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米軍横田基地 泡消火剤の漏出さらに 開示の報告書を専門家どうみる

  • 2023年7月21日

アメリカ軍の横田基地では10年以上前に泡消火剤が漏れ出ていたケースが3件あったことが都の発表で明らかになっています。NHKがアメリカ軍に対して行った情報公開請求で、このほかにも4件あったことがわかりました。詳しい内容と専門家の分析をまとめました。

漏出事案報告書を情報公開請求

今回、NHKはアメリカ軍横田基地での泡消火剤などの漏出事案の報告書について、アメリカ空軍に対し情報公開請求を行いました。

対象の期間を2000年から2022年までとした結果、あわせて6件の報告書が開示され、このうち、4件が泡消火剤でした。

泡消火剤の漏出 新たにわかった4件の詳細

それによりますと、2020年が3件で、このうち5月には消防車の貯蔵タンクからコンクリート上におよそ4リットルの泡消火剤が放出されました。

このほか、8月には消防車の点検の際、コンクリート上に100リットルあまりの泡消火剤が放出されたほか、11月には泡消火剤が入ったタンクの蓋の部分からおよそ4リットルが漏れ出たということです。

また、2022年6月には、消火器装置の老朽化などで生じた亀裂から4リットル未満の量が出たということです。

“今回の泡消火剤 PFOS・PFOA含まれず”

アメリカ軍はPFOSやPFOAの含まれていない泡消火剤への交換を進めていて、開示された報告書によりますと、今回の泡消火剤にはこれらは含まれていない上、いずれも基地の外には流出していないとしています。

一方、都の公表で明らかになっている2010年と2012年にPFASのうち有害性が指摘されているPFOSやPFOAを含む泡消火剤が漏れ出た3件については、開示されませんでした。

小池知事 “都民目線でしっかりと対応してほしい”

アメリカ軍横田基地の泡消火剤をめぐっては、有害性が指摘されているPFOSやPFOAが含まれるものが10年以上前に基地内で漏れ出たケースが確認されたことを受け、都は7月5日に地元自治体とともに国に対して、地下水の影響調査などを要請しています。

また、今回、NHKの情報公開請求で明らかになったPFOSやPFOAが含まれていない泡消火剤が基地内で漏れ出た4件のケースについても、都は国に対して、情報提供を求めています。

小池知事
「都民の健康への不安を払拭させる必要があり、そのための対応策は何なのか問われている。これまで要請しているところだが、PFASの漏出が判明した場合は、速やかに情報提供してほしい。私たちの問い合わせに答えるだけではなく、都民目線でしっかりと対応してほしい」

PFOS・PFOA 米軍基地周辺で暫定目標値超

〇PFOS・PFOAの問題とは
PFOSやPFOAは、4700種類以上が存在する有機フッ素化合物PFASの一種で、有害性が指摘されています。
PFOSとPFOAはこれまで、沖縄県や神奈川県のアメリカ軍基地周辺の河川や地下水などで国の暫定的な目標値を超える値が相次いで検出されています。

〇地下水調査の状況
アメリカ軍横田基地のある東京・多摩地域の地下水でも国の暫定の目標値を超える値が検出されていて、都内全域を対象にした地下水の調査では、検出された17の自治体のうち、10が多摩地域となっています。

〇多摩地区 血液検査の状況
また、多摩地域の住民でつくる市民団体と専門家が共同で、多摩地域の住民650人を対象にPFOSとPFOAの血液検査を行ったところ、平均で、国が行った調査の2.4倍の血中濃度が検出されていて、住民からは不安の声もあがっています。

“漏出は米軍が交換進めている泡消火剤”

情報公開請求で開示された報告書について、20年以上にわたりPFOSなどの研究を続けている京都大学大学院の原田浩二准教授に見解を尋ねました。

今回明らかになった4件の泡消火剤の漏出について原田准教授は、「漏れ出たのはいずれも、アメリカ軍が交換を進めている泡消火剤でPFOSやPFOAは含んでいないと考えられる」としています。
一方、報告書には別のPFASが含まれる泡消火剤が漏れ出たことが記されているということです。

京都大学大学院 原田浩二准教授
「ほかのPFASについて有害性はまだ詳しくわかっていないが、PFOSやPFOAはのちに、健康への影響が出る可能性があることがわかり、アメリカで基準が厳しくなった。PFASは一度、土や地下水の中に入ると分解されず、長期にわたり残ってしまうのが問題だ」

去年6月のケース 懸念すべき点とは

また原田准教授は、4件のうち、去年6月のケースについて懸念すべき点をあげています。
ほかの3件は水路に入ったか尋ねる項目で「NO」にチェックが入って明確に否定している一方、このケースのみ「YES」にも「NO」にもチェックが入っておらず、「一部が近くの雨水を流す排水溝に流入した」と記され、詳細は黒塗りで非開示となっています。

原田准教授
「こうしたケースも、今回、情報公開請求をして初めて出てきたわけで、こうしたことがなくても、アメリカ軍と日本政府の間で情報共有され、住民や自治体にも提供されることが望ましい」

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