かぜやインフルエンザ、胃腸炎など、冬は感染症が多くなる季節です。感染症にかかってから気をつけること、薬の飲み方、家族が胃腸炎になったときの処理のしかたなど、感染症のホームケアについてお伝えします。

冬の感染症 ホームケア

専門家:
草川功(聖路加国際病院 小児科 医長/小児科医)
日沼千尋(東京女子医科大学 看護学部長/小児看護学)

子どもが感染症にかかったとき、どうお世話すればいいの?

息子がちょうど1歳のとき、手足に発疹が出始めました。その直後に40度を超える熱が出ました。食欲もなくなってしまい、何を食べさせたらよいのか、何なら食べてくれるのかとすごく悩みました。はじめての高熱でわからないことがたくさんで、ネットでいろいろと調べていました。高熱は3日以上続き、大きな病院で診てもらうとアデノウイルスに感染していることがわかり、熱が下がるまでは10日ほどかかりました。今後、感染症になったときのために、どうお世話をすればいいのか知っておきたいです。
(1歳5か月の男の子をもつママより)

まずはつらい症状を和らげる

回答:草川功さん

感染症にはさまざまな症状があります。その中で、お子さんにとっていちばんつらい症状は何かをみてください。まずは、その症状を和らげて、子どものつらさを軽くしてあげましょう。


発熱、せき、おう吐・下痢、食欲不振など、それぞれの症状に対するケアは?

感染症には発熱、せき、おう吐・下痢といった症状がありますが、どうケアすればよいでしょうか?

感染症の主な症状

発熱のケア

回答:日沼千尋さん

熱が出ているときというのは、体の中でウイルスや細菌と戦っている状態です。子どもの熱が上がっているとき、悪寒があり手足が冷たいうちは、体を温めてあげましょう。
熱が上がりきったら、室温を下げ、薄着にして体を冷やしてあげます。わきの下、首、足の付け根を冷やすと効果的です。また、脱水症状にならないように、少しずつ水分を補給しましょう。水、お茶、赤ちゃん用のイオン飲料などをあげてください。
お風呂に入れる場合は、熱が高くないタイミングをみて、さっとシャワーを浴びるようにしてください。このとき、体を温めるのではなく、汚れを落とすことを目的としてください。

子どもの発熱のケア

せきがひどいときのケア

回答:日沼千尋さん

せきがひどいときは、たんを出しやすくするために、水分を補給して部屋を加湿します。赤ちゃんが苦しそうな場合は、縦にだっこしてあげましょう。赤ちゃんは体に比べておなかの臓器が大きいので、立ててあげると横隔膜が下がり、呼吸が楽になるのです。

子どものせきがひどいときのケア

おう吐・下痢のホームケア

回答:日沼千尋さん

吐き気がおさまってきたら、脱水症状を防ぐために少しずつ水分を補給します。水分補給は、スプーン1杯からが目安です。食欲が出てきたら、下痢の状態をみながら、軟らかいものを少しずつあげましょう。離乳食の場合は、ひとつ前の段階に戻します。

子どものおう吐、下痢のホームケア

子どもの元気がなく食欲が落ちている場合は、どう対処すればよいでしょう。

「これだけは食べられる」ものがあるとよい

回答:日沼千尋さん

子どもに食欲がないときは、のどごしがよく、軟らかくて食べやすいものから食べさせてあげます。ふだんから、「元気がないときでもこれだけは食べてくれる」ものを見つけておくとよいでしょう。ゼリーやプリンなど、子どもが好きなものでもよいと思います。

感染症のときのお世話で、他に注意することはありますか?

急に症状が変わることも。注意深く様子をみる

回答:草川功さん

子どもの症状が急に変わることもあります。小さいころは自分で症状を言葉にすることができませんので、親が子どもの変化に気づけるように、注意深く様子をみることが大切です。


どんなとき受診したほうがいい? 気をつけることは?

昼はそこまで熱が高くないのに、夜になると高熱になってしまうことがあり、朝まで様子をみた方がよいのか、救急に行った方がよいのか悩みます。夜間でも受診した方がよい症状はありますか?

救急に受診した方がよい症状を知っておく

回答:草川功さん

子どもに熱があっても、食事をきちんと食べて元気であれば、様子をみてもいいのではないかと思います。
夜間でも救急に受診した方がよいのは、次のような症状がみられるときです。

子どもを救急に受診した方がよい場合

  • 機嫌が悪く、ぐったりしている
  • 呼吸が苦しそう
  • 食べられない、飲めない
  • 激しく痛がる
  • 高熱が長引く

これ以外でも、3か月以下の赤ちゃんが38度以上の熱を出したときは、すぐに受診しましょう。

3日以上高熱が続くときは受診

回答:日沼千尋さん

「夜になって高熱」の状態が3日以上続く場合は受診してください。また、子どもの様子がいつもと違う、おかしいと感じるときも診てもらう方がよいでしょう。

病院で受診するとき、気をつけることはありますか?

症状の記録などの情報があるとよい

回答:草川功さん

小児科医にとってありがたいことは、受診までの症状や状況を正確に伝えていただけることです。例えば、いつから熱が出てどう変化したか、いつおう吐や下痢があったか、何を食べたかなどを記録しておくとよいでしょう。また、飲んでいる薬のことがわかる「お薬手帳」や、予防接種の履歴などがわかる「母子手帳」があった方がよいと思います。
「昨日の夜に発疹が出た」「夜中に変なせきをしていた」のように、受診時に症状が確認できない場合は、症状を記録した写真や動画があると診断の助けとなります。


子どもが薬を飲まないとき、どうすればいいの?

1歳4か月になる息子は、これまでに、インフルエンザ、手足口病、RSウイルスなどに感染したことがあります。ですが、息子が薬を飲んでくれないことに悩んでいます。味のない薬は大丈夫ですが、味がある薬は嫌いです。ヨーグルトやアイスなど、いろいろなものに混ぜてみましたが、うまくいきません。服薬ゼリーも試しましたがだめでした。今では、薬を見ただけで嫌がります。病院で処方される薬は、飲み切らせた方がいい薬もあると思います。どうしたら薬を飲むようになるのでしょうか?
(1歳4か月の男の子をもつママより)

抗菌・抗インフルエンザ薬などは飲めば効果がある

回答:草川功さん

医師が処方する薬は、飲んでいただきたいものがほとんどです。特に、溶連菌感染に対する抗生物質や抗インフルエンザ薬のような、感染症の原因に作用する薬は、確かな効果があるので必ず飲んでいただきたいと思います。インフルエンザの場合は、早く飲めば、早く熱が下がります。

薬をアイスなどに混ぜて与えることがありますが、混ぜてはいけないものはありますか?

薬と混ぜるときの食べ物・飲み物はスプーン1杯ぐらいの少量に

回答:日沼千尋さん

子どもが食べるものであれば、混ぜてはいけないものはほとんどありません。気になる場合は、医師や薬剤師に相談してみてください。アイスは冷たくて甘いので、薬の種類にもよりますが、小さい子どもに飲ませるときにおすすめすることもあります。薬と混ぜる食べ物や飲み物は、量が多いと残ることがあるので、スプーン1杯分ぐらいの小量にしておきましょう。
甘い食べ物が苦手なときは、冷ましたおみそ汁やスープでも大丈夫です。この場合も、少量にするようにしましょう。
大人の感覚では、一緒に薬をとるのはよくないと思うかもしれませんが、まず飲んでもらうことが大切です。

「食後の服用」と書いてある薬は、やはり食事の後に飲ませた方がいいのですか?

おなかを空かせた状態でなければよい

回答:日沼千尋さん

子どもは、食事で満腹になると薬を飲んでくれないことや、無理に飲ませると吐いてしまうこともあります。そのような場合は、薬を飲ませた後に食事をあげてもよいでしょう。おなかを空かせた状態でなければよいので、薬が先でも大丈夫です。


家族内での感染を防ぐにはどうすればいいの?

小学生のお兄ちゃん、幼稚園のお姉ちゃん、11か月の妹の3人きょうだいを育てています。妹が生後2か月のとき、39度の熱を出したことがあります。ちょうど上の子たちがインフルエンザだったので、感染の心配もあり病院で診てもらいました。そのときはインフルエンザではなかったのですが、今後どう対処すればよいのか悩んでいます。上の子たちはマスクを嫌がったり、どうしても子ども同士で接触したりするので、感染が心配です。隔離をするにも、ママにベッタリな子もいて難しいと感じました。いつも近くにいるきょうだいや家族内の感染は、どうすれば防げるのでしょうか?
(8歳の男の子、3歳10か月と11月の女の子をもつママより)

きょうだいの感染を防ぐのは難しい

回答:草川功さん

インフルエンザは、せきやくしゃみで飛び散る唾液などを介して感染します。接触することで感染することもあります。小さな子どもたちのきょうだいの場合は、近くにいることも多いので、どうしても感染してしまいます。感染を防ぐことは難しいと思いますが、手洗いなどできることはしておきましょう。

寝る部屋や、寝る位置の工夫を

回答:日沼千尋さん

感染を防ぐにはきょうだいが近づかない方がよいのですが、子どもたちが遊んでいるところを引き離すのは難しいと思います。寝る部屋を別にしたり、同じ部屋でも頭同士を離したり、できるところから工夫をしてみましょう。

家族みんなで病気に立ち向かう気持ちが大切

回答:草川功さん

病気に気持ちで負けてしまうと、家族みんなが暗くなってしまいがちです。そんなときは、家族が「家族で病気に打ち勝とう」と考えて、立ち向かっていきましょう。少しでも食べるものを食べて、寝られるときに寝て、お互いに休むときは休みながら、頑張っていきましょう。


感染性胃腸炎、感染の対策は?

赤ちゃん以外の家族全員が感染性胃腸炎になって、とても大変だったことがあります。感染の対策はありますか?

胃腸炎のウイルスは感染力が強い

回答:草川功さん

感染性胃腸炎は、基本的に接触感染します。例えば、感染している子どものおむつを替えるとき、便に触れてしまうことで感染します。そして、胃腸炎のウイルスでよく知られているノロウィルスやロタウィルスは、インフルエンザなどに比べて感染力がとても強いのです。

吐いたものや便は、直接触れずに処理して消毒する

回答:日沼千尋さん

感染している人が吐いたものや便を処理するときは、マスクと手袋を使って直接触れないようにすることが大切です。手袋はビニール袋と輪ゴムで代用してもかまいません。また、胃腸炎のウイルスの場合は、アルコールで消毒できないので注意してください。家庭用の塩素系漂白剤を薄めたものを使いましょう。

詳しくは「感染性胃腸炎 広げないための汚物処理法」をご覧ください。


すくすくポイント
感染性胃腸炎 広げないための汚物処理法

ノロウィルスやロタウィルスなどの感染性胃腸炎は、感染力がとても強く、ウイルスに触れることでうつります。感染している人が「吐いたもの」や「便」などの汚物にはウイルスがあるため、感染を広げないためにも汚物をきちんと処理することが大切です。その処理の方法を、日沼千尋さんに教えていただきました。

準備しておくもの

接触感染を防ぐため、使い捨てのビニール手袋、捨ててもよいエプロン、ポリ袋、マスクを用意しておきます。

ノロウィルスやロタウィルスなどの胃腸炎のウイルスは、アルコールで消毒することができません。家庭用の塩素系漂白剤(台所用・衣類用)で消毒液を作ることができるので、準備しておくと便利です。
おう吐物や便がついたもの消毒するときは、塩素系漂白剤25ml(ペットボトルのキャップ5杯分)を1.5Lの水で薄めたものを使います。

汚物の処理のしかた

感染している人が吐いてしまったとき、感染を広げないためには「汚物に触れない」「消毒する」ことが大切です。
その処理方法を紹介します。

まず、窓を開けて換気します。

汚物にペーパータオルなどをかぶせ、消毒液を浸すぐらいにたっぷりかけます。

汚物をペーパータオルで包み、二重にしたゴミ袋に捨てます。

処理のとき使ったエプロン・マスク・手袋も一緒に捨てましょう。ゴミ袋はしっかり閉じて処分してください。
最後に、汚物があった場所を水拭きします。

汚物処理後はせっけんでしっかり手洗い

汚物を処理した後や、直接触れてしまったときは、石けんでしっかり洗い流してください。

処理に便利な牛乳パック

汚物を処理するとき、牛乳パックで汚物用の「ちりとり」を作ると便利です。
処理の後は、そのまま捨てることができます。

<ちりとりの作り方>

パックの上部を開きます。

線で示した部分をハサミで切り開きます。

写真のように開けば、牛乳パックのちりとりの完成です。

<ちりとりの使い方>

汚物をちりとりですくい取ります。2つのちりとりで挟み込むと、すくいやすくなります。
すくい取ったら、ちりとりを汚物ごとゴミ袋に入れましょう。
汚物を取り除いた後は、消毒液で拭き取って、さらに水拭きします。

<カーペットやクッションでの処理>

カーペットやクッションの上にある汚物の処理も基本は同じです。ちりとりですくい取りましょう。
布に消毒液を使うと、色落ちする場合があるので注意してください。

消毒液の代わりにスチームアイロンを使う方法もあります。2分以上あてると、表面のウイルスを消毒することができます。
※アイロンを動かしながらかけて、布がこげないように注意してください。

牛乳パックで汚物入れを用意

牛乳パックの便利な使い方がもうひとつあります。牛乳パックの上部を開き、ポリ袋などをつけて汚物入れを作ります。
子どもが吐いてしまうときのために準備しておきましょう。使った後は、そのまま捨てることができるので便利です。

正しい処理法を覚え感染性胃腸炎を広げないように

感染力の強い胃腸炎のウイルスに家族が負けないために、正しい処理法を覚えて備えておきましょう。


子どもの感染症のケアについてパパ・ママへのメッセージ

感染症についての正しい情報を知って、少しでも予防しましょう。もし感染症になっても重症化しないように、対応の準備をしておくことも大切です。
(草川功さん)

パパ・ママが感染源になることも多いので、帰宅したら手洗いをするなど、家庭内で広げないように注意しましょう。そのためには体力を温存することが大事です。感染していない人は、しっかり食事をして、睡眠をとることを心がけましょう。
(日沼千尋さん)

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです