かわ知り 「小矢部川」
- 2023年04月19日
自分の身近な河川に氾濫の危険が迫ったら、どうしたらいいのか。いざというときに、水害から命を守るためのポイントをお伝えしていきます。
題して「かわ知り」。今回は、県西部を流れる1級河川、小矢部川です。
石川県との県境に位置する大門山(標高1572m)を源に、県西部の平野部を流れる小矢部川です。
小矢部川は川の長さのおよそ70%が平野部を流れているため、県内の多くの急流河川とは異なり、比較的緩やかに蛇行して流れる川です。
しかし小矢部川流域は、梅雨、台風、降雪と年間を通じて降水量が多く、たびたび洪水被害が発生しています。
昭和28年9月には、台風の暴風雨により34か所で堤防が決壊、死者・行方不明者8人、浸水面積3800ヘクタール(東京ドーム約800個分)に及ぶ大災害となりました。
10年後の昭和38年6月にも、台風の影響で大洪水が起きています。
近年では、平成10年9月、台風による記録的な豪雨により、戦後最大の流量を観測、住宅半壊1戸、床上浸水52戸、床下浸水674戸におよぶ被害が発生しています。
また平成20年7月にも、大雨により大きな被害が発生しています。
小矢部川を管理する富山河川国道事務所の江渕さんです。小矢部川は東を流れる庄川との関係に注意が必要だと言います。
「砺波平野は庄川が形成した扇状地となっており、小矢部川のほうに向かって低くなっています。小矢部川は庄川から出水した用水、それから支川を受け止めながら、集めながら流れている川と言えます」。
小矢部川には60本以上もの支川が流れ込んでいます。東側の庄川から流れてくるほか、西側の石川県境の山地部からも数多くの支川が小矢部川に合流しています。
小矢部川が増水した際には、小矢部川は大丈夫でも、小矢部川に流れ込んでいる支川やその支川の周囲で、特に注意が必要だと言います。
「小矢部川が増水した際に、その小矢部川本川の水が支川のほうに流れ込んでしまい、支川の堤防の高さが低いようなところからあふれ出て、浸水被害が発生する危険があります」。
「また支川の水位が高くなることによって、降った雨が排水溝などを通して支川のほうにはけずに、そのままたまってしまう内水氾濫という浸水被害が起きる恐れがあります」。
ポイント①のおさらいです。
小矢部川には60本以上もの支川が流れ込んでいます。小矢部川が増水した際には、小矢部川が大丈夫でも、支川の周囲で特に警戒が必要です。家の周囲に危険なか所がないかなど、事前にチェックしておいてください。
小矢部川から水があふれ出したとき、どの場所にどのくらいの時間、影響があるのでしょうか。
「小矢部川の西側は丘陵・山地部、東側は庄川からの扇状地によって、小矢部川から離れるほど徐々に標高が高くなっているという地形的特徴がありますので、氾濫した場合の水は、小矢部川に沿った地域を中心に流れ下るという特徴があります」。
「この色の濃い赤色の部分、こちらが浸水したときの深さが5m以上ある地域になっていまして、そういった地点がところどころで見られます」。
「こちらは、浸水想定区域図の浸水継続時間を示したものになります。いまほどの浸水の深さが深かった地域では、オレンジ色で表示されているところがありますが、オレンジ色は3日から1週間未満の浸水が想定される地区になっています」。
「また注意していただきたいのは、庄川です。こちらで氾濫した場合の水は、小矢部川まで流れてくることがありますので、小矢部川の右岸側、東側に住んでいるみなさんにとっては、庄川にも注意をしていただきたい」。
ポイント②のおさらいです。
万が一の際、自分の自宅や職場の周りは、どのくらいの深さまで浸水するのか、また水が引くまで、どのくらい時間がかかるのか、ハザードマップで調べた上で、いざというときに備えてください。
小矢部川は、古くから多くの人々に愛され、歴史の舞台にもなってきました。
『大伴家持』
奈良時代、越中の国守として赴任し、この地を愛した大伴家持。万葉歌人として知られ、5年間の在任中に200種以上の歌を残している。
『朝床に聞けばはるけし射水河 朝漕ぎしつつ唱ふ舟人』(射水河は現在の小矢部川のこと)
『如意の渡』
難を逃れるため、弁慶が主君・義経をわざと扇で打ちつける『安宅の関』の舞台は、この地にあった“如意の渡”とも。かつて川沿いにあった像は、現在伏木駅前に移設されている。
『津沢記念公園』
江戸時代、緩やかな流れの小矢部川を利用し、年貢米をはじめ多くの物資が川船で運ばれた。この津沢の地には加賀藩の御蔵が設けられ、一大流通拠点として大変な繁栄を見せたという。
「洪水被害を防ぐためには、一つは川の中に入ってくる水を少なくするということがあります。そのためには川の中だけではなくて、流域の中で、例えば田んぼに一時的に水をためるとか、学校のグラウンドにも水をためるとか、雨水貯留管を整備することにより、川へ流れてくる水を減らすことが上げられますし、住民のみなさまの家庭では、例えば雨水タンクを設置するとか、少しでも川へ流れ込む水の量を減らすことによって、浸水被害を減らすことができると思っています」。
「全国各地では毎年のように過去類を見ないような大雨、洪水によって甚大な被害が発生しております。小矢部川でも、今後堤防などの施設で守り切れない洪水が必ず発生するという意識を持って、洪水時に適切な行動が取れるよう備えていただきたい」。
長年にわたり積み重ねられてきた多くの努力により、流域に住む人々の暮らしは昔と比べて安全なものに変わりました。とはいえ、災害はいつ襲ってくるか分かりません。
身近な川の特徴をよく理解した上で、ふだんからぜひ、いざというときへの備えを心がけてください。
自分の命、そして大切な人の命を守るためにも、いざという時に備えてください!
令和5年4月放送