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静岡富士山 ゴミ急増の懸念! マナーの大切さ高校生にも  

富士山世界遺産登録10年
  • 2023年06月23日

世界文化遺産への登録が決まってから10年となる富士山。依然、登山道脇に残されるごみが課題となっています。ことしは登山者の増加が見込まれる中、回収しきれないのではないかと懸念されています。どうマナーを守るのか、次の世代を担う高校生たちにもごみの現状を伝えています。

ごみ “すごいことに”

富士山は静岡県側では7月10日、山開きを迎えます。小山町の須走口でも登山者を迎える準備が進んでいます。須走口から富士山に登った人は、去年1万2000人あまり。新型コロナ対策の緩和などで、ことしの登山者は大幅に増える見込みです。

米山千晴さん(72)は、5合目で親の代から山小屋を営んできました。

米山千晴さん

米山さんは6年前から、町の委託を受けて山岳ガイドとともにごみの回収にあたっています。その米山さん、ことしは特に強い懸念を抱いているといいます。

「巡視の名の下にごみ拾いをやっているんですけど、ごみの量はものすごい多い。ここ3年間は人が少なかったのですが、ことしはすごいことになるのではないかと考えています」(米山千晴さん)

"マナー守って"

これまでギリギリの態勢で乗りきってきたごみの回収。弁当の包み紙やたばこ、ペットボトル。食べ残しも珍しくありません。

ここ数年、目立つのが衣類です。登頂するときに着ていた服を、下山の際に脱ぎ捨てていってしまうというのです。

「登りは暑い。汗でぬれちゃうわけです。あとで誰かが片づけてくれるだろうと道路脇の柵にロープを張っているところに掛けていく。これは故意だと思うんです。忘れたでは済まない」(米山千晴さん)

回収されたごみは須走口だけで1シーズンに600キロに達したこともあったといいます。この夏も週3回、10人あまりで回収しなければなりません。

「これを見ると本当にがっかりするね。はたから見ると富士山ってきれいだね、ごみがないねというのは、私たちがごみの回収をやってるからですよ。マナーをしっかり守ってもらわないといけない」(米山千晴さん)

“マナー徹底を” 行政に協力求める

山開きを前に山小屋経営者と行政との定例の会議が開かれました。
米山さんは、ごみの増加が懸念されるとして、富士山の環境を守るためにも登山者にマナーを徹底するよう、行政に協力を求めました。

「ものすごい量のごみが投棄されている。投棄というより置いていくんです。去年も370キロを回収している。再度ごみの持ち帰りの徹底をお願いしたい」(米山千晴さん)

県は登山口やふもとの駐車場でごみ袋を配ったり、持ち帰りを呼びかけたりすることにしています。しかし、取り組みの内容は例年と変わらない内容で、打つ手が見つからないのが実情です。

大石正幸課長

「行政としてできることが啓発、情報発信。そこの力をまず発揮していくこと。環境省や地元の市町、団体と連携して発信していくことをまずは進めたい」(静岡県富士山世界遺産課・大石正幸課長)

「最終的に富士山にいるのはわれわれです。ただわれわれがやるにもある程度のことしかできないから、それ以外の広報や周知徹底は行政でやってくださいという気持ちがありました」(米山千晴さん)

環境保全の大切さ 若い世代に伝える

どうすればマナーを守ってもらえるのか。米山さんは自ら、次の世代を担う若い人たちに環境保全の大切さを訴えています。6月17日、高校の山岳部の生徒たちに富士山のごみの現状を訴えました。

「食べ残し、すごいでしょう。これを一つ一つ全部ガイドさんたちが手で拾って袋に詰めて下げてきます。これが富士山の現実です。山をきれいにしましょう。そしていつまでも美しい富士山を後世に残していきたい。それには皆さんの力添えが必要です」(米山千晴さん)

(講演を聞いた高校生)
「富士山のきれいさを保つために、たくさん努力をされていることを知って、こころの中にとどめて生活していきたい」
「ひとりひとりの意識を変えていく。特にわれわれ若者が変えていくことが大切だと思っています」

「私も、いつまでもごみの回収ができるわけではない。次の世代の人たちにバトンタッチする。若い人には富士山の本当の姿を知ってもらいたい。同じ気持ちを共有していっていただければ」(米山千晴さん)

ごみの回収を担う山小屋や山岳ガイドの人たち。世界遺産として求められる富士山の環境保全をどう進めていくのか、新たな態勢や仕組みづくりが必要になっています。          
            

登山者がごみを持ち帰れば、回収しなくても済みます。ぜひ心がけて下さいね。

  • 吉田渉

    記者

    吉田渉

    静岡県富士市出身。地元愛にあふれる取材を続ける。

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