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小豆島発プロジェクト “職人を育て木桶の味後世に”

  • 2023年09月06日
小豆島発プロジェクト “職人を育て木桶の味後世に”

醤油や味噌といった和食の発酵調味料の製造には「木桶」を使ってきましたが、近年は近代的な施設で大量生産されることがほとんどです。11年前小豆島で木桶を使った製法と味にこだわり守ろうとする活動が始まりました。この活動に古典の日文化基金賞が送られました。

「木桶職人復活プロジェクト」古典の日文化基金賞を受賞

古典の日文化基金賞は、11月1日の「古典の日」を広く知ってもらおうと3年前に創設されました。日本の古典文化の研究や普及などに貢献した人や団体に贈られます。ことしは9月3日に京都市で授賞式が行われました。

このうち「美術・生活分野」で、「木桶」を自ら作り、木桶仕込みの醤油など発酵調味料の味を守ろうと活動を続ける、小豆島で発足した「木桶職人復活プロジェクト」が選ばれました。11年前にこのプロジェクトを始めた小豆島の醤油蔵の5代目、山本康夫さんが代表して賞状などを受け取りました。

山本さん

古典の日文化基金賞を受賞して我々は感謝と喜びを感じております。会場には北は福島から南は鹿児島まで主要メンバーが集まっています。我々の努力とパッション(情熱)が認められたのではないかと感じております。

木桶職人がいない!山本さんの苦悩

山本さんの醤油蔵では、高さが2メートルもある昔ながらの大きな木桶を使ってすべて仕込みます。 およそ150年前の創業時から 受け継いできた木桶には、長年にわたって住み着いた酵母菌などの微生物が独自のうまみを作りだします。

木桶は100年以上使うことができますが、木桶を新しく作ることができる職人は全国にごくわずかしか残っていませんでした。山本さんは、伝統的なしょうゆ作りが危機に瀕していることに気づきました。

山本さん

木桶職人がいなくなれば我々の 子どもとか孫の世代に木桶を 作ることができなくなり、木桶作りの醤油がなくなってしまいます。今我々が動いて、木桶職人を育て技術を次の世代につないでいく流れをつくらないと間に合いません。

自分たちで木桶を作る

今から11年前の2012年、全国で唯一残る大阪・堺市の「桶屋」に小豆島の仲間とともに弟子入りし作り方を学びました。材料となる竹なども自分たちで調達しました。素人同然の状態から苦労を重ねて木桶を作り、醤油づくりに使うことができるまでになりました。

全国に広がる木桶の輪

小豆島から始まった「木桶職人復活プロジェクト」の活動の輪は 全国に広がりました。毎年1月、小豆島で、醤油蔵だけでなく味噌蔵や酒蔵などの人たちが、業界の垣根を越えて全国から集まり、新しい木桶を作っています。これまでにあわせて67本の木桶を作りました。

一つのメーカーが木桶を独占するのでなく、みんなで技術を共有して新たな職人を育て、木桶作りの味を伝えていこうとしています。

坂口さん

木桶職人は10人いるかいないかぐらいなのでもう少し増やしたいです。木桶の需要も増えてきて、実際手が追いついていないという状況です。各地方ごとに職人が育ってほしいと思います。

山川さん

2019年に「木桶職人復活プロジェクト」を通して新しい木桶を1本導入しています。すごく柔らかくて香りのいい醤油ができて、やはり木桶はいいものだなと改めて感じています。

山本さん

職人とか技術の部分についてはめどがたってきました。次は市場を大きくしたいです。きっちりと利益を上げられる、それによって木桶も新しく増産・発注する流れを作ることが次の段階だと思います。

「木桶職人復活プロジェクト」大きな夢に向かって

現在木桶を使って作られた醤油は、全国に流通している量の1%ほどと言われています。今後の目標は、木桶で作った醤油の国内での流通量を1%から2%に増やし、さらに世界の流通量を1%にすることです。

  • 鎌田学

    高松放送局 ディレクター

    鎌田学

    2021年から高松放送局
    2度目になります

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