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再生する瀬戸内の島々 新たな魅力が続々誕生中

  • 2023年07月19日
島々の再生

穏やかな海と島々が美しい景観を織りなす瀬戸内海。瀬戸内の島々は、3年に1度開かれる瀬戸内国際芸術祭の会場でもあり、2019年には、「ことし行くべき旅行先」としてアメリカの有力紙に取り上げられました。人口減少が続き、生活するうえで不便な面もある中、島々では、島を愛する人たちが島を再生する取り組みを続けています。

蝶の楽園を目指して庭作り
(丸亀市 手島)

丸亀市の手島は、周囲10.9キロ、人口わずか16人の小さな島です。集落から離れた島の南側にポツンとたたずむのが、「旧ラーセン邸」。ノルウェーの実業家の別荘として、1970年ごろに建てられました。 

古川隆さんと好美さん夫妻は、9年前にここを購入。多度津町から通いながら、長年放置されていた土地や建物の整備を少しずつ進めてきました。島に通ううちに、ここに住みたいと考えるようになり、ことし4月に移住しました。
 

古川隆さん

ちょうど向かいに広島という島があり、その間にあって、波も全然立たないし、風も当たらないという海の魅力がまず1番。それともう1つは、この景観ですね。何もまわりに民家もないし、なんの人工物もない、これがいいですね。

渡り鳥のように長距離を旅する蝶「アサギマダラ」を呼ぼうと、フジバカマを植えたところ、おととし、驚くほどたくさんのアサギマダラが飛来。アサギマダラが乱舞する様子を撮影した動画をきっかけに、多くのボランティアの協力を得て、庭作りを本格化しました。1年を通じていろいろな蝶が見られる楽園を目指して、花を植えるなどの整備を進めています。 美しい花を目当てに多くの蝶が集まり、大勢の観光客が訪れることで、島の活性化に役立ちたいと考えています。

古川好美さん

島おこししようとかそんな大それた気持ちではないんけど、やっぱりこんないいところだからたくさんの人に来てもらいたい。

天空の花畑
(三豊市 志々島)

美しい花々を目当てにすでに多くの人が訪れているのが、三豊市の宮の下港から船で20分の志々島。島の高台にある「天空の花畑」が人気です。かつて花の栽培が盛んだった島を、再び「花の島」にしたいと、島で最後の花農家だった髙島孝子さんと息子の直宏さん、千鶴さん夫妻が、花畑を復活させました。6月には、花のシーズンの最後を飾るあじさいが見頃を迎えました。

髙島直宏さん

島独特の風景があって、この風景がきれいなので、この風景を残したいというのでここへ花畑をつくった。いっぱい多くの人に見てもらって、みんながきれいだなと言ってくれただけで、私たちは幸せ。

天空の花畑は、近年、人気が高まっています。特に、芝桜やキンセンカなどが楽しめる春のピークには、人口19人の小さな島が、大勢の観光客でにぎわいます。花のシーズンには、定期船が島を訪れる人でいっぱいになり、土日などは、船の数を増やし、三豊市は臨時駐車場などを用意しました。

空き家を活用した古民家宿
(丸亀市 広島)

瀬戸内海の塩飽諸島にある丸亀市の広島では、宿泊施設のオープンが相次いでいます。

江戸時代の廻船問屋の邸宅「尾上邸」は、去年、宿泊施設としてオープン。高い石垣には、島でとれる「青木石」が使われ、屋敷には「塩飽大工」の技術が随所に施されています。一棟貸しで、大人1人が1泊1万円。由緒ある屋敷に泊まって、島の文化を感じながら、島の暮らしを体験できます。

さらに今月、「尾上邸」の近くに築180年を超える古民家を改修した宿泊施設がオープンしました。塩飽諸島の活性化を目指す有志のグループが、数多く残る空き家を有効に活用しようと活動しています。有志のグループは、今月に入って4軒の宿泊施設を同時にオープン。多くの人に島を体験してほしいと考えています。

われら島活隊
山倉康平
事務局長

島は独特の静けさとか落ち着いた雰囲気が売りで、1軒でも空き家を再生することによって、島の良さを伝えていきたい。

島にとってうれしい動きもあります。移住を希望する問い合わせが増えていて、市は、現在休校している島の小中学校を、2025年度から再開する予定です。

持続可能な島の将来へ

離島の活性化について研究する、香川大学経済学部の古川尚幸教授は、新たな魅力づくりは、持続可能な島の将来への足がかりになると指摘します。

古川尚幸教授

まずは観光で来てもらう交流人口を増やす。さらにどんどんリピートしてもらう中で関係人口を増やす。それでうまくマッチすれば、定住人口が増えるということで、やはりまずは来てもらうということが大事。島に人々が訪れることで、島の暮らしや伝統行事が途絶えないようにすることが大事ではないか。

この夏、県内では、島を対象にした観光キャンペーンが行われ、丸亀市は、昨年度に続き、島の日本遺産巡りの宿泊助成キャンペーンを行います。本島と広島にある日本遺産を巡って、対象となる島の宿泊施設に泊まると、宿泊費が1人3000円助成されるもので、7月15日から10月末まで、昨年度より期間を延長して実施されます。このほか、離島への移住促進を図るための新たな助成も行われています。 

島を愛する人たちが地道に進めてきた取り組みがようやく花を咲かせ、人々を小さな離島にいざなおうとしています。オーバーツーリズムや新型コロナの感染再拡大にも注意しながら、この夏、島の魅力にふれてみてはいかがでしょうか。

  • 佐藤和枝

    高松放送局記者

    佐藤和枝

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