慢性痛を改善!?「不思議な鍼(はり)」の効果に迫る

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セルフケア・対処肩こり腰痛肩・首がこる腰が痛い全身

肩こりや腰痛など、健康上の最も多いお悩みである「慢性痛」。さまざまな治療法がありますが、いま世界で注目を集めているのが「鍼灸」です。そのなかでも、ちょっと変わった「不思議な鍼」の効果について取材しました。

肩こりに悩む女性

肩こりを劇的改善!? 「魔法」のシール

肩こりを劇的改善する「魔法」のシール

取材班が入手したのは、ある医療機器メーカーが製造した体の痛みを緩和するというシール。中央に、薄く小さな樹脂が貼り付けられているだけで、他に目立った特徴はありません。肩こりに悩む12人に協力してもらい、その効果を検証してみました。肩や首の痛いところ8か所に、2週間にわたって毎日貼るセルフケアを続けてもらったところ、12人中11人の痛み(自覚症状)が改善。さらに、肩や首の可動域についても、軒並み改善が見られたのです。

肩こりに悩む12人中11人が改善

秘密は「ミクロの鍼」にあり

なぜ、改善が見られたのか?実は、シールに付いている樹脂に秘密がありました。樹脂を拡大してみると、0.3ミリの突起が並んでいます。この小さな突起が皮膚を刺激することで、痛みが緩和するといいます。実はこれも「鍼」の一種。東洋医学で使われる鍼の中には「刺さない鍼」もあるんです。でも、指で触っても「そう言われてみればザラザラするかな?」という程度の刺激なのに、なぜ効果が見られたのか?

ミクロの鍼の突起画像

解明される「ミクロの鍼」の効果

この、ミクロの鍼のメカニズムの研究を行ったのが、東京都健康長寿医療センター研究所の渡辺信博さんらのチームです。ネズミを使った実験で、シールを貼ると、脳に伝わる痛みの刺激が抑制されることが分かりました。その証拠に、痛みに関わる自律神経である「交感神経」の興奮が、最大6割抑制されていたのです。渡辺さんは「軽い刺激が強力に痛みの情報(信号)を抑えるとは、驚くべき結果」といいます。

ネズミを使った実験で交感神経の興奮が6割が抑制
東京都健康長寿医療センター研究所の渡辺信博さん

侮れない!「皮膚のチカラ」

研究からは「痛みと自律神経(交感神経)の関係」も分かってきました。痛みを感じている人は交感神経の活動が優位で緊張状態にあるので、筋肉や血管が収縮してコリができやすく、さらに痛みが増す、という悪循環になりやすいのです。この交感神経が優位の状態を改善すれば、痛みの悪循環から抜け出すきっかけになると考えられます。東洋医学では、今回のシールのような“皮膚への軽微な刺激”による治療が古くから行われてきました。「刺さない鍼」の一種「小児鍼」は、皮膚を優しく刺激し、「夜泣き」や「疳の虫」の改善を狙うものです。最近、こうした皮膚への優しい刺激を使った「タッチケア」と呼ばれる方法も注目され、介護の現場などでも使われています。

刺さない鍼の一種「小児鍼」
刺さない鍼の一種「小児鍼」

この記事は以下の番組から作成しています。

東洋医学

東洋医学ホントのチカラ「健康の大問題 解決SP」

2022年1月10日(月)午後7:30~[総合] 

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