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海底地すべりによる津波 広範囲で発生か?

シリーズ・最新調査からたどる 富山の津波リスク #3
  • 2024年02月19日

シリーズ「最新調査からたどる富山の津波リスク」。
3回目は海底地すべりによる津波についてです。
今回の地震では富山湾で海底地すべりが発生し、早い津波が起きたと考えられています。
専門家の調査から、この海底地すべりは湾内の広い範囲で同時多発的に起きた可能性が高いことがわかってきました。

早い津波 富山湾では海底地すべりが発生

元日の富山を襲った津波。
先月20日から4日間富山県に入り、津波の調査を進めてきた東北学院大学の柳澤英明准教授です。

調査を行った東北学院大学 柳澤英明准教授

柳澤さんが注目しているのは今回富山湾で起きたとされる海底地すべりによる津波です。
海底地すべりによる津波発生のメカニズムです。
地震などにより海底で大規模な地滑りが発生。
すると海面が急激に変動し、津波が起きます。
発生源が陸地から近いと、地震発生後すぐに津波が到達する危険性があります。

実際1月に海上保安庁が行った調査では、富山市の北およそ4kmの沖合で斜面が崩壊している痕跡が
見つかりました。
南北およそ500m、東西およそ80mにわたる斜面が深さ40mほど崩れていました。

海上保安庁が1月に発見した 海底地すべりと思われる痕跡の場所
海上保安庁が1月に発見した海底地すべりと思われる痕跡

海底地すべり 同時多発的に湾内の広範囲で発生か

しかし柳澤さんの分析によると、より広い範囲で海底地すべりが発生していた可能性が高いことが分かったといいます。

海上保安庁で発見した海底地すべり跡も今回の津波に影響した一部ではあるとは思っています。
ただ、この地すべりの大きさは非常に小さいものとなります。
なぜなら、これだけでは今回観測されている津波を再現することは出来ないからです。
より広い範囲で同様の地すべりがいくつも発生したことによって、非常に大きい津波を作ったと考えています。

柳澤さんは、沿岸部に設置されたカメラの映像や検潮計の記録、津波の目撃証言などを分析。
これらの情報をもとに、海底地すべりがどの場所で発生したのか、繰り返し計算を行いました。

その結果です。
富山市の北だけでなく、新湊沖や氷見沖など富山湾の各地で、幅数km以上に及ぶ大規模な地すべりが同時多発的に起きた可能性が高いことがわかったのです。

神通川の河口から約2km先ぐらいのところで、3km~4km以上の広さを持った海底地すべりが起きたと考えています。
この場所に加えて富山新港の沖合約2kmぐらいのところでも地すべりが起きていると考えないと、観測された津波は再現できないことが解析から分かっています。

キーワードは「海底谷」 恵みの谷が海底地すべりの発生源に?

なぜ広い範囲で海底地すべりが発生したのか?
柳澤さんは今回の津波の特徴として、ある言葉を上げました。

富山湾の中にある大きな谷、「海底谷」です。
湾内には大小多数の深くて急な谷が連なり、陸地のそばまで迫っています。

富山湾の大きな地形的特徴となっている海底谷
富山湾を北東方向から見た地形
陸地のすぐそばまで谷が迫っている様子が確認できる

この谷は「藍がめ」とも呼ばれ、富山湾の大きな特徴となっている海底地形です。
カニや白エビなど、普段は豊かな富山湾の幸を育む、天然のいけすとなっている海底谷。
恵みの地形が、海底地すべりに大きくかかわっているというのです。

海底谷があるということは、谷があるということ。
つまり、急な斜面があるということになります。
谷があると、斜面が崩れやすい。
そして地震の揺れとともに崩れていくと考えられます。

実際にシミュレーションから想定された海底地すべりの発生場所と、海底谷の場所を重ね合わせると、その場所が一致していることがわかります。

赤丸:柳澤准教授らが推定した海底地すべりの発生場所
灰色の海底谷の場所と一致している

海底谷のところで崩れているという仮定をしたときに、シミュレーションの結果と実際の検潮記録がよく一致することが分かってきました。
そうすると海底谷で崩れたのだろうと考えています。

海底谷は津波の通り道に リスク助長する可能性も

海底地すべりの発生源となりやすいことがわかってきた海底谷。
そしてこの地形は、津波の脅威を助長するさらなるリスクをはらんでいると柳澤さんは指摘します。

海底谷を伝って津波はさらに速くなります。

実は津波の移動速度は、水深が深くなるほど早くなる性質があります。
例えば水深20mの場合、津波の速さはおよそ時速50km。
一方で水深200mの海底谷の場合、津波は時速およそ160kmにまで達します。

水深によって”津波の速さ”に大きな違いが

そのため、海底谷は津波が早く陸地へと到達する通り道となる可能性があるのです。

海底谷は水深が深いので、津波が発生したときに海底谷を伝わって津波が早めに到達することがあります。
そうすると2~3分程度で津波が来てしまうこともありえます。

津波ハザードマップに反映されていない
海底地すべりによる津波 どう備えれば?

今後、私たちは津波にどう備えればよいのか。
海底地すべりによる津波は予測が非常に難しく、具体的な高さや場所を想定しづらいという事情があります。
そのため、現在津波ハザードマップには海底地すべりによる津波は反映されていません

そのうえで柳澤さんは、今後も強い揺れの場合、海底地すべりによる早い津波に警戒する必要があるといいます。

海外だと、10mを超えるような非常に大きい津波が発生している事例もあります。
強い揺れほど海底地すべりが起こるリスクが高まってきます。
海底地すべりによる津波は、到達が非常に早いので、地震の揺れを感じたら沿岸域に暮らしている人はできるだけ早く避難することが必要になってくると思います。

3回にわたってお伝えしてきたシリーズ「最新調査からたどる富山の津波リスク」。
日本海側で発生する津波は到達時間が早いのが大きな特徴です。
それを前提とした避難行動が大切になってきます。

「海沿いで地震が起きたらすぐに逃げる」

これを心掛けてください。
(シリーズ「最新調査からたどる富山の津波リスク」・終)

 

これまでの連載はこちら
第1回:津波の高さどこまで?
第2回:検証 富山湾の活断層 今後の津波リスクは?

  • 池田航

    ディレクター

    池田航

    令和3年入局。富山局が初任地。自然・環境問題から社会課題まで幅広く取材。

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