慢性痛に使われる薬
痛みが強い場合や、原因となる病気が明らかな場合には、まずは薬で痛みを和らげ、無理のない範囲で体を動かしていくことがおすすめです。
慢性痛では、痛みが長く続いたために、痛みを伝えたり抑えたりする神経回路が変化して痛みがさらに長引いてしまうことがあります。たとえば、皮膚に水ぶくれができる帯状ほう疹が治った後にも続く痛みや、神経が圧迫されて起こる三叉(さ)神経痛などがあります。


帯状ほう疹後の痛みには、プレガバリン、ガバペンチン、ミロガバリンなどの薬があります。神経細胞内へのカルシウムの流入を抑え、痛みを引き起こす神経伝達物質の放出を抑制する作用があります。
三叉神経痛では、カルバマゼピン(抗てんかん薬)が第一選択になります。痛みの情報が神経まで伝わることを抑え、痛みを緩和します。

他にも、脳にもともと備わっている「痛みを和らげるしくみ」を活用する薬もあります。
本来は、痛みが脳に伝えられるとドパミン、オピオイド、セロトニンやノルアドレナリンが放出され、痛みを抑える神経回路を活性化してくれています。
しかし痛みが続くと、この神経回路がうまく働かなくなってしまうことがあります。その場合、セトロニンやノルアドレナリンを増やす作用のあるデュロキセチンという抗うつ薬が処方されます。
他にもオピオイドという鎮痛薬が処方されることもあります。ただし、強オピオイドは医療用麻薬で依存性の危険もあるため、漫然とした長期服用には注意が必要です。
集学的アプローチ

最近注目されている慢性痛の治療に集学的アプローチがあります。慢性痛には、生物学的・心理的・社会的要因など、さまざまな要因が関わっています。そのため、それぞれの専門家の知恵を集めて、痛みに対してチームで取り組みむことで、痛みを和らげていきます。集学的アプローチでは、大きく分けると3つのことが行われます。運動を中心とした身体的アプローチ、痛みに対する考え方を修正していく心理的アプローチ、そして薬物治療です。
このような集学的アプローチをうけられる「痛みセンター」は現在全国に39か所あります(2023年5月時点)。しかし、痛みへの恐怖心が強い状態のままではプログラムに参加しても心と体がついていかない場合もあるため、担当の医師と相談して、よく納得してから、痛みセンターを紹介してもらいましょう。
