社会や政治に関する世論調査

景気回復への期待と将来の不安

~景気と暮らし実感調査・2004年7月から~

景気の回復を反映して、今の暮らし向きについて「ゆとりがある」(十分+多少)と答えた人が50%と半数を占め、1年前の調査の46%から増加するなど、人々の暮らし向きの実感は改善してきています。しかし、まだ財布の紐を緩めるという状態ではなく、8割を超える人が老後を含めたこれからの暮らしに対して不安を抱えています。その不安の大きな要因の一つは、老後を支える年金をはじめとする社会保障制度の先行きが不透明なことにあります。

先に成立した「年金改革関連法」によって、年金制度が今後安定するかどうか質問したところ「大いに安定すると思う」はわずか1%、「ある程度安定すると思う」も12%にとどまり、国民の評価は厳しい結果となっています。また、負担を増やしても給付水準を維持するか、負担は増やさず給付水準を下げるかといった負担と支給のあり方や福祉水準の維持か自助努力かという質問については、高齢層と若年層の考え方に大きな違いがありました。世代間の利害の対立が明らかにあります。

様々な世代間の意識の違いを見た中で、今の暮らし向きについて「苦しい」と答えた割合が、20~39歳の男性が63%で最も高いなど、これから社会の中核を担っていく若年層で悲観的な傾向がうかがわれました。

年金をはじめとする社会保障制度は、負担をする世代と恩恵を受ける世代との利害の調整が大きな課題です。その課題の解決策を検討する上で、これからの社会の中核を担う世代が日本経済や自分の生活に悲観的であるという現状は留意する必要があるのでしょう。

世論調査 中瀬剛丸・山内利香