赤ちゃんの初めてのごはん。みなさん悩みますよね。どの情報が正しいの? 鉄分をどう与える? 赤ちゃんと家族のごはんとの両立はどうしてる? など、専門家と一緒に考えます。

専門家・ゲスト:
川口由美子(一般社団法人 母子栄養協会 代表理事/女子栄養大学 生涯学習講師/管理栄養士)
鈴木亜美(歌手・タレント/3児のママ)

赤ちゃんの離乳食、どの情報が正しい? どう選べばいい?

息子(1歳4か月)が離乳食を始めたころ、いろんな情報を集めていました。月齢によって食べさせていいもの・だめなものなど、本によって微妙に違い、細かいルールが多くて難しいと感じました。ネットでもかなり調べて、検索魔になっていました。鉄分補給についても悩みました。

そうやって調べていくうちに、WHO(世界保健機関)の「補完食※」のガイドラインに行きついたんです。日本の離乳食の本を見ると、細かい食材リストがあって、どの食材がどの時期(初期・中期・後期)なら食べていいなど、詳細に書いてあります。でも、補完食の考え方は、そこまで気にしなくても、基本的に必要な栄養素をしっかり押さえることが大切だと思えて、納得感がありました。補完食の資料だけではわからないところは、厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド」を参考にしました。
いろんな情報を見て試行錯誤していましたが、赤ちゃんの食の正しい情報は、どう選べばよいのでしょうか?
(お子さん1歳4か月のママ)

※補完食:WHOが推奨する赤ちゃんの食事。母乳だけでは足りなくなる栄養やエネルギーを補うため、生後6か月ごろから、5倍がゆくらいの濃さの主食、鉄が豊富な肉や魚などを食べさせるように勧めています。

鈴木あきえさん(MC)

検索魔の経験がある人は多いと思います。私もそうでした。大量の本とアプリも駆使していましたね。

鈴木亜美さん

私は主にSNSでしたね。本だと、読んでいると頭が固くなってしまい、実際に行動するのが難しかったんです。なので、SNSで先輩ママがどんな食材を使っているのか、どう動いているのかを見て、まねていました。

―― すくすくファミリーのみなさんはいかがでしたか?

  • 月齢に対して歯が生えてくるのが遅かったので、食材の固さや大きさなど、本の通りにしていいのかわからなかったです。
  • 少し知りたいと思ってインターネット検索やSNSを利用すると、知らなかったことが書かれていて、不安になりました。
  • SNSは情報が多すぎて選択できなかったので、本だけを見るようにしました。

―― 川口さん、どう情報を選んでいけばいいでしょうか?

「授乳・離乳の支援ガイド」を見ると、昔から大きく変わっていない

回答:川口由美子さん

今の時代は情報にあふれていて、だからこそ迷ってしまいます。その中で、厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド」は、妊産婦や子どもに関わる支援者に向けてまとめられたもので、研究による科学的知見、育児環境などの変化により改定されています。でも、実は基本的な部分は、昔から大きく変わっていません。基本的に、離乳食に関する情報は、この支援ガイドをもとに書かれています。


※厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改訂版)」より

「補完食」と「離乳食」の基本的な考え方は同じ

回答:川口由美子さん

「補完食」と「離乳食」も、赤ちゃんが急激に成長するため、母乳やミルクだけでは栄養が足りなくなるので、その分を補おうという基本的な考え方は同じです。
WHOが世界各国に向けて勧めている「補完食」は、主に母乳をメインにして食事で補うという考えです。一方で、日本の従来の「離乳食」は、「乳離れ」をイメージしてしまうかもしれませんが、母乳・ミルクをやめる意味ではありません。母乳・ミルク以外の固形の食べ物で主に栄養をとれるようになることが「離乳の完了」であり、母乳は続けて構いません。

―― 離乳食は、最初は10倍がゆで、徐々に7倍がゆ、5倍がゆにしていくと聞きます。離乳食や補完食には、食べさせ方のルールがありますか?

10倍がゆなどの指導は、作りやすさ・食べやすさへの配慮

回答:川口由美子さん

実は、「授乳・離乳の支援ガイド」には、10倍がゆ・7倍がゆといった記載はなく、「つぶしがゆ」について説明されています。親にとって、初めてのおかゆの作りやすさ、赤ちゃんの「食べる練習」として口に入れてゴックンしやすいのが10倍がゆ、と指導していることが多いかもしれません。本などでも、10倍がゆから少しずつ水分を少なくしていく、と書いてありますね。でも「つぶしがゆ」の水分量に決まりはありません。子どもによって、つぶしたものが好きな子もいれば、ごはんに近いほうが食べる子もいます。赤ちゃんの食べる様子をよく見て、子どもの発達、好みや意欲に合わせて、臨機応変に少しずつ硬さや量を調節すれば大丈夫です。

離乳食の本はあくまでも「目安」。最低限のルールを守り、子どもの成長・発達を見て進める

回答:川口由美子さん

おそらく多くの方が見ている本は、離乳食のレシピだと思います。初めて離乳食を作る方にも、わかりやすく細かく説明されていますが、あくまでも目安です。解釈の違いにより、本によって異なることが書かれているかもしれませんが、厳密に本の通りにしないといけないわけではありません。
いろいろなところから情報を得ることは、保護者が楽しく、興味があって調べるのであれば、とてもよいと思います。調べることで混乱したり不安になる場合は、一度力を抜いてみましょう。家で準備しやすいものを使って、赤ちゃんの食べやすさに合わせて、最低限のルールを守って、子どもの成長・発達をよく見て進めていけば、大きな問題はありません。

赤ちゃんに食べさせてはいけないもの

赤ちゃんに食べさせてはいけないものは、はちみつ、アルコール、生の肉や魚、味が濃すぎるものです。酒やみりんなどのアルコールはしっかり火にかけて、アルコール分を飛ばせば使用できますが、離乳食期は使わないほうが安心です。
窒息につながる硬くて小さいもの、まるいものも控えましょう。中期以降は、指でつぶせるぐらいの硬さであれば使いやすいでしょう。

インターネットやSNSは、経験談として受け止める

ネットやSNSなどの情報で気をつけたいのは、「これが正しい」と信じ過ぎないことです。あくまでも経験談のひとつとして受け止め、振り回されないようにしましょう。


離乳食の進みが遅いことで、今後の成長発達に影響がないか心配

娘(8か月)の離乳食がなかなか進まず悩んでいます。6か月のころ、おかゆから始めたのですが、スプーンを嫌がり、おかゆの味も嫌がり、麦茶を薄めて飲ませても初めての味で嫌がり、全部ベッと出していました。お兄ちゃんのかぜがうつって、離乳食がたびたび中断して、まだどろどろのままです。食べる量も少なく、1週間分をまとめて作って冷凍していた離乳食は、2/3ぐらい食べてもらえず、悲しくてしかたありません。
お兄ちゃんが8か月のころは、食べられる食材が多かったのですが、娘は片手で数えられるくらいです。体重が、発育曲線の平均より軽く、増加も緩やかなことも気になっています。離乳食の進みが遅いことで、今後の成長発達に影響がないか心配です。
(お子さん3歳・8か月のママ)

鈴木亜美さん

今9か月の娘は、腰がなかなかすわらなくて、少しゆっくりスタートさせようと思ったんです。離乳食をはじめたのも7か月のころで、まだびちゃびちゃに近いですね。

すくすくファミリー

離乳食スプーンが合ってないのかもしれないと思って、10種類ぐらい買って試しました。

―― 川口さん、離乳食の進みと子どもの発達に関係はありますか?

発育曲線の平均と比べるのではなく、その子が成長しているかを見る

回答:川口由美子さん

一般的に、一時的に食べなくても、将来の発達に大きく影響することはありません。でも、不安に思う気持ちはとてもよくわかります。発育曲線は、平均と比べて上か下かを見るのではなく、赤ちゃん自身の成長を見てください。その子が前と比べて大きくなっているのであれば、食べたもので栄養がとれていると判断していいと思います。
ずっと食べない、体重減少などの場合は、医療機関に相談してください。

―― 栄養不足が気になるとき、どうしたらいいでしょう?

栄養が気になるなら濃いめに

回答:川口由美子さん

栄養が気になるなら、少しでもエネルギーがある肉や野菜のペーストなど、先にあげたいものを濃いめにしてみましょう。スプーンで食べさせられることを嫌がるなら、代わりに指先にペーストをつけて、なめさせてあげる。少しずつエネルギーのあるものを試してみてください。

哺乳は反射・食べるは学習

回答:川口由美子さん

赤ちゃんの目の前で、家族が楽しく食べているところを見せることも大切です。哺乳は反射でできますが、食べることは学習です。親やきょうだいが食べている様子を見て、食べ始めることもあります。

―― 食べられる食材の種類がなかなか増えないとき、どうしたらいいでしょう?

食物アレルギーを考えて、リスクの低い野菜などはまとめて進めてもよい

回答:川口由美子さん

「これを食べたら次はこれに進む」のような離乳食の細かいカレンダーもありますが、それは進め方に悩まないための1つのアドバイスに過ぎません。例えば、食物アレルギーのリスクが低い野菜などは、まとめて進めても大丈夫です。2~3種類をまとめて煮て、ペーストにしてあげてもいいんです。何でもひとさじずつで進めていたら、どれだけ時間があっても足りませんよね。
一方で、食物アレルギーのリスクが高い卵・乳製品・小麦などは丁寧に進めましょう。よく加熱されたものを少しから試すと安心です。


離乳食での鉄分補給、どうあげたらいい?

上の子が1歳を過ぎたころ、母乳で育てていると鉄が不足しがちだと知りました。今、下の子(6か月)の離乳食を始めたばかりですが、小さい子に鉄分豊富なメニューをどう与えたらいいのか悩んでいます。レバーやパテのようなものでないといけないと聞きますが、レバーの調理経験があまりなく難しく感じています。ひき肉は口に残るので、子どもが食べたがりません。離乳食で、どうやって鉄分を食べさせればいいでしょう?
(お子さん3歳・6か月のママ)

いろいろな食品から少しずつ鉄をとる

回答:川口由美子さん

鉄が豊富な食品は、赤身の肉や赤身の魚、レバーなど、血の色をしているものです。調理に手間がかかる、子どもが食べにくいのであれば、ツナ缶が使いやすくおすすめです。豆類や卵(黄身)、ほうれんそうなどの鉄分は、ビタミンCと一緒に食べると吸収されやすくなります。

他にも、おすすめの食べ方があります。例えば、マグロやカツオの刺身を焼いてあげる、粉ミルクを料理に使う方法もあります。おかゆに少し粉ミルクを入れると、鉄分をとることができます。市販品の鉄分を多く含むベビーフードと野菜や豆腐を合わせる方法もあります。
ひとつの食品に偏るのではなく、バランスよくいろいろな食品から少しずつ鉄をとることが大切です。少しずつでも積み重ねていけば十分な量になります。


離乳食と家族のごはん、お出かけのときの離乳食はどうしたらいい?

赤ちゃんの離乳食と家族の食事の準備など、うまく両立できる方法はないでしょうか。また、外出時の離乳食はどうすればよいのか気になっています。
(お子さん3歳・6か月のママ)

ここで、3人の子どもたちを育てている、鈴木亜美さんの時短テクニックを紹介します。

あみーゴ流 離乳食・家族のごはんの時短テクニック

離乳食と家族ごはんを同時に作る

まず、離乳食初期の作り置きに便利な時短テクニックです。**「炊飯器」**でいろいろな種類の野菜を一気に炊きます。

今回は、にんじん、じゃがいも、たまねぎ、かぼちゃなどを入れてみました。
炊飯器を使うポイントは、とにかくやわらかく仕上がること、ボタンを押すだけのほったらかし調理で時短になることです。

早炊きモードを使えば、20~30分でできあがります。野菜の自然なだしがきいた、ほくほくで大人が食べてもおいしいスープになります。
※炊飯器は調理機能がある機種を使用し、水の容量を守りましょう。水が多すぎると吹きこぼれることがあるので注意しましょう。

ここから離乳食も作ります。野菜ごとに取り分けて、スープを足して、ミキサーで時期に合わせた軟らかさに調節します。

あとは製氷皿に、食材ごとに分けて入れて冷凍しておきます。いろいろな種類が同時に作れます。

大人と子どもの家族のごはん

毎日の家族のごはんの時短テクニックは**「鍋」**です。

毎日のごはんの汁物がわりに野菜たっぷりの鍋を作ります。野菜をザクザク切って、水を足して煮込むだけなので簡単です。この日はキャベツ、きのこ、にんじん、もやしなどを入れました。

食卓に置いて、それぞれの器に取り分けます。これなら大人も子どもも好きな味つけにできますよ。

鍋を離乳食にも

離乳食も鍋から作ります。わざわざ離乳食を別に準備せず、家族の今日のスープと一緒に作るんです。

たっぷりの野菜を火にかけて、ぐつぐつ煮るだけです。キャベツ、たまねぎ、じゃがいも、だいこん、にんじん、ズッキーニを入れました。

味付けをする前に、赤ちゃん用を取り分けます。

離乳食の時期に合わせて、キッチンばさみで細かく切ります。

例えば、マグロの刺身を鍋で湯せんして、しっかり火を通し、細かく切ってもいいですね。

ごはんやそうめんと合わせれば、2~3種類作ることができます。

最後に、鍋を家族向けに味付けします。この日はトマト味です。

鈴木亜美さん

子どもが3人いると、なかなか離乳食だけを作ることができません。結果的に、同じものを家族で食べる習慣ができました。


川口由美子さん

見本にしたいぐらいのいい活用方法だと思います。何より、大人もおいしく食べられるのがいいですね。

―― すくすくファミリーのみなさんも何かしていますか?

すくすくファミリー

お茶パックと電気圧力鍋がおすすめです。具材ごとにお茶パックに入れて、電気圧力鍋で一緒に作ります。何日分も一度に作って冷凍して使っています。


※容量を守り、機種の用途にあった使用法で調理しましょう

すくすくファミリー

バナナとベビーフードを重宝していました。ベビーフードは鉄分多めのものを選んでいました。外出時は、バナナと赤ちゃん用せんべいを持ち歩いて、衛生面でもいいかなと思っています。

外食時などの時短テクニックは、薄める、刻む・つぶす、洗う

川口由美子さん

外出先で衛生面を気にしてバナナや、赤ちゃん用せいべいなどのベビーフードを使うのはいい取り組みだと思います。例えば、外で食べるときは味を薄めてみたり、小さく刻んだり、つぶしたりする方法もあります。味が濃いと思ったら、少しお湯で洗うと表面の味が落ちて薄まるのでおすすめです。ふだんの大人のごはんからの取り分けでも活用できますよ。


子どもが濃い味を好きになったけど、薄味にしたほうがいい?

下の子の妊娠中、つわりがひどくて食事の準備があまりできない時期がありました。そのため、上の子が1歳半ぐらいのときから、冷凍食品やレトルトを利用していたんです。すると、濃い味が好きになったようで、薄味のものを作っても大人と同じ濃いめのものを欲しがるようになりました。薄味にしたほうがいいのでしょうか。
(お子さん2歳2か月・1か月のママ)

先に薄味のものを出して様子をみる。その気持ちが大事

回答:川口由美子さん

食事は今後も長く続くので、今がどうかよりも、食べてほしいと思ったら、まずは薄味のものを出して様子を見ましょう。その気持ちが大事だと思います。続けていくことで、少しずつ好みが変わっていくこともあります。例えば、苦手な食材は濃いめにして、よく食べるものは薄味にするような方法もあります。濃すぎると気になる場合は、味のついていないごはんや野菜などと合わせるのもおすすめです。

家族のごはんは親と子どもがハッピーになる方法を選ぶ

回答:川口由美子さん

親が笑顔になれるのはどの方法か、どちらが子どもにとってハッピーなのか考えてみましょう。ベビーフードで笑顔になることもあるし、手作りで笑顔になることもあります。家族のごはんは、親と子どもがハッピーになる方法を選んでください。

―― 食について、いろいろと掘り下げてきましたが、どうでしたか?

古坂大魔王さん(MC)

食べて・寝れば何とかなる。その2つのうちの1つなので、楽しくないと人生がもったいないなと再認識しました。

鈴木亜美さん

大人のメニューを考えるのも大変なのに、離乳食や子どものことを考えると、頭でっかちになってしまうことがありました。こうやって、みんなが悩んでいると思うと気が楽になって、もっと楽しく育児をしていきたいと思いました。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです