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検証 富山湾の活断層 今後の津波リスクは?

シリーズ・最新調査からたどる 富山の津波リスク #2
  • 2024年02月14日

富山の津波 最大波は地震発生の20分~30分後

1月16日に東京大学地震研究所が発表した調査結果によると、今回の地震では能登半島の北部に走る複数の断層が動いたとみられています。

津波をコンピューターで再現したシミュレーションの結果によると、能登半島からの津波は地震発生後20分から30分で富山湾の沿岸に到達したとみられています。

地震発生の3日後から、県内の津波の被害状況を調査してきた富山県立大学の呉修一准教授。
呉さんは国土交通省や地元のケーブルテレビなどが海沿いに設置した無人カメラの映像を解析しています。

こちらは雨晴海岸の映像。地震発生前の様子がこちら。画面右下の陸地が見え、観光客の姿も多くあります。

25分後の午後4時35分ころ、海の様子が急変。
線路の脇の堤防まで津波が押し寄せている様子が確認できます。
このころの津波が県内で一番高い津波として観測されました。

津波の一番大きい波が観測されたのが4時28分くらいです。
能登半島から回ってきた津波が、入善の方に行って、それが高岡、氷見っていう順で回ってきた。それが28分から30分くらいで、一番大きかった津波なんです。

富山湾周辺にはほかにも活断層が多数

幸い、今回の津波では人的被害は出ませんでしたが、実は富山湾周辺には 今回動いたとみられる断層の他にも多数の活断層が存在しています。

それを明らかにしたのが、2013年から8年かけて国が実施した日本海地震津波調査プロジェクト。日本海側の陸と海にある活断層を調査しました。
その結果です。

今回動いたとされる能登半島の活断層以外にも、多数の断層が存在していることがわかります。
これらの断層が動いた場合、その多くで富山に津波が押し寄せると推定されているのです。

呉准教授は、今回の能登半島地震よりも高くて早い津波が富山にくることを想定して、備えることが必要だといいます。

今回の能登半島地震というのは、私たちの対象よりも富山への津波リスクはレベルの低いものと考えてほしいです。
富山ではそれよりも近場で地震が起こりえる。
もっと早くて大きい津波が来る可能性があることに留意してほしいです。

直下型地震と早い津波・呉羽山断層

多数ある活断層の中で、呉准教授が特に危険だと指摘するのが、富山県の中心部を南北に走る呉羽山断層です。

想定される地震の規模は阪神・淡路大震災を上回るマグニチュード7.4。
市街地の直下に断層があるため最悪の場合、死者は2000人以上、住居被害は全壊だけで3万7千棟以上にのぼると推定されています。

そして断層が海の中まで伸びているため、津波も同時に発生する恐れがあります。

特徴的なのは津波の到達時間の早さ
県が公表している津波の到達時間と高さの想定です。
富山市から魚津市では、5m以上の津波が地震発生から3分以内に到達すると予想されています。

呉羽山断層はすぐ近くなので、2~3分程度ですぐ津波がきます。
地震が起きたらすぐに川から海から出て、高いところに1秒でも早く逃げてもらう。これが本当に大事です。

富山にとって❝最大の津波リスク❞ F45とは?

そして、富山にとって最も深刻な津波被害をもたらすと呉准教授が指摘する断層があります。

西側断層。F45ですね。
津波が大きくて速いので怖いです。

それが「F45」と呼ばれる断層。
富山湾の西部から能登半島の東の沿岸部にかけて伸びる2つの断層の総称です。
長さはおよそ40km。

二つの断層が連動して動いた場合、地震の規模が大きくなり、非常に高い津波が短時間で県全体を襲うリスクがあるというのです。

二つ断層があるじゃないですか。
つまり連動して破壊するっていうのがあると、規模が大きくなるので、その分規模の大きい津波になると思っています。

F45が動いた場合の津波の想定です。

入善町では地震発生の7分後に10.2mの津波が。
氷見市では10分後に7.2mの津波が到達するなど、県全体に高い津波が押し寄せると想定されているのです。

しかも、この高さはあくまで海岸線での津波の高さ。
津波は通常の波よりもエネルギーが大きく、勢いよく陸地を駆け上がります

実際に陸地を駆け上がる高さ、「遡上高」は海岸線で観測された高さの
3倍から4倍まで達する恐れもあるのです。

「遡上高」とは?詳しい解説はシリーズ第一回(こちら↓)へ!
(津波の高さどこまで? シリーズ・最新調査からたどる富山の津波リスク #1)

今回の地震 富山湾周辺の活断層に影響も?

富山湾周辺に多数存在する活断層。呉准教授は能登半島地震の影響をうけ、
これらの断層により大きな負荷がかかっている可能性も否定できないといいます。

 

今回の地震で周りのところが刺激を受けて活発化するというのも十分あり得ると思います。
いままで以上に富山湾内で地震が起こる可能性は高まってしまうかもしれない。
そこは十分注意しないといけない

津波警報・注意報 間に合わないケースも

気象庁が出す津波警報や津波注意報は地震発生から発表まで2、3分程度かかります。
富山県の場合特徴的なのが「早い津波」。

津波の到達時間が早い場合、警報などの発表よりも早く津波がが到達する場合もあります。
地震が起きたら速やかに海や川から避難する必要があります。

 

シリーズ「最新調査からたどる富山の津波リスク」。
次回は今後発生する恐れのある富山湾で発生したとみられる「海底地すべりによる津波」についてお伝えする予定です。
 

ほかの連載記事はこちら
第1回 津波の高さどこまで?
第3回 海底地すべりによる津波 広範囲で発生か?

  • 池田航

    ディレクター

    池田航

    令和3年入局。富山局が初任地。自然・環境問題から社会課題まで幅広く取材。

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