放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

韓国,BSEの番組制作者を名誉毀損で拘束

韓国のソウル中央地方検察庁は3月25日,アメリカ産牛肉のBSE(牛海綿状脳症)感染の危険性について伝えたテレビ番組を制作したMBC のイ・チュングン氏を,アメリカ産牛肉の輸入を決めた官僚への名誉毀損容疑で拘束,イ氏ら6人の制作スタッフの自宅を捜索してパソコンや文書を押収した。これに対し,MBC時事教養番組の担当者らは無期限の番組制作拒否を宣言,全国言論労組MBC 本部も当局が残りの制作スタッフを連行することを阻止する方針を決めた。さらに一部の市民団体は記者会見や声明を通じて「言論人の拘束や逮捕は明白な言論弾圧」と主張,イ氏の釈放を要求した。こうした批判に対し検察当局者は,イ氏に3回にわたって出頭を求めたが応じなかったためと説明している。この番組は 2008年4月に放送され,その後のイ・ミョンバク政権への大規模な抗議行動に火をつけた経緯があり,与党が「偏向報道」と強い不満を示していた。

韓国,2010年から学校教育にIPTV導入へ

韓国の放送通信委員会は3月12日,教育科学技術部と共同で,IPTVを利用した教育を推進する方針を明らかにした。IPTVを通して教育機会の拡大や公教育の充実を図るとともに,IPTV事業の活性化にもつなげたいとしている。計画では2009年中に教育科学技術部と共同で450億ウォンを投資し,全国 1万1,318の小中学校と高校のインターネット網を整備,2010年の新学期からIPTVサービスを提供する予定である。また,低所得家庭の子どもにも十分な教育の機会が与えられるよう,IPTVを利用した学習のための環境整備を進めるとしている。

パキスタン,情報放送相が突然辞任

パキスタン人民党(PPP)政権下で,メディアの独立と報道の自由堅持を標榜してきたシェリー・レフマン(Ms.Sherry Rehman)情報放送相が,3月13日深夜,突然辞任した。後任にはカマルッザマン・カイラ(Qamaruz Zaman Kaira)カシミール問題・北方地域担当相が急遽兼任の形で就任した。その直前,緊迫の度合いを高める法曹関係者や野党によるザルダリ大統領批判の抗議行動を克明に報道していたニュース専門衛星テレビGeo Newsが各地でケーブルテレビへの配信を妨害され,Geo側は「妨害は大統領の命令によるもの」としていた。ジャーナリスト出身の前情報放送相は,メディアに対し何らかの禁止措置がとられるなら辞任すると語っていた。後任の大臣は,ニュースチャンネルに対する規制は一切無かったとしている。

トルコ,テレビ国際放送に新チャンネル

トルコの国営放送局TRT(トルコ・ラジオ・テレビ協会)は3月21日,トルコ語系の言語が話されている広大な地域に向けたテレビ国際放送の新チャンネル TRT Awazを開局した。トルコ語系の言語は東欧から中国の新疆ウイグル自治区に至る計27か国で話されており,使用人口は約2億5,000万といわれる。放送に使用されるのはカザフ語,キルギス語,アゼリ語,ウズベク語,トゥルクメン語などでトルコ語の字幕も併用される。Awazはトルコ語系言語で共通に「声」を意味する。これまで同地域向けのテレビ国際放送にはTRT Tu"rkがあった。

ネパール,初のローカル衛星TV局誕生

3月3日,インドに隣接する南部タライ地方の中心都市ビルガンジで,同地方に住む1,000万人近いマデシの人々を主要な視聴ターゲットとするネパール初のローカル衛星テレビ局Terai Televisionが開局した。運営はTerai Media Network社。Terai Televisionはニュースを含む総合編成の24時間チャンネルで,ニュースはネパール語のほかに隣接するインド北部の言語(ヒンディー,マイティーリー,ボージュプリ―)でも放送される。ネパールは多民族国家で,南の平野部タライに住むマデシは北部インドの人々と多くの共通点を持つ。現在の正・副大統領はマデシの出身である。

バングラデシュ,Desh TVが開局

バングラデシュの独立記念日に当たる3月26日,新しい商業衛星テレビ局Desh TVが開局した。運営はDesh Television社で,代表は現職国会議員のアサドゥザマン・ヌール氏。