょうの健康テキスト 2020年1月号に詳しく掲載されています。