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物価上昇止まらず 価格転嫁の動きも 物価高いつまで続く?

  • 2023年6月28日

物価の上昇が止まりません。
5月の消費者物価指数の「生鮮食品を除く食料」は全体で9.2%上昇、実に47年7か月ぶりの高い水準となっています。

さらに、テーマパークや車を値上げする動きもあり、暮らしへの影響が、さらに広がっています。
専門家は、値上げの動きは当面続くという見通しを示しています。

「生鮮食品を除く食料」…9.2%上昇

総務省によりますと、先月・5月の消費者物価指数は生鮮食品を除いた指数が2020年の平均を100として去年5月の101.6から104.8に上昇し、上昇率は3.2%となりました。

上昇率は4月から0.2ポイント下がり、3か月ぶりに鈍化しました。

このうち「生鮮食品を除く食料」は9.2%上昇し、1975年10月以来、47年7か月ぶりの高い水準となっています。

具体的には…
○「卵」35.6%↑
○「炭酸飲料」、外食「ハンバーガー」17.1%↑
○「チョコレート」14.4%↑

幅広い品目で上昇が…
○「洗濯用洗剤」19.9%↑
○「ルームエアコン」15.7%↑
○「トイレットペーパー」15.3%↑
○「宿泊料」9.2%↑

一方、政府による負担軽減策や足元の燃料価格が下がったことで「電気代」はマイナス17.1%と、比較が可能な1971年1月以降で最大のマイナス幅となったほか、「都市ガス代」は1.4%の上昇となったものの上昇幅は4月の5.0%と比べ、大きく縮小しています。

また、生鮮食品とエネルギーを除いた指数は去年の同じ月より4.3%上昇していて、第2次オイルショックの影響が続いていた1981年6月以来、41年11か月ぶりの水準となっています。

総務省
「外食や宿泊といったサービス関連など、物価上昇のすそ野がさらに広がっているほか、6月分からは電気料金の値上がりも反映される。また、人件費の上昇を要因とした値上げの動きも出ていて、賃上げの流れが今後、サービス価格にどう影響するのか注視したい」

物価高の影響…中元商戦にも!?

物価高の影響はデパートのお中元商戦にも表れています。

デパートのお中元商戦は6月に入って本格的にスタートし、埼玉県川越市の「丸広百貨店」では、6月15日に専用の売り場、ギフトセンターを開設しました。

売れ筋の商品は、例年と同じように地元産の日本酒やクラフトビール、それにコーヒーですが、ことしはしょうゆなどの調味料や食用油を選ぶ客も少なくないということです。
百貨店では、原材料費の高騰などで値上げが相次ぐ、暮らしに身近な商品の人気が高まっているとして販売を強化しているということです。

丸広百貨店ギフト担当 川平真輝さん
「原材料価格の高騰もあり、食用油など生活に必要な商品の需要は伸びるとみているので、在庫もしっかり確保している。期間を通して売り上げを去年以上に伸ばしたい」

コスト上昇分を価格転嫁へ!

こうした中、広がっているのが「コストの上昇分を価格に転嫁する動き」です。

首都圏で90店舗あまりの寿司店を展開する千葉市の会社では、5月に一部の商品を1割から3割ほど値上げしました。

5月の値上げでは、まぐろの「上赤身」や「オーロラサーモン」が税込み396円から440円に、「いか」が154円から198円、「海老」が209円から242円に価格が改定されました。

会社では物価や人件費の上昇が続く中、価格への転嫁はやむをえないとしながらも値上げによって来客数が減少する可能性があると懸念していました。

しかし、5月の値上げの後の全店舗の客数は、去年の同じ時期と比べてほぼ同じで落ち込みはありませんでした。また、客1人あたりの単価は上がったため、売り上げは去年の同じ時期を上回ったということです。

 
 

60代の男性
「2か月に1回は来ていますが、値上げは気づかなかったです。食料品など全般的に値上げが相次いでいるのでやむをえないと思います」

 

「銚子丸」 武知勝利 商品部長
「商品の価格が上がるとお客様の目につくし、高いとも思われてしまう。そういう中では、価格に見合う商品をしっかり出せるかという部分が大切になってくる。今後もまずは自社で努力しながら、価格転嫁を考えていきたい」

客離れ懸念で転嫁不十分も

その一方で、思い切った価格転嫁に踏み切れない会社もあります。

780の店舗などを展開する都内に本社を置くクリーニング会社の千葉県松戸市にある工場では、洗濯機やアイロン、プレス機を動かすための電気代や都市ガス代が上がっているほか、ハンガーや溶剤などの仕入れ価格も10%以上上昇しています。

このため、さまざまなコスト削減に加えて客に呼びかけてハンガーを回収するなどの取り組みも行っていますが、コストの上昇分を吸収しきれないことから、ことし3月に料金の一部を値上げしました。

地域ごとに価格設定が異なるということで松戸市の店舗では、ズボンとセーターをいずれも520円から550円に引き上げるなど、3%から10%値上げしました。

ただ、他社との競合が激しいことから客の数や売り上げが減少する「客離れ」を懸念し、最も利用が多いワイシャツの値段は220円に据え置くなどコストが上昇した分の30%程度の値上げにとどめたということです。

 

セーターを受け取りに来た60代男性
「クリーニングは家で洗えないものを洗ってくれるので、必要なものです。価格はできれば上がって欲しくないですが、適正な価格があると思うのでしかたがないと思います。ただ、大幅に価格が上がるのなら、クリーニングに出すかどうかを考えてしまうと思います」

 

ポニークリーニング 小林隆之 生産部長
「ある程度の利益は確保したいので、もっと価格を上げたいですが、客に嫌われてしまっては元も子もないので、思い切った値上げは難しいところです。値上げした分は社員の福利厚生に使いたいと思っていましたが、そうしたところは少し抑えめとなっています。人材の確保は厳しい状況が続いています」

新たな値上げの発表も

さらに、新たな値上げの発表もありました。
千葉県に本社がある運営会社のオリエンタルランドは、東京ディズニーランドと東京ディズニーシーのチケットの価格を、ことし10月1日から見直すと発表しました。

有効期限1日のチケット(18歳以上の大人料金)
(現在)7900円~9400円の4段階に設定

(10月1日~)7900円~1万900円の6段階へ
最も混雑する時期で比べると1500円の値上げ

2つのテーマパークのチケットの価格が1万円を超えるのは初めてです。

最も混雑する時期の料金(中学生~高校生まで)
現在より1200円値上げ…9000円に
4歳~小学生までは5600円に据え置き

ホンダは、原材料価格などの高騰を受けて7月から国内で販売する主力の車種を値上げすると発表しました。

具体的には、小型車の「フィット」やSUV=多目的スポーツ車の「ヴェゼル」など国内で販売する主力の6車種について、7月27日から値上げします。値上げ率は2%から4%になるとしています。

ことし4月のミニバンなど3車種に続く値上げで、鉄鋼などの原材料価格をはじめ、物流コストも世界的に高騰していることが理由だとしています。

自動車メーカー値上げの動き
○日産自動車 ことし4月 主力SUVなど5車種 最大10%程度値上げ
○三菱自動車工業 ことし2月 主力SUVなど2車種 最大6%程度値上げ

各社とも当初は、モデルチェンジにあわせた値上げを中心に行ってきましたが、長引く原材料価格の高騰を受け、すでに販売している車種でも値上げを行う動きが広がっています。

専門家は “当面 値上げの動きは続く”

5月の消費者物価指数の発表を受けて第一生命経済研究所の新家義貴シニアエグゼクティブエコノミストは、値上げの動きは当面続くという見通しを示しています。

新家さん
「企業がコストを価格に転嫁しようという意欲が非常に強いことが示されている。去年からコストが非常に大きくなり、とてもじゃないが企業だけでは吸収しきれないということで、値上げが進んだ。価格転嫁しきれていない部分は今後さらに転嫁しなければならないので、当面、値上げの動きは続くとみられる。生活者の負担としては厳しい状況が今後も続くとみておく必要がある」

その上で、持続的な賃上げにつなげられるかが重要だと指摘しています。

「ことしの春闘による賃上げが予想以上のものになったとはいえ、物価の上昇に比べると低く、実質的にはまだマイナスの状況なので、消費を活発化させるまでにはいかないと思う。来年以降も、持続して物価が上がっているから賃金をさらに上げていこうというムードが高まるかどうかがポイントだと思う」

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