放送に関する世論調査

人々はデジタル化をどう受け止めているのか

~「デジタル放送調査2010」から・パートⅡ~

「デジタル放送調査」は,2011年の完全デジタル化を念頭におき,人々のデジタルメディアの利用状況や利用意向を時系列に把握することを目的として2007年から毎年実施している。今回はデジタル化への人々の意識を探るために,「デジタル化への態度と評価」「情報意識」「生活価値観」などの質問を追加し、デジタルサービスの利用と相関の強い意識を分析するとともに、デジタルサービスの利用意欲と社会的評価から人々のデジタル化への遠近による分類を行い、デジタル化に近い人々と遠い人々の特徴を明らかにすることを試みた。

人々がデジタル化をどう受け止めているかについて,今回の調査により明らかになったのは次の3点である。

①生活全般やコミュニケーションへの影響や経済効果などの社会的評価についてはプラスマイナスの両面から捉えている人が最も多く,利用意欲に関しても積極的に利用したいと思う反面,仕事や勉強など必要な場合以外は使いたくないという抑制的な態度も見られる。

②デジタルサービスの受容の有無に最も関係性が強い要素は年層である。年層以外で,関係性が強い意識としては,効率志向,上昇志向,差異化志向,イノベーター志向,コミュニケーション志向,趣味・レジャー志向などの公的にも私的にもライフスタイルの活性化を求める意識である。

③デジタル化の受容に関しては,「積極的受容層(全体の27%)」,「懐疑的フォロワー層(同34%)」,「受容消極層(同31%)」「無関心層(同9%)」というイノベーター理論に類似した4つのクラスターに分かれた。同じ受容層でも,デジタル化の社会的な評価に肯定的な40代以下を中心とする積極的な受容層と,デジタル化の効用は認めながらも,情報格差,経済格差の拡大や対人コミュニケーションの喪失などのデジタル化の負の面も意識して,仕事や生活に必要な範囲でデジタルサービスを利用している懐疑的なフォロワーの2つに分かれている。

新しいサービスの新規性だけではなく,生活の効率性・利便性の向上と経済的負担,及び社会全体へのプラス・マイナス面を天秤にかけて受容する懐疑的なフォロワー層が個々のデジタルサービスの幅広い層への普及の鍵を握っている。

世論調査部(視聴者調査) 小島博