子育てだけでもいっぱいなのに、仕事がはじまったらどうなる? そんな仕事復帰の不安について、専門家とすくすくファミリー、みんなで考えます。

専門家:
大日向雅美(恵泉女学園大学 学長/発達心理学)

0歳児を園に預けて働くことで、子どもの成長に影響はある?

現在、仕事復帰に向けて準備中です。娘(8か月)は、春から保育園の予定です。ただ、娘はおっぱいが大好きで、泣いたときや、寝かしつけのときにも欠かせません。好きなときに欲しがるだけあげています。親と長時間離れたこともありません。私も仕事がはじまると余裕がなくなると思います。これまで娘に寄り添った生活をしていたので、今後つらい思いをさせてしまわないか不安です。0歳から園に預けて、子どもの成長に影響はないのでしょうか。
(お子さん8か月のママ)

―― すくすくファミリーのみなさんは、お子さんが園に通いはじめたころ、どうでしたか?

  • かぜのエンドレスループでした。
  • 子どもが泣いてる様子を見て、私も心の中で泣いてました。

―― 大日向さん、この不安についてどう思いますか?

コメント:大日向雅美さん

いろいろな悩みがあると思いますが、いちばんはお子さんの成長について何が心配なのかだと思います。今は、ほとんどの時間をお子さんのために使っていて、それが変わると考えていますね。そのために何か準備をしていますか?

娘には哺乳瓶拒否があるので、毎日嫌がられながらも哺乳瓶に口をつけるようにしています。私以外の知らない大人に慣れることができるように、定期的に子育てひろばに行って、スタッフの方と遊んでみたりしています。
(お子さん8か月のママ)

コメント:大日向雅美さん

着実に準備を進めていて、すばらしいと思います。不安に思うからこそ準備ができるのだと思います。これはとても大事なことです。

―― 親と離れる時間が長くなることで、子どもの育ちに影響はありますか?

保育士を信用して預ける

回答:大日向雅美さん

いちばん悩んでしまうところですね。例えば、子どもを預けた帰りに耳をつんざくほど泣かれて、「こんなはずじゃなかった、子どもの心に傷が残るのではないか」と心配になるかもしれません。でも、大丈夫です。保育のプロである保育士を信用して預けていいと思います。1~2週間ほど泣いても、やがて子どもは慣れていきます。なぜなら、ママ・パパ以外の人からも面倒をみてもらえる、愛されていることが、赤ちゃんなりに肌でわかってくるからです。これはとても大切な体験です。
「0歳が大事」とよく言われますが、人生で大事ではないときはありません。私自身、この年齢でも今が大事だと考えています。泣き声に惑わされずに、安心していいと思います。

保育士と楽しそうに話す姿を見せる

回答:大日向雅美さん

子どもを預けるときや迎えにいくときに、保育士と楽しそうに話をしてみましょう。話の内容は、保育のこと以外でもいいのです。ママ・パパが保育士と楽しそうにしている姿を、子どもは見ていますよ。

―― すくすくファミリーのみなさん、仕事復帰前に準備してよかったことはありますか?

  • 保育園で使うマグカップやくつなど、家でも同じものを使うようにした。
  • ネットスーパーなどのサービスへ登録しておく。
  • 仕事と家事の両立は大変で、そのままでは無理だと思ったので、復帰前に夫婦で何を妥協するかを決めました。例えば、家が多少きたなくても目をつぶる、忙しいときの食事はワンプレートでもいい、などです。

もうすぐ育休明け。育児と仕事のバランスをどうとる?

娘2人を育てているパパです。ママの仕事はフリーランスで育休が難しく、次女の誕生に合わせて、上司と相談して1年間の育休を取得しました。食事、家事、園の送迎、外遊びや寝かしつけなど、育児に専念できる1年を過ごしてきました。今、もうすぐ仕事に復帰予定で、仕事と育児のバランスをとれるのか不安があります。
育休を取らせてくれた職場にはとても感謝しています。恩返しをしたい気持ちが強いのですが、育児をしながらしっかり職場に貢献できるのか心配です。一方で、育休を取りやすい流れを作る意味でも、育児・仕事を両立している姿を見せることも大切だと思っています。
(お子さん5歳・1歳3か月のパパ)

―― すくすくファミリーのみなさんは、どのようにバランスをとりましたか?

  • 仕事終わりは、帰るという強い気持ちで帰ります。残ってほしい雰囲気を感じることも多いのですが、「ごめん!」と言って帰ります。フォローのため、連絡ツールを使ったり、できるだけ仕事を文書化して、私がいないときも誰かが対応できるようにしています。
  • 出産・育休が明けて、3年ぶりに仕事復帰しました。教員をしているのですが、3年の間に、職場の人も子どもたちも変わってしまうので、浦島太郎のような状態でした。復帰後も、子どもが熱を出してバタバタすることもありましたが、意外となんとかなりました。

―― 大日向さん、育児と仕事のバランスはどう考えたらいいでしょうか?

子育てと仕事、2つ合わせて100を目指す

回答:大日向雅美さん

復帰直後は、仕事も100、子育て・家庭も100と考えがちです。でも、それは無理で、現実的ではありません。ですから、仕事と子育て・家庭の2つを合わせて100ぐらいになるように考えてみましょう。例えば、今は子育てが7~8割、仕事が2~3割でもいいと思います。子どもの年齢や働き方によって割合を変えていくことができます。

パートナーとのバランスも大事

回答:大日向雅美さん

もうひとつ、パートナーとの間でバランスをとることも大事です。今は、ママが育児休業を取れない厳しい仕事の環境にいるため、パパが取得していたと思います。今後、パパとママで育児の割合を変えていくことを、ともに考えるのもよいでしょう。

職場への恩返しは、長期的に考えてみる

回答:大日向雅美さん

職場への恩返しも、バランスの問題だと思います。まず、育児休業の取得は権利なので、申し訳ないという気持ちは持たなくていい。一方で、フォローしていただいた方への感謝の気持ちはとても大切だと思います。ただ、その恩を復帰してすぐに返そうとしなくてもいいと思います。今はなかなか返せないけど、長い目でみれば、もう少したてば返せるかもしれません。また、育児や介護などで時間が必要になる方も出てくるかもしれません。そのように、お互いさまで代わり合えるときがくると思います。

今までママが担ってきたことを忘れないで

回答:大日向雅美さん

今回のパパのように、育休で育児に専念することを「敷居が高い」と感じる方がいるかもしれません。でも、今までママが担ってきたことなのです。そのような意味で、これからのモデルケースのひとつだと思いました。


こどものホンネ
おうちのお手伝いしてる?

子育てでわからないことは、子どもに直接聞いてみよう!

「こどものホンネ」のコーナーでは、SNSの子育て動画で人気の木下ゆーきさんがホンネハンターになって、「こどものホンネ」に迫ります。今回は「お手伝い」について、保育園、年長さんの子どもたちに聞いてきました!

―― 僕が子どものころはお手伝いしてなかったけど、みんなはしてる?

  • (子どもたち)はーい!
  • 時代が違う!

―― どんなお手伝いするの?

  • 洗濯物をとりこむ。
  • 洗濯物をたたんでって言われるとすぐやる。自分の洋服を畳んだら、自分のロッカーに入れる。
  • 僕もやってる。
  • 私もやってる。

―― パパはお手伝いしてる?

  • (子どもたち)やっていない。

―― ほかには、どんなお手伝いをしてるの?

  • 食器洗いと、食器を拭くのと、ごはんを作るの。食器を並べたり、マットをしいたりする。
  • お皿を洗ったり、ママと一緒にごはんを作ったりする。
  • ママの料理をお手伝いして、卵を切ったりする。手が切れない包丁だから大丈夫。
  • お母さんが玉ねぎの料理を作るとき、涙が出ているときがあるから、ティッシュを持ってきてあげる。

ちなみに、いちばん多かったお手伝いは「食事のお手伝い」でした。

―― どうして、お手伝いしようと思ったの?

  • 成長したとき、包丁を使えるようになるから。
  • お手伝いしたら、ご褒美でゲームができる。
  • ご褒美があるほうが、ちゃんと働くんじゃない。
  • 「ありがとう」って言ってくれるから。あんまり「ありがとう」の言葉がこないから、優しい声を聞きたいなと思って。

子どもがお手伝いをしてくれたら、ぜひ「ありがとう」の言葉を伝えてあげてくださいね。


最後に「パパとママのお手伝いをしたい人?」と聞くと、みんな「はーい」と答えました。

木下ゆーきさん

みなさん、参考になりましたか? 子どもたちが親の気持ちも考えてお手伝いしていることを知って、胸あつでしたね。


モヤモヤ子育て
祖父母が育児にすごく干渉してくる…

「モヤモヤ子育て」のコーナーでは、みなさんから寄せられた「育児のモヤモヤ」について、みんなで考えていきます。今回のモヤモヤはこちら!

義父母の過干渉にものすごく悩んでいます。ミルクの作り方、薬、だっこのしかた、教育方針など、自分たちのやりかたを押しつけてきます。「最近のやり方はこうだ」と説明しても聞きません。このような祖父母とは、どのようにつきあっていくといいのでしょうか? 
(お子さん3歳のママ)

すくすくファミリー

ふたごの娘を11か月で保育園に預けたのですが、「小さいうちから子どもを預けて働く必要があるのか」「熱が出たら子どもがかわいそうだ」とか、延々と聞かされました。そんなときは、「大丈夫。大丈夫」と流していましたね。真に受けてしまうとイライラしてしまうし、いろんな考え方があると思います。「私の子どもなら、私が大丈夫と思えばいい」と考えて、気にしないようにしていました。

すくすくファミリー

私が祖父母に「今は〇〇だから」と言うと、どうしても角が立ちます。そこで、祖父母と子育て支援施設に行って、保健師さんや保育士さんなど、専門家の意見を一緒に聞くようにしました。私から言うよりも、聞き入れてくれると思います。

すくすくファミリー

わが家も「子どもがかわいそう」と言われて、一挙手一投足「それは違う」と言われました。そのたびに「時代が違うんだって」をひたすら言っていましたね。否定されたと思うかもしれないので、「お母さんのときはそうだったんだね」とフォローしています。

大日向雅美さん

みなさんの例はとても賢いですね。私はじいじ・ばあばの年代ですが、やはり否定されるのはつらいんですよ。でも、よかれと思って関わっているだけなんです。仕事に復帰するママ・パパは、今まで以上にじいじ・ばあばに助けられることもあると思います。そのとき、少し引いて、お互いに言い分があると考えましょう。ひとつの解決策より、お互いに寄り添って、答えを探すプロセスが大事だと感じます。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです