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タクシー運転手がいない… 業界に異変 香川で進む新たな一手

  • 2023年11月06日
タクシー運転手がいない

「タクシー1台お願いします」。「すぐには配車できそうにありません」。
本来、電話一本ですぐにかけつけてくれるはずのタクシーの現場でいまこんな異変が起きています。
背景にあるのは、運転手不足。コロナ禍前と比べ約2割も減少し、車は空いているのに運転手がおらず配車できないという事態になっているのです。買い物や通院などの際の生活の足でもあるタクシー。
運転手不足を乗り越えようと、香川のタクシー業界で始まった「新たな一手」とは。

タクシー呼んでも・・・

 

ふだんからよくタクシーを利用するというお年寄りたちは、いまどう感じているのか。タクシー乗り場で聞いてみることにしました。
 

利用者

だいたい30分近く待たされることが多いですね。
急ぎの人は困るだろうなと思う。

利用者

運転手さんが少ないんで、『今車がないんや』と言われることが結構多いですね。

電話してもなかなかタクシーが来ないという現状。その背景にあるのが運転手の減少です。

四国運輸局によると、平成29年に1663人いたタクシー運転手がことし3月末には1443人と、約2割も減少。運転手の減少は新型コロナの感染拡大で加速していました。

“稼働できない”タクシーも

高松市木太町にあるタクシー会社です。
この会社では15年ほど前と比べ運転手が3割ほど減少。その結果、運転手の確保ができず保有するタクシーのうち約4割が稼働できない日もあるといいます。

ことし8月の稼働状況を示した表を見せてもらいました。そこで目立ったのは空欄です。
これは日付や車両ごとに乗車する運転手の名前を記載する表で、空欄があるということは、乗車できる運転手がいないということです。このため、せっかく配車の依頼があっても、長く待たせたり断らざるを得なかったりするケースが増えているというのです。

寺師社長

コロナから今需要が一気に戻ってきている中で、供給が追いつかないという時間帯もできています。

「共同配車」で乗り切れ

運転手が限られる中、どうすればタクシーの利便性を維持できるのか。そこで、取り組んだのはライバル会社どうしでタッグを組むことでした。
去年5月、市内で営業するほかの2社と共同で配車を行う「共同配車」を始めたのです。

タクシーを利用しようと客がなじみの会社に配車を依頼する際、運転手がいないなどですぐに配車ができなければ、通常は、諦めて待つか、自分で別の会社を探して電話する必要があります。
 

共同配車ではこの手間を省けるといいます。
例えば、なじみの会社がB社だった場合。利用者がB社のこれまでの電話番号に電話をかけると、つながるのは配車を一括して担うA社の配車室ですが、オペレーターはB社を名乗ります。そして、B社のタクシーを配車できない場合、近くにいるA社やC社のタクシーを案内するという仕組みです。利用者にとっては手間が省け、会社としても空車のタクシーをうまく活用できます。

こうした共同配車をスムーズに行うため、この会社では新たなシステムを導入しました。3社すべてのタクシーについて、いまどこにいて、空車なのか実車なのかといった状況をひとつの画面で把握できるようになっています。

この会社は一括して配車を担う代わりに委託料を受け取ることができる一方、ほかの2社は配車部門を廃止できるためコストダウンにもつながるといいます。
共同配車によって経営が上向けば運転手の処遇改善にもつながると考えています。
 

寺師社長

タクシーはバスや電車などの中でもいちばん単価の高い乗り物なんですよね。
なぜ単価が高いかというとどの乗り物よりも利便性が高いからだと思うんです。
運転手不足の中でお客様にとっては待ち時間が長くなり、利便性の悪い乗り物になっている部分があるので、配車効率を上げることがお客様にとっても事業者にとってもドライバーさんにとってもメリットがあることだと思います。

19歳の運転手に活路

一方、制度改正によって新たに運転手になれるようになった20歳以下の若者に活路を見いだそうとしている会社もあります。
三木町にあるタクシー会社ではことし6月、四国で最年少となる19歳のドライバーが誕生しました。

タクシー運転手などになるために必要な2種免許は、これまで、「21歳以上で普通免許などを取得してから3年以上たつこと」が取得の条件でした。国は運転手不足が課題になっていることを踏まえて、令和4年にこの条件を緩和。
特別な教習を受けることを条件に、普通免許などを取得してから1年以上たっていれば19歳から2種免許が取得できるようになりました。

 

その19歳のドライバー、大森喬介さんの勤務の様子を取材させてもらいました。
朝出勤してきた大森さん。まずその日入っている予約を確認します。そして、どの道を通れば最もスムーズに送迎できるか下調べも欠かしません。さらに、道を覚えるためにスマートフォンの地図アプリなども活用しているといいます。

大森さん

ちょっとは慣れたって感じです。
予約を見て『この人ってどこですか』と分からなかったら先輩に積極的に聞くようにしています。

この日は常連客を自宅から病院まで送り届けました。大森さんの丁寧な受け答えは利用客に好評で、指名したいという人もいるほどだといいます。
         

利用客

いつも利用してます。優しくて親切でいい人ですよ。
若い人は若い人なりにいろんな話が聞ける。

19歳の大森さんがドライバーとなったことを知った40代の人からの新たな応募もあったということで、運転手の確保に向けて状況が改善しつつあるといいます。
 

冨田社長

若い子が頑張ってるから『ちょっと俺も頑張らないといけない』とか。いろんな形でいい方向には向いていると思います。
若い子の中には、車の運転離れがあるけれど、好きな人もいるんですよ。そういう潜在してる方をなんとか職業ドライバーに引っ張ってこれるような、そういう形を早くつくりたいと思っています。

19歳のタクシー運転手は香川県以外でも全国各地で誕生しています。運転手不足や高齢化が進むタクシー業界に今後どのような変化が生まれてくるのか注目です。

  • 富岡美帆

    高松放送局 記者

    富岡美帆

    2019年入局
     警察や司法、香川県政や選挙を担当したのち、いまは経済を担当。ペーパードライバーです。

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