放送に関する世論調査

浸透するタイムシフト,広がる動画視聴

~「デジタル放送調査2010」から・パートⅠ~

「デジタル放送調査」は,2011年の完全デジタル化を念頭におき,人々のデジタルメディアの利用状況や利用意向を時系列に把握することを目的として2007年から毎年実施しており,今回はデジタル化への人々の意識を探るために,「デジタル化への態度と評価」「情報意識」「生活価値観」などについても詳細に質問している。本リポートでは,「デジタル放送」「ワンセグ」「録画」「インターネット動画」の利用動向,及びそれぞれの特徴と課題を報告し,次回で人々がデジタル化をどう受け止めているかを探る予定である。

地上デジタル放送を受信しているテレビを持っている人は2010年9月の調査実施時点では75%で,2009年(54%)より増加した。ただし,自宅のテレビ台数の半数近くが地上デジタル放送に対応していない。また,BSデジタル放送の受信者は39%で,前年(32%)より増加したが,経済的なゆとりによる普及の差が地上デジタル放送より大きい。

ワンセグを見ている人は全体の38%で,視聴者は男女40代以下で多く,前年と比べるとワンセグ視聴者はどの年層でも増加した。しかし,週に1日以上見る人の割合は7%で,あまり変化はなく,機器の普及に利用が追いついていない。ワンセグの利用は全体では「自宅外」での短時間視聴が多いが,16~29歳の若年層では「自分の部屋」でのセカンドテレビ的な利用が定着しつつある。

テレビ番組の録画については,2009年と比べて,「録画している人」の割合(50%)は変わらないものの,「毎日のように」録画する人が増えるなど,「録画頻度」はやや高くなっている。また,録画機器別にみると,前年の37%から53%に増加したHDD利用者では,ビデオ利用者よりも頻度が高く,デジタル機器の普及が録画頻度を高めていると思われる。また,「見る見ないにかかわらず,気になった番組を録画する」録画行動が増えるなど,若年層を中心にタイムシフト視聴が浸透しつつある。

インターネットを利用している人は全体の53%,インターネットで「動画」を見ている人は全体の31%で前年と変わらなかったが,動画サイトで「テレビ番組を見ている」人は14%で,前年(11%)より多くなった。若年層ほどよく見ている傾向は変わらないが,前年と比べて女40代などの中年層へ視聴層が広がっている。また,前年よりも配信サイトから共有サイトへと利用がシフトしており,有料動画も見ると回答した人は全体の5%(前年4%)で有料動画の利用には広がりが見られなかった。

世論調査部(視聴者調査)小島博・山田亜樹・仲秋洋