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吉野川の歴史を貴重な映像で振り返る 氾濫対策・住民投票・保護活動など

  • 2023年12月19日

NHK徳島放送局はことし開局90年。
これまでNHKが記録してきた貴重な映像で県内各地の歩みを振り返りながら「徳島の未来」を見つめます。
今回は、全長194キロメートルの吉野川。
日本の三大暴れ川として知られ、四国三郎とも呼ばれています。
吉野川には多くの生き物や人々が関わり続けてきました。その歩みを振り返ります。

川の恵みとともに

昭和30年代、吉野川の河口でのノリ漁の様子です。
塩害により米作りができなくなった農家はノリを取り、暮らしを成り立たせました。

吉野川市山川町では、和紙の原料となる「コウゾ」を川でさらしていました。
最盛期の明治時代には、吉野川流域でおよそ500軒が紙すきに携わっていたといいます。
良質の紙を作るには、川の水が欠かせなかったのです。

「コウゾ」を川でさらしている様子

人々は吉野川の恵みを受けて暮らしてきました。

時には氾濫も

吉野川は人々の暮らしを成り立たせてきた一方、台風や集中豪雨でたびたび氾濫。
家が浸水するなど、時に人々の暮らしを苦しめました。

洪水への対応を余儀なくされる中、備えを進めてきました。
少しでも洪水の被害を少なくするため、「水屋」と呼ばれる、高い石垣の土台の上に家を建てていました。

石垣の土台の上に建てられた家

川の氾濫に備える暮らしの知恵は橋にも読みとることができます。
潜水橋です。大雨で川の水位が上がると橋が川に沈んだようになります。

橋に流木がひっかからず、抵抗を少なくするため欄干がありません。
「水を受け流す」
それがかつて流域で暮らす人々の知恵だったのです。

氾濫しやすい土地に暮らしてきた人々。
人々は恐れながらも、洪水の時に上流から運ばれてくる土が農業に欠かせませんでした。
その代表的な作物が徳島の経済を支えた藍です。
藍は連作障害が起こりやすいため、新たな土が運ばれてくることが必要だったのです。

(せき)の改築をめぐる議論も

生活していくうえで欠かせなかった川とのつきあい。
しかし、そのあり方も時代とともに変化し続けてきました。

平成に入り、問題となったのが第十堰の改築計画です。
250年以上前に作られたこの堰を治水と老朽化のため壊し、水門を開け閉めできる可動堰を作るという建設省の改築計画が本格的に進み始めました。

一方、多額の費用を投じる公共工事にどこまで効果があるのか、疑問の声があがり始めました。

勉強会に参加した人の多くは、野鳥の観察や釣りなどを趣味としていた人たちでした。
長年、ともにしてきた堰を人工的に変えることの必要性に疑問をなげかけたのです。

吉野川に手を加えないことを望む住民たちがいる一方で、可動堰の建設を求める住民たちも、立ち上がりました。
防災の面から命と暮らしを守ることを、署名活動や講演会などで訴えたのです。

地域住民の間でも意見が分かれる中、平成12年、国の公共事業の是非を問う、全国で初めての住民投票が行われました

その結果、計画への反対票が多数を占め、計画は白紙となりました。
その後、堰の老朽化については、補修で対応しながら今に至ります。

この問題で問われたのは、川とどう関係して暮らしていくのがいいのか私たち自身が見つめなおすことでした。

川を思い、川とともに暮らす

住民投票から20年以上。吉野川の自然と親しむ活動は続いています。
今月20日、干潟の生き物の観察会が行われました。

環境省のレッドリストで絶滅の恐れが増しているとされるシオマネキをはじめ多くの生き物が生息する汽水域です。
普段、あまり入ることがない干潟に子どもたちも大喜び。

埋まって楽しい。
こんなにドロドロになるところないもん。

ゲームとか家でするけど、釣りとか自然で遊ぶ方が好きです。

川への関心を高める活動を次の世代へ受け継ごうとしているのが観察会を主催する塩崎健太さんです。

塩崎さんは観察会だけでなく、ノリ漁の体験会なども開催し、幅広く川の魅力に触れてもらいたいと考えています。

塩崎さん
子どものころから遊んでて、川が大好きとか思ってないと、何か大きな計画が立っても自分事としてとらえずに、他人事として受け入れるだけになっちゃう。そうじゃなくて、「自分たちで、自分たちの川は考えようよ」ってそういう人が増えてほしいなと思う。

川と親しみながら、自分ごととして捉えること。
それが川とともに生きる理想のあり方だと塩崎さんは考えています。

塩崎さん
吉野川沿いってすごい水害の多い地域で、その水害を抑えたりとかして、人々の暮らしは安全で豊かになったと思います。
その反面、ちょっと川との距離ができたり、川の環境が少し悪くなってしまったりしてる。
これからの時代、それを取り戻して、安全に暮らせて豊かに暮らせるプラス、川との距離も短くて、川の環境もすごく豊かな、そういう共生できる社会づくりというのは、これからと思ってますね

吉野川の恵みを受け、ともに暮らしてきた私たち。
川を思い、川とともに暮らしていくことはこれからも続きます。

動画はこちらから

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