放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

米ニューズコーポレーション,中国事業から撤退

米メディア大手のニューズコーポレーションは8月9日,中国で所有するテレビ事業3社などの経営権を,上海市政府系の上海文広メディアグループ(SMG)などが出資する投資ファンドに売却することを発表した。売却の対象となるのは,娯楽チャンネルの「星空」と「星空国際」,それに音楽専門チャンネルの「チャンネルV中国大陸」などで,1990年代に中国市場の成長に期待してテレビ局を設立したニューズコーポレーションは,中国当局の厳しい規制によって,中国国内での放送許可がなかなか出ないことにしびれを切らした形となった。

香港,RTHK顧問委員会のメンバー決まる

香港の公共放送RTHKの運営に関して意見を述べる顧問委員会のメンバー11人のリストが,8月13日発表された。この顧問委員会は,RTHKが編集権の独立した公共放送でありながら,組織的に政府の一部門であるという矛盾を抱える中で,その運営を外部から監視する機関として設立された。委員の任期は9月から2年間で,メディア研究者をはじめ,金融・医療・消費者運動・建築など各界の専門家が起用され,主席には香港弁護士会前会長の黄嘉純(Lester Huang)氏が就任した。しかしRTHKの労働組合や市民団体の間では,委員の任命権を曾蔭権(Donald Tsang)行政長官が握って いることへの反発があり,RTHKの編集権の独立が保たれるのか危惧(ぐ)する声が強い。

韓国,地上局3社の「コリア・プール」 復活交渉難航か

6月から7月にかけて行われたサッカー・ワールドカップ南アフリカ大会でのSBS 単独中継をめぐり,韓国の地上放送3社が厳しく対立した問題で,聯合ニュースは7月28日,「KBS,MBC,SBS各社の社長が最近,非公開の会合を行い,3社が共同で中継権交渉を進める『コリア・プール』の復活に向けて原則的合意に至った」と伝えた。しかし,この報道についてはKBSとMBCが「SBSの決断だけが残った」と強調する一方で,SBSは「とても性急な報道」と強い不満を示しているほか,社内から「まだ論議は始まったばかり」といった声も出ているなど,必ずしも十分な合意が得られてないことを示唆している。

フィリピン政府,公共放送2局を売却へ

フィリピンの大統領府通信担当部局(PCOO)は8月15日,3つある公共放送局のうちRPN-9とIBC-13の2局を,今後2年以内に民間事業者に売却する,と発表した。両局は1986 年の革命で失脚した故マルコス大統領の側近が運営にかかわっていたとされ,革命後コラソン・アキノ政権によって接収された。その後も放送は続いているが,多額の負債,税金や賃金の未払い,労働組合との軋轢など,経営面で問題が山積しており,民営化は政府にとって20年来の懸案であった。ベニグノ・アキノ3 世が6月に大統領に就任した中で,PCOOは,今後残るNBN-4を唯一の公共放送局とし,これを英BBCや米PBSのような組織に改革していく意向を表している。

ベトナム,国営通信社のニュースチャンネル誕生

ベトナムの国営通信社VNAは,8月25日,傘下初のテレビチャンネルVNEWSを正式に開局した。同チャンネルはニュース専門の24時間チャンネルで,開局に先立ち2か月間試験放送が行われた。式典にはグエン・タン・ズン首相も参列し,VNEWSが党・国家の指針や政府の政策のより広い伝達に果たす役割に期待を表明した。同チャンネルはケーブルテレビやIPTV(MyTV),衛星放送(K+)などで配信される。

インド,Dish TVの契約件数800万超える

現在6つあるインドの有料衛星放送の中で最大の契約件数を持つDish TVが,8月27日,契約件数800万超えを明らかにした。今年4月から半年足らずの間に契約件数を100万以上上積みしたことになる。Dish TVはZee系列の衛星放送で,インドでは最も早い,2003年10月にサービスを開始,現在では音声を含め250近いチャンネルを配信している。インドでは順調な経済発展とサッカー・ワールドカップや英連邦競技会(デリーで開催予定)など多彩なスポーツ・イベントを背景に衛星放送への関心が高まっている。