授乳をしても、おむつを替えても、だっこをしても泣きやんでくれない!
ママのほうが泣きたくなりますよね。
番組では赤ちゃんが泣きやんでくれる方法を徹底リサーチ!
赤ちゃんの泣きと上手につきあうために大切なことを考えます。

※すくすく子育て「赤ちゃん どうして泣くの?」より

専門家:
榊󠄀原洋一(お茶の水女子大学 名誉教授/小児科医)
伊東優子(産前・産後ケア 施設長/助産師)

泣いている理由がよくわからない! どうして泣いているの?

4か月の息子がいます。泣いている理由がわからないときがよくあります。授乳を終えておなかはいっぱいのはずなのに、すぐに泣いてしまうのです。
ほかの理由を探してオムツを替えたり、部屋の温度を調節してみたり、絵本を見せてみたり、いろいろなことを試してみますが、何をやっても泣きやまないときも。顔を真っ赤にして泣いている時もあるので、おなかが痛いのかとか、ちょっと体調が悪いのかとか、いろいろ心配になります。
何をしても泣きやまないときは、私もあきらめモードになって、泣いているわが子をとなりで見ながら、途方に暮れてしまいます。どうして泣いているの? どうすればいいの?
(4か月の男の子のママ)

はっきりとした理由はわからないもの。いつもと様子が違う場合は注意を。

回答:榊󠄀原洋一さん

赤ちゃんが泣く理由はあると思いますが、泣き声だけだと判断は難しいですね。やはりそれぞれ個性もあり、はっきりした理由はよくわからない、それが現実なんだと思います。しかし、泣いた後、「ああ、これが理由だったのだな」と分かることがあります。それが大事です。
注意したいのは、痛みがありそうなときや苦しそうなとき。そんな時は、ほかに症状がないか確認してみましょう。例えば、せきが出ている、熱がある、あるいは下痢をしているなど、そうした症状もある場合には、きっと病気のせいだということが分かります。
小児科医として気をつけていただきたいのは、「いつもと声の大きさが違う」「甲高い声で泣く時間が長い」ときです。いつもと違う泣きには特に気をつけて、ほかに症状がないかを確認していただくといいですね。

月齢による泣きの変化

赤ちゃんの泣きは、月齢が進むにつれて理由が変化していきます。
1歳までにどんな変化があるのか見ていきましょう。

<3か月ごろまで>

泣いている理由は不快を訴えている場合がほとんど。
暑すぎたり、おなかが苦しかったり。空腹が理由であることがいちばん多いようです。

<3か月ごろから>

空腹のほか、眠気を理由に泣くようになります。
さらに、寂しいなど感情を表現する泣きも少しずつ見られるようになります。

<3か月〜9か月>

いつもお世話をしてくれる大好きな人の顔をはっきりと区別できるようになるため、人見知りや後追い泣きが始まります。
そして多くの親を困らせる夜泣きが始まるのもこのころです。

月齢がすすむにつれ単純な理由だけではなく、感情を表現する泣きも増えてきます。
赤ちゃんにとって「泣き」は最初のコミュニケーションなのです。

パープルクライング

生後2週間ごろから始まり、2か月ごろをピークに5か月ごろまで、理解するのが難しい困った泣きがあります。その泣きはパープルクライングと呼ばれることも。赤ちゃんの泣きの特徴を示す6つの特徴、その英語の頭文字をとって、パープル(PURPLE)と名付けられました。

  • (P)Peak of Crying
    生後2週間ごろに現れ2か月ごろピークを迎え、そのあとは徐々に和らいでいきます。
  • (U)Unexpected
    泣いている理由を予想できません
  • (R)Resists soothing
    さらに、なだめることもできません
  • (P)Pain-like face
    たとえ痛くなくても痛そうな表情で泣きます。
  • (L)Long lasting
    長く続くといわれトータルで1日5時間、泣くことも。
  • (E)Evening
    とくに午後から夕方にかけてよく泣くといわれています。

これらの困った泣きは、関わり方に関係なく現れます。親は決して自分を責めないことです。試行錯誤を積み重ねていくことで、親子の愛着関係ができていきます。

乳幼児揺さぶられ症候群

この時期に特に気をつけたいのは、乳幼児揺さぶられ症候群。泣きやまない赤ちゃんを激しく揺さぶってしまうというケースもあり、特に注意が必要です。

厚生労働省では赤ちゃんが泣きやまないときの対応や乳幼児揺さぶられ症候群について、ホームページで詳しく紹介しています。

厚生労働省HP 赤ちゃんが泣きやまない 泣きへの理解と対処のために
※NHKのサイトを離れます


赤ちゃんに泣かれるとつらい! どうやったら泣きやんでくれるの?

5か月の息子がいます。だっこから降ろすと、すぐに大泣き。体が接してないときは泣くことが多く、体重は7キロを超え、体に痛みを感じるようになりました。
機嫌がいいときでも、少しでも離れると、私が視界に入っていてもすぐに泣いてしまいます。だっこ以外の方法で機嫌がなおらないかと、おもちゃであやしてみたり、カシャカシャという音を聞かせてみたり、オルゴールの音楽を流してみたり・・・。いろいろ試してはみましたが、どれもうまくいきません。
家事をしていても集中できないし、狭い空間でずっと泣かれると追いつめられるような気分になります。だっこ以外に泣きやませる方法はありますか?
(5か月の女の子のママ)

インターネットなどを調べると、赤ちゃんを泣きやませるために、親自身が好きな曲を歌って聞かせたり、うどんをすする音を聞かせたり、いろいろな方法が紹介されています。

そこで、伊藤優子さんと、すくすく子育てでおなじみの井桁容子さん(保育士)に、どのような泣きやませの方法があるのか教えていただきました。

助産院で人気! 手作りの泣きやませおもちゃ

解説:伊東優子さん

助産院で人気の“泣きやませおもちゃ”があります。

ペットボトルに水とビーズを入れただけのものです。

ペットボトルをつなげるときに、ゴムホースを切り取ったものを挟み込むと、水もれ防止になります。
※ペットボトルの口とゴムホースにすき間ができる場合は、ゴムホースにビニールテープを巻いて、少し太くします。
※ペットボトルをつなげる部分は、ビニールテープをしっかりと巻き付けて固定します。

逆さまにするとビーズが音を立てながら水と一緒に落ちていきます。

泣いている赤ちゃんに見せると、おもちゃに夢中になって笑ってくれることもあります。
試してみてくださいね。

ベテラン保育士の究極技「わかるよわかるよ作戦」

解説:井桁容子さん(保育士)

こちらが泣きやませようと先に思ってしまうと、お子さんの気持ちと離れてしまいます。
「泣かないで」「どうして泣くの?」と言う前に、泣きたい気持ちをわかってあげるところからはじめましょう。
「嫌だったんだね」「びっくりしたね、わかるわかる」などと、今のお子さんの泣きにつながる理由について、「わかるよ、わかるよ」と共感をしてあげると、赤ちゃんがすーっと落ち着いていきます。

例えば・・・

「悲しかったんだね。そうだね。そっかそっか。大丈夫。びっくりしちゃったね。でも、大丈夫よ」
お歌などを歌うのもいいですね。落ち着いたら、顔を見てあげてください。
「何か嫌なことがあったの? そうだったのー。大丈夫、大丈夫。ここにいるよ。」

あせらずに、「あなたの感情におつきあいしますよ」という気持ちで声をかけることがポイントです。

赤ちゃんは泣きやませなくても、医学的に害はありません

回答:榊󠄀原洋一さん

井桁さんの方法のように、だっこして声をかけてあげると、まずそれだけで赤ちゃんはある程度安心します。自分のことをかまってもらえているとわかるからです。だっこしているほうも、「そうだね、そうだねえ」と言っているうちに、優しい気持ちになるので顔つきも少し穏やかになります。子どもは大人の顔を見てその人の気持ちがわかっているのではないでしょうか。そこで、ゆったりとした顔で声をかければ、赤ちゃんも安心するという効果があるのだと思います
泣きやませたい気持ちはわかりますが、赤ちゃんは泣きやませなくても、医学的に害はないということは知っておいてよいかと思います。例えば夜泣きをする子や、すごく泣いている子は、心理的なストレスが多い環境ではないかと調べても、実際には、あまり関係がないのです。逆に体調が悪くて泣いている場合は、対処してあげることが必要です。

ママが赤ちゃんに優しくするには、自分も癒される時間を持って

回答:伊東優子さん

赤ちゃんの泣き声を聞き続けてつらい気持ちになったり、泣き声が周囲の人の迷惑にならないか気になったり、どうにか泣きやませたいと思うことがありますよね。ただ、「どうしても泣きやませなければ!」と強く思えば思うほど、赤ちゃんは余計に泣いてしまいます。「赤ちゃんは泣いていいし、泣いても大丈夫だよ」と思っている人たちが、我々を含めて社会にはたくさんいるということも、知っておいてくださいね。
ママが赤ちゃんに優しくするには、自分も癒されていないと難しいものです。つらい時には少し赤ちゃんと離れるなど、気を紛らわせることが必要です。パパなどほかの大人にだっこしてもらい、ゆっくりお茶を飲むなど、子どもと離れて違うことをする時間を持ちましょう。また、ずっと赤ちゃんと2人きりというママも多いので、とにかく大人としゃべりたいと思います。誰かに話したいという気持ちがあるときは、誰かにどんどん話してそういう気持ちを解消していきましょう。


専門家から
これだけは言っておきたいメッセージ

赤ちゃんは泣いてコミニケーションをとっている

伊東優子さん

泣いてしまうのも、泣きやませることができなくても、あなたのせいではない。誰のせいでもありません。赤ちゃんは泣いてコミニケーションをとっているのです。

「赤ちゃんは泣いてもいいんだよ」というキャッチフレーズでいきましょう

榊󠄀原洋一さん

これからは、「赤ちゃんは泣いてもいいんだよ」というキャッチフレーズでいきましょう。泣かないようにできることをする。だけど、赤ちゃんは泣いてもいいんだよ。そういう世界、そういう社会になるといいと思います。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです