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アルツハイマー病 新薬レカネマブ保険適用 いつから 対象は 3つの注意点とは

  • 2023年12月15日

「レカネマブ」はアルツハイマー病の原因物質に直接働きかける新薬です。この価格について、中医協=中央社会保険医療協議会は、患者1人あたり年間およそ298万円と設定し保険適用の対象とすることを決めました。まもなく臨床の現場で使えるようになることから患者の間では期待が高まっていますが、一方で、注意点もあります。注意点などについてまとめました。

レカネマブ アルツハイマー病の新しい治療薬

「レカネマブ」は、アルツハイマー病の原因物質に直接働きかけ、取り除くための初めての薬です。
日本の製薬大手「エーザイ」がアメリカの「バイオジェン」と共同で開発した、認知症の原因の1つアルツハイマー病の新しい治療薬で、ことし9月に国の承認を受けて、中医協で保険適用に向けた議論が進められてきました。

中医協 保険適用の対象と決定

その結果、中医協はきょうの総会で「レカネマブ」の価格について、患者1人あたり年間およそ298万円と設定し保険適用の対象とすることを決めました。12月20日から適用される予定です。

エーザイ “レカネマブ12月20日発売”

エーザイ 内藤晴夫CEO(記者会見12月13日)
「改めて責任の重さを痛感している。添付文書やガイドラインに従って、安全性を十分確保しつつ有効性が発揮されるよう、適格な当事者に薬を届けられるよう全力を尽くしていく。認知症治療薬の研究開発は失敗の連続だったが、失敗を繰り返すうちに多く学んできたことが、成功につながったのではないか。創薬の道のりをかみしめている心境だ」

“将来的に使いやすい値段になってほしい”

若年性認知症の家族会「彩星の会」森義弘代表
「保険が適用されれば、該当する人にとっては使いやすくなるのでうれしく思っています。私たち家族会の患者は若年性の認知症で年齢が若いので、たとえ価格が高くても将来のことを考えれば、薬を使って症状の進行を穏やかにしたいと家族なら誰もが思うはずだ。将来的に使いやすい値段になってほしい。また、症状が軽い段階で薬が使えるように健康診断などで該当する人を早く見つけることができるシステムができてほしい」

注意点(1)投与対象の患者は限られる

保険適用の対象となることが決まり、まもなく臨床の現場で使えるようになることから患者の間では期待が高まっていますが、一方で、注意点もあります。

1つ目の注意点は、薬の投与対象となる患者が限られることです。認知症の原因となる病気には様々な種類がありますが、レカネマブが使えるのは、「アルツハイマー病」の患者で、脳に「アミロイドβ」という異常なたんぱく質がたまっていることが確認できた人に限られます。

また、認知症は、軽いものから、認知症と診断される前の「軽度認知障害」、軽度の認知症、中等度の認知症、重度の認知症と進行して認知機能が低下していきますが、今回、薬の投与対象となるのはこのうち「軽度認知障害」と「軽度の認知症」の人だけです。

認知症の専門医によりますと、レカネマブの投与対象となる患者は、認知症患者全体の1割未満とみられるということです。

注意点(2)副作用

2つ目の注意点は、副作用です。製薬会社の治験の結果によりますと、およそ10人に1人の割合で、脳がむくんだ状態になったり、脳内でわずかな出血が起きる副作用が確認されているほか、中には、より危険性の高い脳出血が起きた人もいて注意が必要だということです。

注意点(3)通院の負担

3つ目は、通院の負担です。レカネマブは、点滴で投与する薬で、一度治療を始めると患者は2週間に1度、原則1年半の間、点滴を受けることになります。

また、副作用を早く見つけるため、脳の画像診断などの検査ができる医療機関で治療が行われることになっていて、対応できる医療機関は限られるということです。

“新薬に対応できる医療システムの構築を”

認知症の専門医で新潟大学脳研究所の池内健教授は「薬自体はすでに承認はされていたが、やはり保険適用にならないと実際の臨床では使えないので、これで適切な方にこの薬を届けることができるようになるだろう」と話しました。

○価格について
保険適用となったことで患者やその家族が実際に負担する金額は小さくはなるが、それでもやはり高い薬であることは間違いないと思う。この値段に見合った効果が認められるかを医学的な面だけでなく、介護をする人の負担や社会参加への影響の面など実際の臨床のなかで広く検証していく必要がある。

○今後の課題について
効果が見込める方を検査で適切に選別して、治療薬を届けることが必要になるが、そのためには検査ができる病院の情報や地域における医療機関の連携が大切になってくる。新しい治療薬に対応できるような認知症医療システムを早期に構築していかなければならない。

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