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海水浴の水難事故 背浮きは難しさも 命を守る海のタイムラインとは?

  • 2023年7月24日

海で遊泳中に亡くなった人や行方不明になった人は去年、全国で90人にのぼっています。水の事故の際に、救助を待つのに良いとされるのが、あおむけで顔だけ水面に出す「背浮き」とよばれる姿勢ですが、実際には海では難しいケースがあることが実験などでわかりました。こうなる前に対策、海のタイムラインについてまとめました。

「背浮き」浮いて救助を待って体力温存

海で命を守る教室(千葉市の海水浴場 7月23日)

水の事故対策では、体力温存のため浮いて救助を待つ方法が推奨されていて、あおむけで大の字になり顔だけ水面に出して呼吸を行う「背浮き」が知られています。
ただ、波がある海で、背浮きで待つのは難しいという声もあります。

海での背浮きの難しさを実証実験

海での「背浮き」の難しさは、実験でも明らかになっています。水難事故防止を研究する中央大学の研究者と学生たちは6月、人工的に波を作ることができる海上保安庁の訓練施設で背浮きの有効性について実証実験を行い、顔にかかる水の違いを撮影しました。

映像を解析した速報値では、姿勢によって異なるものの、1分間に口と鼻の両方に水がかかる頻度は、波がない場合は0回でしたが、波があると、口だけに水がかかる場合でも20.2回と3秒に一回となりました。

被験者の
学生

顔に水がかかって呼吸が1回、ごほっとなるだけで、パニックになりました。

学生
高校まで
水泳

泳ぐことには自信があったのですが、波がある状態では浮くことは難しい。

 

浮力のあるものを持った状態の実験も行いましたが、2リットルのペットボトルでは姿勢を保つのが難しく、ライフジャケットならば安定して背浮きの姿勢を保つことができました。

中央大学研究開発機構 石川仁憲 機構教授
「救助が来るまでは、できるだけ体力を消耗しないよう浮いて待つのは必要な対策だが、海では波をかぶってむせた状態になると背浮きを維持するのは難しいため、浮いて待つ状態にまでならないことが一番重要だ。万が一に備えライフジャケットの着用は非常に推奨できる」

海の事故防止 タイムラインで事前準備を

海上保安庁は海の事故を防ぐ対策を、時系列に、「家を出るとき」、「海水浴場へ向かうとき」、「海に入るとき」、「事故にあったとき」の4段階でまとめた「タイムライン」を示し、事前の準備を呼びかけています。

その1 家を出るとき

まず家を出るときには、具体的な海水浴場の名前など「行き先」と「帰る時間」を、家族など誰かに伝えておくことで、帰宅が遅い場合に早期の通報に繋がります。また1人で海にいかないこともポイントです。

その2 海水浴場へ向かうとき

海水浴場へ向かう際には、万が一の場合に備えて連絡手段を確保。携帯電話を防水パックに入れて海で持ち歩けるようにします。
遊泳区域が設定され、ライフセーバーや監視員がいる海水浴場を選ぶことも重要だとしています。去年、海で遊泳中に亡くなった人や行方不明になった人の8割が海水浴場以外での事故でした。

その3 海に入るとき

海に入る際には、1人ではなく複数人で海に入ることもポイントです。事故にあったときに周りに気づいてもらいやすくなります。
マリンシューズやライフジャケットなど、浮力のあるものを身につけること。事故にあったときにも浮いて救助を待ちやすくなります。
自分の体調に注意し、適度な休憩も必要です。

その4 事故にあったとき

もし事故にあってしまった場合、やみくもに泳がず、まずは落ち着くことが大切です。周りに人がいれば助けを求めます。身の回りにあるもので浮力も確保しつつ、そのときの状況や、自分の泳力に応じた楽な姿勢で救助を待ちましょう。

海上保安庁 警備救難部救難課 高嶋修平 海浜事故対策官
「海は平穏なときには安全に遊べる場所だが、ひとたび荒れ始めると非常に危険な場所に一変する。タイムラインの各ステージで天気予報はこまめにチェックすることも大切だ。海は波や風など外からの力の影響が強いため、泳力に自信がない人が生身で浮くことは難しく、浮いて待たないといけない状況にならないよう、安全に遊ぶための備えや準備をしっかりしてから海に行くことが一番重要だ」

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