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かわ知り 「常願寺川」

命と暮らしを守るために
  • 2023年04月19日

自分の身近な河川に氾濫の危険が迫ったら、どうしたらいいのか。いざというときに、水害から命を守るためのポイントをお伝えしていきます。

題して「かわ知り」。今回は、県の中央部を南北に流れる1級河川、常願寺川です。
 

 

北アルプスを源に、富山平野を通り日本海に注ぐ常願寺川です。川の長さは56キロ、3000メートル級の立山連峰から一気に流れ下る世界でも有数の急流河川です。

そのため、古くから水害を繰り返し引き起こし、住民たちを苦しめてきました。

 

滑川市立博物館所蔵「安政五年常願寺川非常洪水山里変地之模様見取図」

江戸時代には、立山カルデラから流れ出た大量の土砂を含んだ水が常願寺川を流れ下って富山平野を襲い、富山城下にきわめて甚大な被害をもたらしました。
 

昭和44年8月

昭和44年には、集中豪雨により常願寺川上流部を土石流が襲いました。集落が孤立したり線路や道路が寸断されるなど、大きな被害をもたらしました。

 

             平成10年8月    写真提供:富山河川国道事務所

また平成10年にも、広範囲にわたり堤防にダメージを与える水害が起きています。

 

富山河川国道事務所  江渕直嗣 調査第一課長

常願寺川を管理する富山河川国道事務所の江渕さんです。常願寺川が危険な川だということは、その名前の由来に関する説からも分かるといいます。

江渕課長

川が氾濫しないことを“常に願う”という人々の気持ちから、常願寺川と名付けられたという説もあります。それくらい過去から氾濫を繰り返してきたと、暴れ川であったということを指しているのだと思います」。

 

 

命を守るポイント①『大川寺水位観測所の水位に注意』


北アルプスの山々から集まってきた水が富山平野へと流れ出る位置にある大川寺(だいせんじ)水位観測所です。ここから河口まで、約20キロの区間を監視する重要な役割を持っています。

大山寺水位観測所
江渕課長

「この地点から河口まで、この観測所の水位で、危険であるかどうか判断していますが、氾濫危険水位6.61メートルに達しますと、ここから河口までの一番低いか所で氾濫する危険性が生じていることを意味しています」。

 

ポイント①のおさらいです。

大川寺水位観測所の水位6.61メートルは、流域の住民が避難を判断する際の参考となる水位です。ぜひ覚えておいてください。

 

 

命を守るポイント②『“越水なき破堤”に警戒』

洪水というと、川の水が堤防を越えてあふれ出すさまをイメージすると思いますが、常願寺川は急流河川のため、強力なエネルギーを持つ水の流れが堤防を浸食し壊してしまい、洪水が起きることがあるといいます。堤防の高さまでまだ余裕があるからと、決して油断しないでください。

 

 

 

命を守るポイント③『ハザードマップをチェック』

常願寺川は氾濫すると、富山市中心部を含む広い範囲が浸水の危険にさらされます。自分の自宅や職場にはどの程度危険があるのか、事前にチェックしておくことが重要です。

常願寺川水系常願寺川洪水浸水想定区域図(想定最大規模)
江渕課長

「もし常願寺川で堤防が決壊して川の水があふれると、大きな洪水の場合には、常願寺川と神通川で挟まれている地域はほとんどが浸水被害を被る恐れがあります。ちょうど富山駅がある所、その辺に水がたまって浸水継続時間が長くなることがあります」。

「浸水の深さが5mを超えるような場所ですと、自宅で2階に避難しても間に合わないレベルになりますが、黄色で表示されているところ(浸水の深さが0.5m未満)は、1階にある物を2階に運んで垂直に避難するというのもありかなと思います」。

 

ポイント③のおさらいです。

万が一の際、自分の家の周りはどのくらいの深さまで浸水するのか、また水が引くまでどのくらい時間がかかるのか、ハザードマップで調べた上で、いざというときに備えてください
 

 

常願寺川では様々な場所で先人たちの川との戦いの歴史を見ることが出来ます。

 

国指定重要文化財『白岩砂防堰堤』

昭和14年に完成、落差108メートルと日本一の規模を誇る。立山カルデラから出る大量の土砂から、富山平野を守り続けている。

 

『佐々堤』

戦国時代、常願寺川の大氾濫の後、佐々成政の指揮により築かれたと伝えられる。

 

『ピストル型水制』

富山で開発され、全国に普及した。水の流れを弱め、堤防を守る。

 

 

富山河川国道事務所  江渕直嗣 調査第一課長
江渕課長

「全国では毎年のように過去類を見ない大雨・洪水により、甚大な浸水被害が発生している状況です。常願寺川においても堤防では守れない洪水が必ず発生するんだという気持ちを持って、洪水に対する備えをしていただきたい」。

 

長年にわたり積み重ねられてきた多くの努力により流域に住む人々の暮らしは昔と比べて安全なものに変わりました。とはいえ、災害はいつ襲ってくるか分かりません。身近な川の特徴をよく理解した上で、ふだんからぜひ、いざというときへの備えを心がけてください。

 

自分の命、そして大切な人の命を守るためにも、いざという時に備えてください!

 

【参考】
命を守るためのポイント①でお伝えした「大川寺(だいせんじ)水位観測所」の水位は、国土交通省のホームページ内「川の防災情報」で、確認することができます。

 

令和4年10月放送  

  • 牧野雅光

    ニュースカメラマン(防災士)

    牧野雅光

    報道の仕事に携わる中で、防災・減災報道の大切さを痛感し、 防災士の資格を取得しました。 とは言え、まだまだ。日々勉強中です。

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