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冬の味覚 “ハタハタ” 記録的な不漁

  • 2023年12月25日

 

“ハタハタ”に異変!?

今が旬の「ハタハタ」。日本海側を中心に広い範囲でとれる魚で、焼いても煮ても、おいしい!特にメスの卵のぷちぷちした食感はたまらない。山形県の庄内地方では、12月の伝統行事のお供え物として親しまれている。しかし、ことしは、ハタハタに異変が起きている。

 

まさに“高級魚”

山形県酒田市の鮮魚店。この鮮魚店では、ことしの入荷は例年の10分の1ほどにとどまっている。さらに、価格は令和4年の同じ時期の約1.5倍。12月13日に店頭にならんだ最も大きいハタハタの価格は、なんと790円

 

横浜にいる妹に送ってあげるために訪れた地元の女性は5匹購入!お値段は…3100円

 

鮮魚店の店長は特に山形県のものが少なく肩を落とす。他県からも取り寄せるなど、仕入れ先を工夫していきたいと話す。

 

ハタハタといえば、これまでは、わいてくるほどたくさんあがっていたのを覚えているが、それと比べるとことしはとんでもなく少ない量だと痛感している。安ければ1箱買ってくれるお客様もいるが、これだけ高ければ難しい。昔と違って簡単に手が出せるような値段ではなくなった。

冬の風物詩にも影響…

酒田市にある酒田北港では、産卵のためにやってきたハタハタを釣る人たちが訪れる光景が冬の風物詩だ。8年前の2015年には、岸壁いっぱいに、釣り糸を垂らす釣り客でにぎわう様子がみられる。

 

ところが、ことしは・・・釣り客の姿はわずか数人。地元の釣り具店によりますと、2年ほど前から
酒田北港ではほとんどハタハタが釣れなくなった。また、酒田海上保安部では、ハタハタ釣りの客が海に転落する事故を防ごうと、ハタハタの接岸にあわせて注意を呼びかける取り組みを行っているが、2年前から行っていない。

 

記録的な不漁か

山形県のハタハタの漁獲量の過去5年分(1~11月)をまとめた。県によると、3年前には、263トンを超えていたが、2年前132トン、さらに去年75トンと、徐々に減少してきている。そしてことしは…わずか2.9トン。少なかった去年よりさらに96%も減少しているのだ。

 

海面水温の上昇 影響か

なぜ大幅に減少しているのか?気象庁によると、日本海のことし6月から11月にかけての平均の海面水温は、平年より2度前後高く、統計を開始した昭和57年以降、最も高くなったことがわかった。

山形県水産研究所の担当者は、海面水温の上昇が影響している可能性を指摘している。また、研究所では、毎年、稚魚の数を調査しているが、この5年は稚魚が採取できない状況が続いている。

 

ハタハタは“深海魚”。親は水深200~300メートルのところに生息している。このため、高水温が苦手で、接岸してくるときは、かなり難儀することが考えられる。ハタハタは2~3年ぐらいで親になるが、稚魚が少ないということは、2~3年後の資源も少ないということだ。なんとかハタハタの資源を増やせるように取り組んでいきたいが、回復には時間がかかると考える。

取材後記

ハタハタを巡っては、過去にも激減した歴史がある。1990年代に大幅に減少した際には、隣の秋田県が3年間の禁漁を行うなど、対策を講じてきた。その後、回復し、山形県でも、小型魚を逃がしたり、釣りにルールを設けるなどして資源を守ってきたが、ふたたびピンチに陥っている。

ことしは秋の味覚「サケ」の捕獲数が減少しているというニュースも伝えたが、海面水温の上昇は、海の生き物に大きな影響を及ぼしている。「ハタハタ」は日本海で広くとることができるため、長年親しまれている食文化を守るためにも、隣県などとも一緒に対策を考えていく必要があると考える。

(12月21日「やままる」で放送)

 

  • 和田 杏菜

    NHK山形放送局酒田支局 記者

    和田 杏菜

    2016年入局
    甲府局を経て山形局
    おととし11月から酒田支局
    サケやハタハタなど
    山形の漁業関係を取材

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