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徳島 藍×現代アート 藍コンクリートを生み出したアーティスト

~阿波藍の新しい文化を作りたい~岡田理紗キャスターが取材
  • 2023年12月01日

伝統的な阿波藍を現代アートに?
藍コンクリートを生み出したアーティスト喜田 智彦(きた ともひこ)さん。
いま国内外から注目を集めています。
制作の様子や藍と向き合う思いを取材しました!

藍コンクリートとは?

こちらが、「藍コンクリート」で作ったアート作品です。

「sustaina blue」2022年制作

吸い込まれるような深い藍色のグラデーションが特徴です。

「藍波」(左) と「郷創」(右)ともに2021年制作

藍コンクリートの生みの親でもある
アーティストの喜田 智彦(きた ともひこ)さん

アトリエにお邪魔しました

藍コンクリートとは、モルタルを混ぜたもの。
一見淡いブルーに見えますが…
どうやって藍色の濃淡ができるのか見せてもらいました!

こてで薄く塗り広げる
薄く2層塗り重ねます

霧吹きが登場、藍色の染料を吹き付けます!
それを、こてで繊細になでることで色の変化をつけていきます。

絶妙な力加減で藍色の模様ができていく

そして完成した作品がこちら!

神秘的な藍のグラデーションが現れました

藍コンクリートがアートになるまで

岡田

なぜ藍コンクリートを開発したのですか?

喜田さん

徳島って藍染めの文化があって、藍が有名じゃないですか。その藍をまた違う形に生かせないかなと。
藍をコンクリートなど建材で使えたら幅が広がるんじゃないかなと思って。

実は、喜田さんは建築の現場で長い間働いてきました。
6年前にリフォームや空き家再生の会社を起業。

独立した頃の喜田さん

5年前、徳島らしい内装ができないかと藍色のコンクリートを思いつきました。
しかしなかなか鮮やかな藍色にはならず…
藍色になっても紫外線や水で退色してしまうことに苦戦。

緑や灰色になることも。きれいな藍色は難しかったそう

試行錯誤の末、鮮やかに発色し退色もしない藍コンクリートが完成!
しかし、各地の建築会社に売り込んだものの、なかなか採用には至りませんでした。

50社近く飛び込み営業をしたそう

そこで喜田さんが考えたのが…
2021年に新設された徳島県美術展の現代アート部門への出展!
この作品「融波」(ゆうわ 2021年制作)は、立ち上がる波のイメージを藍色の濃淡だけで表現。
見事、最優秀賞を受賞したのです。

中央が受賞作の「融波」2021年制作

それを機に、国内からの制作依頼が入るようになりました。
なんとパリのルーブル美術館など海外の美術展にも招待され、注目を集めています。

ルーブル美術館でのライブパフォーマンスの様子
吉野川を表現した作品が完成!

Q:ルーブル美術館ではどんな思いで制作を?

A:徳島出身の僕は、藍の文化が根付いたのは徳島の先人たちが育ててくれたからだと考えていて、敬意をもって思いついたのが「吉野川」だったんです。藍の文化が発達した由来の一つに暴れ川である吉野川がある、じゃあ僕はパリに吉野川を書こうと。現地でブルーのところを塗りました。白いラインが吉野川なんですよ。
 パフォーマンス自体は15分ぐらいだったんですけどね。色んな国の方がたくさん見てくれて良かった、面白かったです。 

徳島市のレストランにも作品が!

喜田さんの作品があると聞いてやってきたのは、
「海」をテーマにした徳島市の飲食店。

壁に動く波の映像が投影されています

壁の映像に合わせ、テーブルに藍コンクリートで模様を描きました。

映像に合わせて「波のうねり」を表現

料理長にお話しを聞くと…

料理長

喜田さんのテーブルがあるからこそ料理が映えてくれる。
お客さんに自然に映っていて、「カウンターまでこだわっているんだね」と言われます。

喜田さん

常にやるからにはお客さんに喜んでもらいたいと思ってやっているので嬉しい。
依頼を受けた時は大きな仕事だったので不安もあったが、同時にやってみたいという気持ちの方が大きかった。
あの頃から問い合わせが入るようになりましたね。

藍コンクリートでローソクを表現

そんな喜田さんに、さらに大きな仕事が舞い込みました!
三重県のローソク工場のロビーの内装を頼まれたのです。

この大きな工場のロビーの壁を制作します

撮影に伺った日は制作の山場
デザインの要となる中央のひし形部分の作業です。
ここに企業のロゴが入り、来客が最初に目にする場所なので失敗はできません。

作品の顔となる中央のひし形部分のデザイン

大きな作品なので左官職人の相棒と2人での作業。
「いこうか、いきますよ!」とテンションを上げて、喜田さんが1層目を塗り始めます。

1層目を薄く塗り広げていきます

塗り終わるとすぐに「GO!」と声をかけ、2層目は相棒にバトンタッチ。

左官職人の春木さんが手際よく塗り重ねる

そこに濃い藍色を吹き付けると…

2層目を塗り終えた部分に素早く濃淡をつける

下の淡い色が乾かないうちにこてを使い、藍のグラデーションを作り出していきます。
色が乾くまでの時間との勝負です。
外側を濃く、内側に向けて明るい色になるよう調整。

1層目を塗り始めてからおよそ20分後、
「できました…ふぅ…できました!」と喜田さんがにっこり。

ローソクの”ともしび”を藍色だけで表現

ローソク会社なので、藍色のグラデーションで暗闇を照らすローソクのともしびをイメージ。
この時、撮影班からも歓声が上がりました!

濃い色の藍コンクリートをふき取り濃淡をつける

バランスを見ながら周囲の色の調整もしていきます。
拭いては少し離れたところから見直す。
何度も確認しながらの作業が、この日4時間続きました。

7日間にわたる作業で、ロビーが完成!

藍の新しい文化をつくりたい

大きな仕事を無事に終えた喜田さん

Q:ローソク工場での制作はどうでしたか?

A:伝統がある会社で、いつも以上にプレッシャーが。また、エントランスは会社の顔になるので、やりがいと同時に責任感もありました。
 藍コンクリートは最後の最後まで色が分からない部分があります。途中経過で仕上がりの色を想像しながらの作業になるので悩みました。いい出来になったとすごく満足しています。


Q:喜田さんの夢・目標は?

A:藍コンクリートが藍の新しい文化になればと思っています。今はこの藍のコンクリートに実直に向かいたい、もっとよくしてやりたい。
それで誰かの人の役に立てればと思います。

喜田さんには今後も県内外から制作の依頼がきていて、活動を続けていくということです。
新しい徳島の藍が広がっていくのが楽しみです! 

とく6徳島用の作品もありがとうございました!
  • 岡田 理紗

    徳島局・キャスター

    岡田 理紗

    「とく6徳島」キャスター
    『藍の本来のブルーを引き出し、新しい藍の文化をつくりたい』と制作を続けてきた喜田さん。藍は動く・進化するものだとも話していました。
    自分が心ひかれたものにひたむきに向き合った結果、評価されて今のご活躍があるのだと感じます。藍コンクリートを通して阿波藍を伝える喜田さんから今後も目が離せません。


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