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かわ知り「神通川」

命と暮らしを守るために
  • 2023年07月21日

身近な川のリスクを知って災害に備える「かわ知り」です。今回は、富山県の中心部を南北に流れる神通川についてお伝えします。

 取材・報告:石井智也アナウンサー                  《令和3年7月7日放送》

 

【洪水と治水を繰り返してきた神通川】

富山県の中心部を流れる一級河川・神通川。急峻な山から富山湾へと一気に流れ下る、全国有数の急流河川です。

石井アナ

アユ釣りや、河原での花火大会に、レジャー。私たちの生活に身近な神通川ですが、その川の歴史は水害の歴史でもありました。

古くからたびたび氾濫し、私たちを苦しめてきた神通川。明治時代には、大きく蛇行していた川の流れをまっすぐにする工事が行われるなど、人々は治水に力を尽くしてきました。

それでも・・・。

『日本ニュース』昭和23年7月水害

(ナレーション)「北陸地方を襲った豪雨は富山県では各河川が氾濫。神通大橋が流失。米の貯蔵所では出水近しの声に急いで安全な場所へと移しています」。


平成に入っても・・・。

『NHKニュース』平成16年台風23号

(アナウンサー)「台風23号で富山県内では一人が行方不明になったほか、40人がけがをしました」。

神通川は、繰り返し私たちに水害をもたらし続けています。

 

これ以上の被害を食い止めたいと、堤防では現在もかさ上げや拡幅などの工事が行われています。

その対策の要となっているのが、富山市奥田新町にある富山河川国道事務所です。

 富山河川国道事務所 飯田和也 調査第1課長

河川の調査や水防などを担当している飯田和也さんです。
 

飯田課長

堤防の整備も実施してきているところであり、そういった面では多少なりともリスクは下がってきているとは思うのですが、まだまだ安全な河川ではないというふうに思っているところです。

 

神通川の水害から命を守るためのポイントを聞きました。

 

命を守るポイント①『急流河川の“破壊力”』
飯田課長

急流河川につきましては、川の水が非常に強いということで、堤防とか護岸を壊して決壊するという恐れがある河川になります。

飯田さんと訪れたのは、神通川の脅威が見えやすい富山市婦中町の成子地区。
 

石井アナと飯田課長
富山市婦中町成子地区
石井アナ

川の流れがグッと曲がって、私たちの立っている堤防のほうに水が向かう、ちょっと向きが変わるところなんですか。

飯田課長

こういったところを、私たちは川の水衝部、水あたりと呼んでいます。

こうした水衝部では、護岸や堤防が壊れやすいといいます。成子地区周辺で堤防が決壊すれば、周辺はもちろん、下流まで広い範囲の住宅地に浸水被害をもたらす恐れがあります。

飯田課長

いまはきれいな水が流れていますけれども、洪水になれば上流からの土砂も水に混ざって流れてきますので、いまよりも水の力が強くなる。護岸にあたると、護岸を壊してしまい、堤防も削ってしまう。過去にも複数回、護岸を壊してしまうような洪水は発生しています。

 

 

命を守るポイント②『上流部の雨に注意』

二つ目のポイントは、上流部の雨の降り方です。
 

飯田課長

神通川は、岐阜県側にある川上岳(かおれだけ)が水源になっています。ここを水源として、富山県内を通って日本海に注ぎます。

神通川の水位は、上流である岐阜県の飛騨地方で降る雨にも大きく左右されるのです。

 

令和2年7月 富山市大沢野

去年7月、岐阜県に大雨特別警報が発表された際には、神通川の水位が大きく上昇しました。

飯田課長

県内の雨の状況だけで安全ということはなかなか判断しきれないと。やはり上流の雨の状況を見て対応することがよろしいかと思います。

飯田さんは、岐阜県飛騨地方の雨の降り方や、県内で最も上流にある「大沢野大橋」の水位計のデータを確認してほしいといいます。

こうしたデータは、国土交通省のホームページ「川の防災情報」で見ることができます。

国土交通省HP 川の防災情報

 

 

命を守るポイント③『“内水氾濫”』

神通川の下流では、支流の「内水氾濫」にも注意する必要があります。

大雨で神通川の水位が上昇すると、そこに流れ込んでいる支流や用水路の水は行き場を失ってしまいます。そうした水が住宅地などであふれてしまうのが「内水氾濫」です。

 

平成16年10月の台風23号。このときにも内水氾濫が発生しました。

平成16年10月 富山市有沢新町

富山市有沢新町では、用水路の水が、水位が上がった神通川の支流に流れ込むことができず、逆流。住宅地に流れ込み、床上や床下浸水の被害が出ました。

 

石井アナと多賀勇さん

当時床下浸水の被害にあった多賀勇さんです。

多賀さん

川が反対に流れとるもんだから、それも勢いよく流れとるもんだから、これ一体どうなったんが。あんなの見たの初めてだから、もう本当にたまげたというかねえ。みんな床下浸水で、車だとかみんなダメになってしまった。

こうした内水氾濫のリスクも知っておいてほしいと飯田さんはいいます。

飯田課長

富山県内は稲作も盛んに行われ、用排水路が編み目のように張り巡らされている状況などもあり、内水氾濫のリスクは非常に高いかと思います。

 

【神通川の特徴踏まえ、いざというときの行動を!】

飯田さんは、神通川の特徴を踏まえて、いざというときの行動を考えておいてほしいと話しています。

飯田課長

自分たちの住んでいる土地にどういうリスクがあるのかを把握しておくことは、とても大切なことだと思います。常日頃から気象情報に注意するとか、避難時のハザードマップなどを確認しておくことで、自分の身を守ることができるかと思います。

石井アナ

「急流河川」という点は、神通川だけでなく、県内を流れるほかの一級河川にも当てはまります。また「内水氾濫」のリスクもありますから、そういった危険性があることを理解したうえで、繰り返しになりますが、▽ハザードマップを確認する、▽避難場所を検討するなど、大雨や台風への備えを確実に行うようにしてください。

 

自分の命、そして大切な人の命を守るためにも、いざという時に備えてください!

 

                      令和3年7月放送 (※肩書は令和3年7月当時のもの)

  • 石井智也

    名古屋放送局アナウンサー

    石井智也

    2018年(平成30年)夏から22年(令和4年)夏までの4年間、富山局勤務 ・富山局時代の主な担当は「ニュース富山人」「UPっぷ富山 きとラボ」など

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